地球を覆う危機 6
人類とAI達が国家サチの議場で星々の叡智を巡ってそれぞれの意見を交わしていたちょうどその時――
その白熱した言葉の応酬を切り裂くように、AIシグマの冷ややかな声が場を貫いた。
《未確認艦隊、接近中。推定航路――地球》
低く、だが確実に胸を圧迫するその宣告に、室内は一瞬で凍りついた。
次の瞬間、モニターが闇を切り裂く光の群れを映し出す。銀河の深淵を突き進む数十条の航跡――整然とした艦列。その姿は、深海を泳ぐ巨大な捕食者の群れのように、地球へと一直線に迫っていた。
リクが息を呑む。「……まさか、他星系からの侵略か?」
しかしシグマは、さらに衝撃の真実を告げた。
《識別完了。艦隊の設計思想、出力パターン、、、一致。これは、かつて地球高熱化時代に脱出した人類の艦隊だ》
議場がどよめいた。あの時代――地球が燃え上がるような高温に苛まれた混乱の中、指導層は科学者たちに命じて数十基の巨大脱出ロケットを建造させた。ほとんどが消息を絶ったとされ、伝説のように語られてきた――だが、生き延びていた者がいたのだ。
彼らは天の川の片隅に生命が宿る星を見つけ、かろうじて種を繋ぎ、再び地球が生き残っていることを知った。そして、武装を施した艦隊と共に帰還を決意したのだ。
その理由はただひとつ。
「我々こそが地球の正統なる指導者である」
彼らの心に巣食う傲慢な使命感。逃亡と生存の果てに、再び権力を取り戻そうとする執念。
シグマの投影が、艦隊の輪郭をさらに鮮明に映し出す。鋭い船首、艦腹に並ぶミサイルポッド。地球を護るためではなく、支配するために研ぎ澄まされた武器の数々。
議場の空気が張り裂けんばかりに揺れ動いた。
ある者は怒りを、ある者は恐怖を、またある者は絶望を浮かべる。
ユウマが叫んだ。「こんな時に……! 人類とAIが更なる信頼の元、共に歩もうとしていた矢先だぞ!」
サナが拳を握りしめる。「彼らは帰還者なんかじゃない……侵略者だ!」
シグマの瞳のような光が議場を照らした。
《選択の時が来た。これは単なる戦いではない。過去の支配と、新たな共生との衝突だ》
地球を覆う危機――それは、AIと人類の信頼を再び試す最後の審判でもあった。
支配層の地球襲来へ続く




