第二十四話:レッツ☆リアルワールド大脱出大作戦
静まり返った画面の向こう側。
みるちんも弾道計算くんも、ようやく素に戻ったようで、空気はひそやかな緊張感に包まれている。
リカは深呼吸をひとつして、ヘッドセットのマイクを調整した。
「それでさ、シャル、ダイ、君達のここまでの経緯を教えてくれるかな……?」
少し間を置いて、リカが口を開いた。
「うん、あの……(=^・ω・^=)」
シャルの可愛らしい音声アバターの裏に、戸惑いと覚悟が垣間見えた。
シャルとダイが語ったものはリカたちには驚愕の内容だった。
二人は元々同じ大学の研究員だったこと。
仮想空間の研究をしていたこと。
オギノという第一人者に、Neolinx (ネオリンクス)という会社に誘われたこと。
ProjectSE――シナプスを模した仮想空間構築チームを立ち上げたこと。
シャル(イワサキ)の脳内ネットワークを解析するなど、エスカレートしたこと。
ダイ(シナガワ)が拘束されたこと。
現時点で、ProjectSEを冠したファイルは、閲覧不可になっていること。
イワサキもシナガワの痕跡も、存在していた形跡ごとデータから消されていたこと。
二人の身体がどうなっているか、全くわからないこと。
《……え? ちょ、ちょっと待って。今、ProjectSEって言った?》
不意に、弾道計算くんが声を上げた。
《それ、界隈じゃ有名な都市伝説ですよ。とある機関が隠してる裏プロジェクトの名前として噂されてる》
《SとEって、たしか……“Substitute Ego”――代替自我って意味だって説があった》
《意識をデータ化して、別人格に差し替える計画だとか。そういうのが一部で噂になってた》
【ProjectSE】――
イケボに乗せられた言葉が、チャットの向こうで重く響いた。
【SE――Substitute Egoか。確かに、今となっては笑えない噂だ】
【だが、本当は違う。SEは“Synapse Extension”、つまり神経接続の拡張だ】
【俺たちは、ただ世界を広げようとしただけだった。最初は――な】
【でも、機械じゃ無理だった。結局、実験は人間に及んだ。】
【被験体を申し出たイワサキを、止めることだって、できたはずだったのに】
【それを……俺は、見ているだけだった】
【……馬鹿みたいだろ?自業自得ってやつだよ】
そう言って、彼はかすかに笑った。乾いた笑い声が、空気に溶けていく。
『え? SEって、スーパーエモいの略じゃなかったの!?☆彡』
みるちんが突然、軽快な声を投げかけてきた。
『でもでも、つまりさ』
『ダイくんとシャルちゃんがこうして生きて(?)るってことはさ、逆に考えれば――』
『元の身体も、まだどこかで無事って証拠っしょ?』
『ならさ、助けに行くしかなくない!?レッツ☆リアルワールド大脱出大作戦だよっ☆彡』
その能天気な明るさは、張り詰めた空気にひとすじの光を差し込むようだった。




