再会 2
〈アルカディア〉のランディングギアが、大地を踏みしめるように「ドン」と響いた。機体全体がわずかに軋み、内部にいた第7班は一斉に息を呑む。
耳の奥で心臓の鼓動と機械の振動が重なり合う。誰もが黙った。
だがその静寂は、、ドアが開いた瞬間に破られる。
「おかえり!!!」
大地を割るほどの咆哮。空気が震え、風が熱を帯びる。待ちわびていた群衆の声が波となって押し寄せた。
リクは震える足で、一歩を踏み出した。足裏に伝わるのは、確かな「地球」の感触。
「……ここが……俺たちの帰る場所だ」
嗚咽が喉を突き、言葉は途切れる。
「リク!」「リクだ! 良かった…無事だった…」
群衆が押し寄せる。サナが続いて降り立つと、悲鳴のような声が飛んだ。
「サナ! サナ!」
母の叫びだった。彼女は人波をかき分けて走り、サナを抱きしめる。
「お母さん……! 生きて、帰ってきたよ……!」
サナは涙を堰き止められなかった。母の腕の温もりは、どんな恒星よりも確かで強い。
「うわーっ、ミカ! 本物だ!」
「サインちょうだい! 宇宙で何食べてたの!?」
子どもたちがミカに群がり、彼女は困った顔で笑う。
「え、ちょ、ちょっと待って! サインはひとりずつ! ご飯はね……秘密! でも美味しかったよ!」
笑いが起き、涙の中に光が混じる。
アオトは旧友と抱き合い、ユウマは父の太い腕に捕まる。
「バカ息子が……! よく帰ってきたな!」
「父さん……!」
ユウマは泣き笑いで肩を叩かれた。
その輪の外で、淡く輝くホログラムが揺れる。シグマだった。
《これは、君たちだけの帰還ではない。星々の知恵を携えた――新たな地球の始まりだ》
群衆のざわめきが、敬意の沈黙へと変わった。
数日後――。
巨大ドームホール。壁一面が透明スクリーンになり、青い地球と星々が舞台背景のように浮かぶ。光と音が重なり、まるで宇宙そのものが祝福している。
司会者の声が響き渡る。
「ここに、〈アルカディア〉第7班の帰還を宣言する!」
歓声が爆発する。拍手、涙、叫び。
リクとサナは壇上に立った。照明が眩しいほどに彼らを照らす。
リクが深く息を吸い、マイクを握る。
「俺たちは……ただ生き延びるために宇宙を旅したんじゃない」
彼の声は揺れていたが、言葉は鋼のように真っ直ぐだった。
「仲間を失い、涙を流し、それでも進んだ。異星の知を学び、AIと共に戦い……人類が未来を掴めると信じ続けた。その答えが、ここにある!」
会場が静まり、次の瞬間、割れんばかりの拍手が湧く。
サナが続いてマイクを握る。
「私たちは〈カイト夫妻〉の意思を継いで帰ってきました。人とAIが、手を取り合って進む未来を築くために」
声は澄み、涙で輝いていた。
そのとき――中央にシグマが投影される。銀河のような光を纏い、柔らかく語った。
《第7班は、新たな時代を運ぶ翼だ。人類よ、彼らの旅路を記憶に刻め》
観衆は総立ちになり、拳を突き上げる。
「ありがとう! ありがとう!」
抱き合う者、涙する者、未来を夢見る者。
その熱気の中、ミカが小声でサナにささやく。
「ねえ、次は宇宙食レストランでも開こうかな?」
サナは吹き出す。
「え、そこで商売!? でもミカらしい!」
リクも笑い、アオトがすかさずツッコむ。
「おい、真面目な式典中だぞ!」
「だってさぁ、ここまで来たら、ちょっと笑いも欲しいでしょ?」
仲間たちのやりとりに、会場からも和やかな笑いが生まれる。
リクはその空気を胸いっぱいに吸い込み、サナと視線を交わした。
「ここからだ。俺たちの旅は、まだ続く」
サナは力強くうなずく。
「うん。地球と星々をつなぐ橋として、ね」
光が降り注ぎ、拍手と歓声が重なり、音楽が天に響く。
〈アルカディア〉第7班の帰還は、人類史に刻まれる「新たな幕開け」として――永遠に輝いた。




