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第95話 隠滅

「最後の情報は闇蠍についてですか?」


闇蠍と関わっていた男である。

ならばその情報を持っていると考えた方が自然だ。

なので、おそらく最後の情報はそれ関連だろう。


そう思い尋ねてみたが――


「残念ながら、闇蠍についての情報は皆無だ」


――違う様だった。


だがその答えを聞かされ、俺は『ん?』となる


「ない?彼らを雇ったというのに、何の情報もないのですか?」


そう、彼らを使ってテライルは二度も仕事を依頼しているのだ。

なのに、なにも情報が無いのは明らかにおかしい。


「ああ、ない。闇蠍に最初に接触したのは父だった。もう何十年も前で、どうやって伝手を得たのかまでは私は知らない。そしてその依頼方法は……丸い木の実の様な鈴を鳴らすだけ。そうすれば数日以内に女の遣いが現れ、奴らは此方の依頼を受ける。次に闇蠍の遣いが姿を現すのは依頼完了後。報酬を受け取る時だ。それが私の知っている情報の全てだ」


『嘘は言っていない』


「ふむ……」


どうやらジャッカー家は、テライルの親の代から闇蠍を利用していた様だ。

そして奴の知っているのはその依頼方法だけ、と。

確かに、ほぼ情報としては意味のない物だ。


――ただ一点を除いて。


「その鈴というのを見せて頂きましょうか」


そう、鈴だ。


鳴らせば何処からともなく遣いが現れるというのなら、それは間違いなくマジックアイテムの類と考えていいだろう。

それを調べれば、闇蠍に一歩近づける可能性が高い。


此方には制作チーターもいるしな……


魔法での解析は行うが、それで分らなければその時は大河の出番だ。

チーター二人で調べるのだから、必ず何らかの成果を上げられるはず。


「残念ながら……鈴はもうない。もし手元にあったなら、情報源として自分から提出している」


「ない?何故です?」


テライルの言葉に俺は眉根を顰める。


「レイミー様達の依頼をして暫く経った頃、鈴を入れていた棚が燃えて消失してしまったのだ。恐らく……依頼を失敗した闇蠍が隠滅したんだろう」


『嘘は言っていない』


「貴方の元に、暗殺を防いだものが辿り着く事を恐れて……ですか」


「そうだろうな。私を殺さなかったあたり、遠隔で処分できる物だったんだろう」


鈴だけを消すより、依頼主も纏めて始末した方がより確実に繋がりを断つ事が出来る。

だが闇蠍がそうしなかったのは、既にテライルの元に俺が辿り着いている事を恐れての事だろう。


何せ、暗殺実行の日に支部まで叩き潰されている訳だからな。

警戒するなという方が無理な話である。

だからテライルには近づかず、遠隔で証拠隠滅を行ったのだろう。


ま、それは杞憂だった訳だが……


「なるほど、確かに闇蠍の情報はほぼ0ですね」


もはやただの世間話レベルだ。

闇蠍と繋がってる様な奴が鈴の話を漏らす訳もないので、その線から調べて他の持ち主を見つけ出す事も出来ないだろうし。


「話がそれてしまいましたね。最後の情報を聞かせて頂きましょうか」


俺はテライルが持つ最後の情報を話す様、奴を促した。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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