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第82話 余計な事を

――第三王子の寝かされている部屋。


「アークにも見えなかったの?」


コーガス侯爵家の執事長との話し合いが終わったアーク達は、別室で王子の様子を見ていたミルラスに事のあらましを説明する。


「ああ、全く見えなかった」


「そりゃまあ……とんでもないわね」


「力は感じていたで御座るが……目の前でああもはっきりと示されると、流石にぐうの音もござらんよ。あれはまごう事無き化け物で御座る」


「まったく……コーガス侯爵家はとんでもない手札を持ってやがる。聖女の件も含めて考えたら、提案通り王子を預かって貰うのが一番安全なのかもな。もう何だったら、第一王子と第二王子もあの執事様に何とかして貰うか?」


「確かに、あの執事さんならそこまでやってのけても不思議じゃなさそうね。でも……その場合、最悪ミドルズ公国はエンデル王国の属国になりかねないわ」


荒れる王位継承を隣国が静め、一番芽のなかった第三王子に王位を継がせる。

何処からどう見ても、傀儡政権が始まる予感しかしない構図だ。


「冗談だよ。じょーだん。そう怖い目で睨みなさんな」


自身の発言でローラに白い眼を向けられてしまい、タルクが軽く肩を竦める。

実際軽口であると彼女も認識してはいたが、今の状況で口にするには内容が余りにもブラック過ぎた。


「けどまあ……第三王子の保護自体は、前向きに検討するよう伯爵に勧めてもいいんじゃねぇか?実際国内に残るより、あの化け物執事と聖女様に守って貰った方が安全だろうしな」


「もちろんお父様には話をするけど……正直、どこまで信用できるかって問題があるわ」


力づくで奪う事も容易かったろうが、コーガス家の執事はそうせず自分達に対して協力的な姿勢を見せている。

なので少なくとも、第三王子を害する心配はないという事はローラにも理解できた。


だがだからと言って、それが直ちに信頼に繋がる訳ではない。

仮にも貴族の娘である彼女は、どうしてもその裏に意図があると考えてしまう。


「何か悪い事を企んでるって事はないんじゃない?侯爵領には噂の聖女様も居る訳だし」


「ミルラスは純粋だねぇ……聖女様が必ずしも聖人とは限らんぞ?いい人間の仮面を被ったロクデナシなんて、世の中五万といるからな」


タルクが揶揄う様にそう言う。


だが実際、彼の言う通りではあった。

世の中善人のふりをして他人を騙す悪人は多い。

そして聖女タケコもまた、コーガス侯爵家の都合の為に用意された偶像にすぎなかった。


「うわ……あの執事さんに聞かれたらぶん殴られそうな事言うわね。タルク」


聖女はコーガス侯爵家の恩人にあたる人物だ。

実際どうかは兎も角、その聖女に対する陰口が聞かれれば相手の顰蹙(ひんしゅく)を買う事は想像に難くない。


「ははは、そうだな。けどまあ流石に聞いちゃいないだろ。悪口ってのは聞かれてなきゃ無効だ」


「多分筒抜けで御座るよ」


「なに!?」


ニンジャマンが、ベッド脇で丸まっているウルを指さした。

ウルは話し合いの時点からミルラスと共に第三王子の側に残っており、そのまま小型化した姿でその場に留まったままだ。


「おいおいビビらすなよ。いくらなんでも、言ってる事までは分からねぇだろ。なあウル」


間諜である事は分かっているが、流石に言っている事までは理解できないだろう。

そうこの場の人間は思っていた。

だからこそ。気にせず話をしていたのだ。


まあ実際は、タケルの分身であるため会話は全て筒抜けだった訳だが……


「ワウ?」


ウルがタルクに声を掛けられ、頭を起こし不思議そうに首を捻った。


もちろん演技である。

言葉が良く分かっていない。

そう思わせた方が便利だからだ。


「忍犬は完璧に人語を理解してるでござるよ。でなければ、コーガス侯爵家の間諜は

務まらないで御座ろう?にんにん」


「う、言われてみれば……」


「確かにそうだな。執事さんが俺達の救出にこれたのも、此方の状況を正確に把握していたって考えた方が筋が通る」


せっかく彼らが見落としていた事を指摘され、聞かれたくない話をこの姿で聞く事が出来なくなったウルが内心舌打ちする。


『せっかくアーク達が見落としてたってのに、余計な事言うなこのニンジャ女』


と。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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