第3話
「あ〜、行った行った!あんまりしつこいと用心棒を呼ぶぞ!」
バタン!と戸を閉める音。あ〜あ・・分け分からん呪いでサルにされたせいで行く宿全てこの
調子で、俺は途方に暮れていた。
街灯には灯りが灯りはじめ、少し肌寒くなってきた。外を出歩いてるのも、冒険者風の輩ばかりだ。
あ〜、人の視線が痛い、痛い、痛い!
こいつらも物見遊山で来てるわけじゃないだろうに・・
(まぁ、言葉を話す猿なんて珍しいからな)
俺は言葉を話す剣も珍しいよ・・とテュールに突っ込もうとしたが、あまりに馬鹿馬鹿しくてため息をついた。
と、その時。途方に暮れ、影に覆われはじめた通りを歩いていると、人がまばらだったはずの広場に、何やら人だかりが出来ている。
(何かに集まっているようだな)
人の視線を気にしながら生きている身分なだけに、つい俺は訝しげな視線を送った。
「まさか・・「言葉を喋るサル生け捕りにしろのお触れ」とかだったりして・・。」
あながちないとは言い切れなかった。俺は警戒しながら人だかりを見つめる。
するとその視線に気付いてか気付かずか、若い男がこちらを振り向く。
思わず後ずさりする俺。
が、男は俺がサルだと言う事すら気付かないような、ひどく興奮した口調で語りはじめた。
「お、キミ!!キミ冒険者かい??俺もなんだけどさぁ〜、見てみなよこれ!!」
なんだか勢いに圧倒され、俺は立て札を見に行った。
「姫の呪いを解いた者に金1億を与える」
い、一億!?一・・いちいち・・一・・億!?一億!!!!!??????
一億ったらバナナが一、ニ、三・・いかんいかん、例えまでサルだよ俺!
あれも買って・・これも買って・・
(欲にまみれた勇者は惨めだぞルーク)
テュールに言われて現実に舞い戻った俺は、咳払いを一つした。一億も払うなんて、
国王だからって随分気前がいいなぁ・・ん?
俺は一つのキーワードに注目した。・・呪い??
「一億だぜーすげーよなーほんとさーカンベンしてよーナハハハハ〜」
まだ興奮状態にあるさっきの男に、俺は訊いた。
「姫の呪いって、どーゆーことだ?」
「え?知らないのか?」
男はさも珍しそうに俺を見る。・・サルであることに対しては普通なのに、なんか調子狂うなぁこいつ・・。
そして急に声を低めた。
「どんな呪いかは秘密って事らしいが・・俺は盗賊なんでね、つい聞いちゃったんだよ〜。なんでも、姫は呪いで犬に変えられてるらしいんだよ〜。」
「な・・なんだって!?」
俺以外にそんな不遇の運命を背負った奴が・・しかも一国のお姫様!?