第10話
「げほ、げほ・・」
王立図書館は、物凄い蔵書量を誇る。
あんな古ぼけた建物だから、全部収納できるわけがない。
という事で地下に蔵書があるわけだが・・・
物凄いほこり。
なので俺は思わず咳き込んでしまったのだ。
(確かにすごいほこりだな・・)
「ああ、「誇り」ある王立図書館だからな〜、あっはっは」
チャージは一人でくだらない事を言って爆笑している。ほこりが鼻にはいるぞ、ったく。
木造の巨大な棚が何段も、何段も。何列も、何列も。それを埋め尽くすとは・・
一生かかっても読めないだけ本があるらしいからなぁ・・。
(この中を探す・・のか?)
「うっ・・・」
確かに・・ペンダントは漠然と「図書館」という場所を指しているだけであって・・。
このハンパじゃない蔵書の中からたった一冊を探すのかよ・・。
ペンダントに問いかけたつもりだが、答えを示すはずもなくただ一定のリズムで点滅している。
「ま、とりあえず地道にいこうぜ〜」
チャージは前向きだ。いいよな、こいつは・・。
俺も少し見習うか・・
「よし、俺らも探そうぜ、テュール」
「あった〜!!!!!!」
!!!!!!!!!!??????????
な、なに!?!?!?!?
俺がテュールに語りかけたのとほぼ同時に、チャージが声をあげた。
奥のほうの、二段目の少し高い位置の書棚。
チャージが埃をほろっているのは確かにエーテル教の書物・・
その証拠に、近づいていくにつれペンダントの輝きが増してきている。
「お、お前・・」
俺は驚きのあまりただ口をパクパク。
「ははは〜俺は運が良いからなぁー!」
い、いや、運とかのレベル超えてるような・・。
ま、まぁ見つかったからいいか。
古ぼけた書物を、テュールが解読しはじめる。
(ふむ・・お前にも分かるように説明するとこうなる。教祖の時代、王が呪いにかかった。
教祖がそれを解いたんだが、王はたいそう感嘆して、エーテル教の布教に協力した。
そしてあることを条件に、エーテルの秘術書をゆずりうけて国宝にしたいと言った。)
「条件?」
(「末代まで国宝として大切に伝える事」「王家の者以外には決してこの事実を教えない事」)
「ってぇ事は・・城にあるのか!でも、待てよ・・?城にあるんなら、何でわざわざ
呪いを解く方法を探させるんだ?」
「ははは、そりゃぁ当たり前だろ、だって秘術つかえるだけの奴呼ばなきゃダメなんだから
な〜。だからどんな呪いかは秘密なんだな〜。」
「なるほど!」
「あ、でも・・」
俺の脳裏をよぎる第2の不安。
王家の者以外には秘密・・?って事は俺ら触れられないじゃないか!!
ががーーーーーん!
「そ、そんな・・・」
「ははは、俺、俺を忘れてないか?俺盗賊だぜー?」
「え?」
「忍び込んで、盗めばいいのさ〜!」
!!!!
こいつ、さらっととんでもないことを・・。
「冗談じゃない、失敗したらサルの身体のまま罪人だぞ!!!」
「でもなんもしなくてもサルは変わらないだろ〜」
うう、確かに。俺は心が、善悪だとかそんなもの以外の
何かとても大きなものに動かされるのを感じた。
サルは嫌だ!!!!
・・というだけの感情だ。
(大胆なのもいいな・・たまには。)
テュールも意外に乗り気だ。
よ〜し、いっちょやっちまうか〜!?
決意と同時に、モラルが崩壊するのも感じた俺であった。