第15話
「テュール、どういう事なんだ・・?」
俺は身軽であるはずのサルの身体が実はとても体力を消耗すると言う事に気付き、息も絶え絶えに
テュールにたずねた。
なにしろハッピーエンドと思った矢先、いきなり「走るぞ」だ。
理解力の乏しい俺でなくたってパニックに陥るに違いない。
(エーテルの書物は、引き寄せあう。)
「ああ、なんか教主のハーディンも同じような事言ってたな〜。・・で???」
(・・・)
テュールはためらいもなく質問する俺にあきれながらも、説明を続けた。
(つまりだ、陽の書がこの城にあるということは、陰の書もこの城にある、ということになる。
そして、あの偽国王達が話していた事をおぼえているか。)
「あー、なんかすげぇ物騒な事言ってたな。生贄がどうとか術の発動がどうとか。」
(そうだ。この先に陰の書があるのなら、それはとても危険な術なのだろう。
そして連れて行かれたテュール。これはおそらく・・)
「そうか!教祖が王家に残した書物は陽の書だけでなく、陰の書も渡していたと。
そして、術師を連れてこさせて、生贄として捧げ、術を発動させる・・こういう事か?」
(上出来だ。テュールが危ない。走るぞ。)
「でも、テュールただの盗賊じゃんか。何であいつが生贄になりうるんだよ??」
(うーむ、そこがよくわからないのだ・・。)
まさに謎が謎を呼ぶ展開。
まぁ連れて行かれたんだから何にせよ俺らが助けに行くに越した事はないわけだが。
(!ルーク!飛べ!)
「へ??」
俺は言われるままジャンプ!!!・・着地。
振り返ると、俺はあまりの光景に呆然とした。
俺らが走っていた場所・・城の最上階部分だが。
ウェディングケーキ入刀!!と言わんばかりに縦方向に真っ二つになっている。俺はその
間にできた穴を飛び越えたのだが・・何だありゃぁ!?
今度は下を見下ろす。真っ二つに裂けた地下部分から、何かが浮かび上がってくる。
黒くて、大きな・・球体!?
UFOと言わんばかりの奇妙な形状のそれは、頭上で一回転すると、瞬く間に飛び去った。
「・・・・」
俺はあっけにとらわれていた。
あまりに意味不明なこの展開・・何が起こったんだ・・?
(ルーク!!城が崩れる!!!!)
「ほへ???・・ええええっ!?」
俺の辞書に休息という言葉はないのかっ!!
俺はさっきの2倍、いや10倍もあろうかというスピードで駆け抜けた。