4話 立場の行使
私は、シノさんにつられて、王城の、ウォークインクローゼット的な部屋に来ていた。
「好きな服を選んで」
えっ、いいんですか? 私農民だよ?
「これは……、私が着てもよろしいのですか?」
「ええ、勇者様には良い服を着てもらいたいの」
「…汚れてしまいますし、ルリさんのような服で構いません」
「本当に? 謙虚な勇者様だこと。では、それを持ってくるわ」
「ありがとうございます」
今も布の下は裸だからな。冷害みたいだし、ちょっと厚めだと助かる。
数分、きれいな服や装飾を眺めていると、シノさんが戻ってきた。
「これで大丈夫?」
着てみた。ちょっとオーバーサイズだが、子供ならすぐに成長するんじゃないか?
「ちょっとぶかぶかみたいだけど、いい?」
ぶかぶか、かわいい。
「大丈夫だと思います」
「じゃあ、あなたの家に案内するわ」
えっ、家までくれるの? てっきり、王城の一部屋に住むのだと思っていたけど……。
ウォークインクローゼットから出るとルリがいた。
「あなたも、ミカの家を知っておいたほうがいいわね」
「私と同じ服にしたんですね? かわいいです!」
そう言って私の頭を撫でてきた。
「ちょっと、軽々しく勇者様に触るのはやめなさい?」
「すみません…」
勇者様って呼ぶのもやめてほしい。言われ慣れていないから、少し、恥ずかしい。
大きな門をを抜けて、王城から出た。
綺麗だ。ただ、そう思った。
王都の中心には川が流れていて、ところどころに橋がかかっていた。
建物は白く塗られていて、夕日を反射させていた。屋根は、レンガ調で沖縄の屋根みたいだ。夕日の赤とよく合っている。
右側には、森が見える。私の世界では見なかったような、不思議な森。同じような高さの木が続いているんじゃなくて、いくつか、ものすごく高い木が散見される。
左側は海。川が流れ込んでいる。砂浜もあるみたいだ。
道にはちょっと坂があるけど、綺麗に整備されているし、建物と同じで白色。
王城の前の大通りは、人もたくさんいて、お店もあった。——今は閉まっているみたい。
いい街だな。
「ここが、レセニア王国の首都、シロキよ」
白き、ね。わかりやすい。
「私も王都に住んでいるんですよー」
「そうなんですね」
「ミカの家はこっちよ」
そう言われ、王都を進んでいった。
5分くらい歩いたかな。王城はそこまで大きくは無かったけど、街の中での存在感は大きい。
「ここがあなたの家よ」
案内されたのは、貴族が住むような、大きな家。本当に、大きすぎるくらい。
「やっぱり、ミカさんはいいところに住むんですね、羨ましいです」
本音だろうね。そこに妬みとかない気がする。
「中に入っていいわよ」
引き戸だった。すごいね。
ってか、内装豪華過ぎません!?
身の丈にあっていないとかのレベルじゃない。
レッドカーペットだし、大きなシャンデリアにソファ、よくわからん壺まで置いてある。
2階は寝室とバルコニーで、収納スペースも豊富。
他国の貴族の別荘にでもしたらどうかな。
流石に駄目だけど。
「……、私には遠慮させていただきます」
勇気を出して、言った。こんな家に住む理由がないよね。
「どうして? 貧相すぎたの?」
シノさんの基準値がおかしい。これ以上を求めたら国にダメージがいくよね。
「貧相ではありませんし、私の身の丈にあっていません。私が言いたいのはそういうことではなく、農業のスキルが活用できるような立地が良いと思うのです」
言い訳乙。まぁ、こう言えば普通の家にしてくれるだろう。
「はっ! 私としたことが、失念していたわ」
「でしたら…」
「郊外に家を建てればいいのね?」
違う。
「普通の家を与えてください」
おこがましいけど、仕方ない。
「ミカは、それでいいの?」
「はい、実を言うと、こんな立派な家住んだことなくて落ち着かないですし、一般的な範疇に収まるくらいがちょうどよいのです」
「本当に謙虚なのね」
そんなことないよ。今までの異界人は傲慢だったのかな?
「いいわ、シロキ川の下流付近に、土地のある家があるから、そこに案内するわ」
「えっ、私の家の近くですね!」
「じゃあ、いつでも教えてもらえますね」
「勿論です。頼ってください」
ルリは、胸に手を当てて、そう言った。
◇◆◆◆◇
流石に下流は遠かった。20分くらい歩いてようやく着いた。王城は小さく見える。
——駅から高校までも、そのくらいの時間だ。
「ここよ、さっきのよりは貧相だけど」
「貧相じゃないですよ、和室、私の好みです」
小道に面している家だ。今度は木造建築で、すごく和風な雰囲気。
縁側から、私の土地が見える。綺麗に手入れされていたみたいだ。
「ここでいいのね?」
「はい、気に入りました」
私の家、よろしくね。
「私達はこれで」
「ミカさん、また明日」
あっ
「待って、ルリさん」
「どうかしましたか?」
「私と、この家で住まない?」
「「えっ」」
2人揃って絶句。
「ミカさん、流石にそれは大胆すぎます///」
照れてる。
「確かに、さっきの家と違って城が近くないから、護衛がいたほうが安心…?」
合理的だね。
「まぁ、こっちの家も十分広いし、1人じゃ、寂しいかなって…」
「か”わ”い”い”っ。私、嬉しいです」
恥ずかしい。
「わかったわ。ルリの住所は変更しておくから、城まで来なくてもいいわ」
「女王様やさしいです」
「ミカのためなのよ?」
「じゃあ、ミカさん、私は急いで荷造りしてきますから」
「ルリと頑張ってね。あっ、これ1週間分の食材ね。……料理、できるよね?」
空から、大きな袋が出てきたように見えた。どこから出した? スキルなのかな。
「はい。大丈夫です」
一緒に住もうと提案したら、ここまで喜ばれるとは思わなかった。
ルリさん、よろしくね。




