第1話
ハッピーエンド-----------何て尊い、素晴らしい響きなのだろう。
俺がまだ子供の頃(と言っても現在17だが)親父の話してくれた物語の結びはいつも
「めでたしめでたし」だった。
「勇者募集」なるお触れに俺が志願したのも少なからずそんな経験の影響を受けたからだ。
そして俺は国王の前で絶対魔王を倒して世界を平和にすると誓った。まぁ多少ベタではあるけれど。
(いよいよだな、ルーク。)
テュールが士気を高揚させようと俺に話し掛ける。
あ、テュールってのは剣の名前。何故剣が喋るのかと言うと・・そりゃ俺にも分からないけれど
聖剣であるテュールは特別らしいって事で俺は納得してる。その聖剣を扱えるのが勇者だけだと言う
事実も俺に自信を持たせるのに一役買っていた。
(躊躇っているのか??珍しい。)
「い、いや・・ただこの扉を開けると全てが終るのかと思うとな。」
赤をベースに金や銀の豪華な装飾が施された、大きな扉。この奥に魔王が・・。
魔王城と言うともっとまがまがしい造りを想像していたが、通路がランプで照らされているあたり
イメージとは真逆だ。まぁ中の炎は魔力の産物だろうが、
そこらへんの金集めばかりしている貴族の屋敷のほうがよっぽど趣味悪いんじゃないだろうか。
考えれば城内には魔物もいなかったし・・罠じゃないだろうかと勘繰りたくなる。
(そんなに考え込むなんてルークのやる事じゃないだろう。)
何だか揶揄するような響きを感じたが、確かにその通りだ。どんな事だってノリでやって来たような
気がする。
(さあ、最終決戦だ。)
「・・・よし!!!」
俺はついに意を決すると、大きな扉に手をかけた。ギイイイと豪奢な造りにそぐわない、古びた木製の扉のような音がして、俺は大きな一歩を踏み出した。