第13話
「あ〜う〜!!!」
暗くジメジメした牢の中で、俺のイライラもいまや頂点に達していた。
僅かなランプの明かりが照らし出すものと言ったら格子を隔てた所で見張りをしている
兵士の影だけ。
オマケにメシは不味い、不味い。毎日同じもんばっかりだしな。
(ここは落ち着くな・・)
「は〜っ?どういう神経してんだよお前は・・。」
(昔を思い出す、昔を・・)
「万引きでもしたのかお前」
(ち、違うっ!誇り高き、勇者の記憶を思い出すのだ。)
「よくわからん奴だ・・な〜チャージ〜」
俺はチャージに話をふる。
「・・・」
「おい?」
「あ、ああ、何だ〜?」
「どうした?ぼーっとして。」
「いや、何でもないって〜。」
こいつ、牢屋に来てからずっと考え込んだような、落ち込んだようなそぶりばかり見せている。
盗賊なんだからこういうとこに免疫あるもんじゃないのかよ。
よくわからないけれどな。
それにしてもここに入れられる時、偽国王が気になる事を言っていた。
「使えるかどうか調べる」
だったかな。俺たちゃ術師じゃねーっての。早く出してほしいもんだ・・。
そんな事を考えながら俺が不味いメシを食っていると、鎧を身にまとった魔物がやって来た。
「おい、そこのお前。」
「・・?へ?俺?」
「お前じゃないっ、そっちだそっち。」
どうやら魔物に指名されたのは壁に寄りかかって何やら考え事をしているチャージのようだ。
「国王様がお呼びだ。来い。」
「けっ、なーにが国王だよ、ニセモノのくせに」
(まったくだ)
「黙れっ!お前らに用はないわ!」
魔物は怒鳴ると、チャージを連れて階段を上がっていってしまった。
「何でチャージなんだよ、俺も出せ〜〜〜〜っ!」
(精神を集中させろ)
「集中できるかよ〜!」
・・ったく・・・ん・・??むむ??
俺は異変に気付いた。見張りの兵士の影が、途端に小さくなった。
どうやら壁にもたれかかったようだが・・
しめた!こいつ居眠りしてる!
俺はサルの小さい手を活用し、兵士のポケットをまさぐった。
おおっ!鍵だっっ!
よ〜し、俺は意気込んで鍵をあける。
「行くぞっ、テュール!」
(落ち着いたのだがな・・)
「ええいっ、待ってろ偽国王!!勇者ルークとは俺の事だ〜っ!」
(サルの・・な。)
「うるさいっっ!」
俺は意気込むとテュールを構え、階段を駆け上がった。
チャージも助けなきゃならないしな。急ぐに限る。
だが、急ぐあまり俺は見落としていた。
ハーディンのペンダントが、微かだが、確かに輝いていたのだ。