第17話
エーテル教の村・・いや、キャンプは、悲惨な状態だった。
中央にあった、この村の異様な雰囲気・・いや、神秘さ、神々しさをかもしだしていた
エーテル教の神殿が、まるで長い間外気にさらされて風化したかのように、崩れ落ちている。
単なる破壊の痕跡ではない。
テントのような住居も、痕跡が残っているためかえって悲惨に見えるのだった。
(これは・・一体・・)
テュールも、それだけ言うのが精一杯だったらしい。俺だってそうだ。
こんな力が、人間のどこにあると言うのか。
あるとすれば、どう使い方を間違えてしまったのか。
魔王ですらこれほどの事は出来なかっただろう。
「ハーディンは・・」
俺はとっくに悟っていたが。
おそらくハーディンはこの世にはいまい。
(ルーク!!!!!)
テュールが声をあげたが、激しい風とともになり響いたけたたましい音が俺に異常事態
を告げた。
「な、なんだ!?」
(上だ!)
見上げると、快晴だったはずの空が黒くよどんでいる。・・いや、浮遊物?
巨大な黒いものが、渦巻いているようだった。
(あれは・・)
「ああ。あの城から出てきたやつだな・・。飛んでったと思ったらこんなところでばったり
遭遇か・・つくづくついてない・・」
俺は毛並みがつやつやの自分の手を見ながらため息をついた。
と、不幸を呪ったのもつかの間。
渦を巻いていた黒い浮遊物は、はるか上空に浮かび上がって行った。
(ふーむ・・この村・・とあの城・・城・・国王・・?もしや)
「どうした?」
もはや定番のこのやりとり。頭まわらなくて悪かったなっ!
(ここは呪術師の村だ。そして、誰もいなくなったこの村。死体もないだろう?)
俺はあたりを見回す。ものすごい惨状だが、確かに死体は見えない。
(そして生贄というあの国王の言葉。この村の呪術師は、あの中に取り込まれたのでは
ないか?)
「なるほど!!!ハーディンが血相変えたのは、村のことについて脅されたからなのか!」
(そう言う事らしい。)
「でもどうすれば・・あいつがいなきゃ元の身体に・・・。」
俺は大事に抱え込んだ陽の書を見た。
(この状況を打開する方法・・あの方の知恵を借りるしか・・)
「あの方?」
(うむ。長旅になるやもしれないが、心当たりがある。)
長旅・・という言葉を俺は素直にのみこめなかったが、仕方ない。
あーこのたび仕方ないの連続だなぁ・・。
テュールに従う事にした。