第19話
「魔獣??」
魔獣だなんて、何だか俺の中の世界観が一瞬で勇者の本業に戻されるような、
懐かしい響きだ。
(引き受けねば出れないと言う事か・・)
「お前のせいだろがっ!」
チャージや、ハーディンや、元の身体に戻る事。
心配事が頭に染み付いたままだと言うのにこのサルジジイ、余計な面倒増やしやがって・・。
・・という俺の心中を察したのか、キッとサルジジイは目つきを変えた。
と思うと、
「村の奥の洞窟に住み着いているのじゃが・・。」
と、穏やかに状況説明を始めた。
わからん奴だなこいつも。
まぁ話の通り俺らは数人(匹?)のサルに半ば見張られながら、
村の奥の洞窟とやらに向かった。
「たけぇーーー!」
それはもう、雲に届くかと思えるほど高くそびえる断崖。
そのふもとにぽっかりと洞穴が空いていた。
俺の身長ほどしかないように見えたが、中はもっと広がっているようだ。
「では、勇者よ、名誉の帰還を待っておるぞい。」
ったく訳わからんジジイだ。
俺はしぶしぶ、しかししっかりとテュールを構え、洞窟に入った。
(気配は・・するが・・)
真っ暗な為かテュールの声もトーンを落としたもののように聞こえる。
(人間!?)
「!?誰かいるのか!?」
テュールの声を聞き取ったのか、はっきりと人間の言葉で話し掛けてくる者がいた。
魔獣の洞窟に住んでるのかこいつ!?
いや、まさか・・こいつも拉致られたのか??
目が慣れてくると、男のかおがハッキリ見えた。
・・って・・こいつは・・
「ハーディン!?」
そう、まぎれもなくエーテル教の現教主、ハーディンの姿だった。