第18話
「キーッ、キキー、キーッ」
「だ〜っ、うるせぇ〜っ!」
今回ばかりはテュールの判断ミスと言うところか・・。
俺は何故か今、うっそうと茂る森・・いや、鮮やかな色の葉が折り重なるこの場所は、ジャングルと
表現したほうがいいのかもしれない。
ジャングルにいるのだ。
(暑いな・・)
あぁ、暑いとも。こんなジャングルの小屋の中で、サルの集団に囲まれてちゃぁな!
出発早々、分かれ道に出くわした俺ら。テュールの300年前のサビついた、ほこりまみれの
記憶を頼りに選んだ道の途中で、いきなりサルの集団に囲まれ、このサルの集落に連れてこられち
まったってわけだ。
段々暑くなってゆくし、文明から離れてゆくような兆しが見えていたからな・・おかしいとは
思った。
「キキーッ?キキ??」
うつむいた俺のかおを覗き込むように、サルが話し掛けてくる。
「かお近づけんじゃねぇよ!ただでさえ暑いんだからさー」
通じないとは思うが、俺は怒鳴った。
この小屋、木の皮や葉っぱなんかを幾重にも折り重ねた造りであるため、涼しくする効果は
あるのだろうが、ほとんど意味をなしていない。
すき間から入ってくる風は、熱風ばかりである。
「どーなってんだよ、おいテュール!」
(サル仲間を増やそうと言う作戦だ。サル友だな。)
「何がサル友だ!嘘つけお前・・」
もう一度あたりを見回す。
何匹ものサルが取り囲むようにして、こちらをじっと見つめている。
「キキー、キキー」
話そうにも、さっきからこの調子。サルの身体だからってサル語なんか理解できるかよ!
(とんだ失敗だな・・)
「認めたな、当たり前だろこの状況からして!!何だよこの状況はよ〜・・」
「これはこれは皆の者が失礼をいたした。」
「!?」
俺の声をききとってか、小屋の戸をあけて何者かが入ってきた。
ひどくしわがれた、老人の声だ。
「客人は久しぶりなもんでな。皆も驚いたのじゃろう。」
・・・ってこいつもサルかい!!まぎれもないサルだ。
杖を持ち、腰に手をあてている。仕草だけは人間なんだからなこいつ・・。
「まぁこの状況になるのも仕方があるまい。ようこそ勇者様。」
「・・え??」
あぁ、勇者なんて久しぶりだ!そうとも、本来俺は・・え!?
何でこいつ知ってるんだ?
俺有名人??ははは〜そんなぁ・・
「言葉を話す剣を手にした勇者・・あなたですな。
ここに来たからには魔獣を退治してもらわねば。帰すわけにはいきませんな。」
「は?」
なんか嫌な予感が・・
俺の頭の中ではいまだに貧乏くじが大売出し中のようだ。