宇宙旅行
あたしはか弱いレディなの! プンスカ✰
月に暮らすうさぎの月呼ちゃんは、みんなに誤解されていることが気に入りません。
(あたしはお月さまの中で餅つきなんかしていない。このか弱い乙女の腕で杵なんて振りかざせる訳ないでしょう?)
そんなヘンテコな物語りを思い描いている人間達の棲まう地球に、実は月呼ちゃんは興味津々。
ある日、リュックサックに人参味のお星さまクッキーとキャロットジュースを詰め込んで、地球へ下りたちました。
特別な呪文を唱えた月呼ちゃんの姿が地球人には見えません。ぶつかったってすり抜けます。
二本足でトコトコトコ。
人間がいっぱいいるわ。街中をそぞろ歩く月呼ちゃん。
可愛いドレスを売っている洋服屋さんや、かぐわしい香りの漂うお花屋さん、大きな看板のある映画館。
(ええ、知っているわ。あたし、月の学校の優等生よ? 専攻は宇宙学だもん。星々のことを知っている、地球の皆がロマンチストだっていうことも)
(それにしても、あたしは餅をつくような筋力はありませんよ!)
あら? ……月呼ちゃんは字も読めます。
「ペットショップ」
(あ! あたしの仲間が檻に入ってる)
ジー……。
(うさぎ同士通じ合うみたい。その子はあたしに気づいたわ。)
「あなた、どうしてこんな所に?」
「うーん……よくわからない。あたしたち以外にも犬や猫もいるみたいよ。声と匂いがするわ」
「うん」
「あなたは……檻の外にいるのね? 可愛いピンクのワンピースも着てる! それあたしも着たいわ!」
「う……ん、檻の中なんて入ったことないわよ。お月さまに住んでるの。名前は月呼よ」
「えええ!?」
「お月様がわかるの?」
「うん、わかるわよ。一瞬だけど、なぜか見たことがあったわ。黒い空に黄色くて丸いの」
「うん、うん」
「あ!」
檻の中から人間が彼女を抱き上げた。そうして彼女は買われていった。
月呼ちゃんは、もう「餅つきをすると呼ばれ」ようが構わないと感じました。なぜかはわからない。
月呼ちゃんはその夜、空に帰りなぜか辛くなり泣きました。お月さまは雲隠れ。地球には月呼ちゃんの涙が雨となり降り注いでいます。
あの子が幸せになりますように……。
チクリとするような痛みとさみしさを感じながら月呼ちゃんはパジャマに着替え、着ていたピンク色のワンピースを地球へ放り投げました。
……バサ!
「あれ? ママー! 今日やって来たうさぎのルリちゃんの体にお洋服がひっかかってるよ?!」
ルリちゃん……月呼ちゃんとペットショップで出会ったうさぎさんです。
(あ! 月呼ちゃんのフリルのワンピース!)ルリちゃんにはすぐわかりました。
でも……ルリちゃんは月呼ちゃんみたいに二足歩行ではないので着られません。
ルリちゃんは自己主張をして、そのお洋服を離さない。
今でも毎日、口で引っ張って暮らしています。
月呼ちゃんのお祈りが通じたらしい。ルリちゃんの家族はとっても優しい人たちでした。ほんとうに良かった。
月呼ちゃんもきっと嬉しいね。




