第2話
「魔王!いざ尋常に勝負・・わっっ!?」
いきなりファイヤーボールをお見舞いされ、俺はすんでのところで横っ飛びでかわした。
「お前っっ、いきなりとは汚いじゃないかっ!?」
フード付きのローブからギラリと光る目をのぞかせたいかにも魔王という感じの不気味な容姿。
それだけじゃなく性格まで・・やはり魔王は魔王か。
「扉の前での話し声を聞いていたのでな・・正当防衛じゃないか?」
ぐっ・・落ち着き払って反論してくるとこあたり、やっぱ性格悪いと見た。
(魔王に諭されるとはな・・)
文句を言っているテュールを構え直し、俺は魔王に向かって突進した。
「もらったぁぁぁーーーーっ!」
ヒュンッ!確実に魔王を両断したと思った剣は、空を切って空しく風の音をたてた。
「!?」
(後ろだ!)
テュールの声がなかったら俺は死んでいたかもしれない。背後から飛んで来たファイヤーボールを、
しりもちをつくようにして何とかかわし、再び魔王に斬りかかる。
「てやぁぁぁぁぁーーーーーーー!」
俺だって名ばかりの勇者じゃない。魔王が消えた、一瞬をとらえて振り向いた。
「ぐわっっっっ!」
手ごたえあり!魔王は膝をつき、肩で息をしている。
「聖剣・・どおりで・・この傷・・」
魔王の目がキッと見開かれたので、俺は思わず後ずさりした。
「タダでは死なん・・・我が・・呪いを・・」
勝利を確信していた俺は、隙をつかれた。魔王の手から閃光がほとばしる。
「うわーーーーーーーーーーっ!」
ん・・?光を浴びはしたが・・痛みも何もない・・。まさか、後で死ぬとか・・
呪いってーのはやっぱり怖い。どんなものかわからないからな。
(ルーク・・・)
ん?テュールの声が震えている・・それも、笑いを噛み殺したように。
俺は全身に異常がないか、確認する・・ん?毛・・?ま、まさか・・
「サルになってる!?」
一瞬その判断のバカバカしさにもみ消そうとしたが、間違いない。
ハッピーエンドを確信した途端、この仕打ち・・!?
「お、おい、魔王!」
中途半端にサルで生かされるなんて、なんて迷惑な呪いだ。どーせなら
ドラゴンとかにしてほしかったもんだ。
「・・・・・」
しかし魔王は、すでに息絶えて、ピクリとも動こうとしない。
注意一瞬、サル・・一生・・?一生サルなのか・・?魔王を倒して油断して
サルになった勇者・・?冗談じゃないっ!!!!
バカバカしいと思ってた呪いが、実はとても大変な事だと、俺は冷や水を浴びせられたように
気付いた。
(まぁ、私も剣なのに言葉を話すからな。気にする事はないさ。)
テュール、フォローになってない・・・・。
ハッピーエンドは遠ざかったようだ。呪いを解かなくては!!