第21話
「魔獣・・って・・」
「そちらの者は人間じゃろう。我われの村では人間は天敵。おぬしらノラ猿がどう思っとるが知らんがな。」
老サルを取り巻く村のサル達は、さも恐ろしげに、ハーディンを見ている。
ハーディンが咳払いの一つでもした途端逃げ出すんじゃないだろうかと思うほどだ。
(ノラ猿・・フフ・・)
「笑うんじゃねー!」
「さぁ、どういう事じゃ。退治する約束じゃな。」
かろうじて威厳を保っているものの、この老サルだって内心ビクビクしているに違いない。
俺が通りかかるまで手をこまねいていたんだろうからな。
しかしまぁ、何だか空しいもんだ。
俺だって一応人間なんだからな。
魔獣扱いされて、追いかけられたほうがマシだよ・・。
釈然としない苛立ちを抑えつつ、俺は打開策を考える。
(ルーク、こういう時はな・・)
「ん?」
テュールが微かな、本当に小さな声で俺に話し掛ける。
(三十六計・・)
ハーディンも理解したようだ。
そう、
「逃げるに如かず!!!!!!」
俺らはワッッッ!!!!とときの声をあげると、
パニック状態に陥ったサル達をかきわけて村の出口へと走った。
「お、落ち着くのじゃ!」
ははは、さすがの老サルでも収拾がつかない様子。
ざまあみろってんだ。
俺だって人間なんだからなー!
ノラ猿とか言ってんじゃねーよ!!!
はぁはぁ・・。
急いで逃げたので、俺らはいつのまにか村が見えないところまで来ていた。
「テュール、こっちでいいのか?」
(あぁ。急いでいたにもかかわらず、良い判断だ。)
「私も同行して、いいのか?」
「もち!ハーディンがいないと俺の身体も治らないし、あの球体の事もわからないしな。」
「あの球体・・恐ろしい術だ。」
(この道をずっと歩いたその先にあるのは・・懐かしい光景か・・。)
「本当に助けになるんだろうな??」
(当たり前だろう!疑っていないで歩け!)
「へいへい」
目の前には鮮やかな夕日が俺らを照らしていた。
あーぁ・・前途多難・・。