表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/105

第73話 出まかせ

第三王子による公王暗殺。

それは衝撃的な報だった。


当然の事だが、公国の貴族達の中でそれを信じる者など居ない。

第三王子は公王から愛されており、その強い後ろ盾だったのだから当たり前だ。


仮にそれを除いたとしても王子は優しく穏やかな性格をしており、自分の父親を手にかける様な人物でない事も広く知られている。

そんな王子が公王を暗殺したなど、誰が信じると言うのか?


今回の暗殺劇を裏から手を引いていたのは、間違いなく第一第二王子のどちらかだ。

だがそれを分かっていても面と向かって指摘し、捕らえられた第三王子の救出に動く者はいない。


公王が後数年健在だったなら状況は変わっていただろうが、現在の第三王子は未成年な上に基盤も虚弱極まりない状態だ。

それに対して上二人の王子の基盤は、国を掌握可能なレベルに達している。


そのためこの混乱のさなか下手に庇う様な動きを見せれば、自分達が大きな痛手を受ける事になってしう。

いや、それどころか、下手をすれば公王暗殺の共謀の濡れ衣を着させられかねないのだ。

そうなれば待っているのはば破滅。

だから公王派閥だった貴族達も下手には動けないのである。


だが、だからと言って何もしない訳にはいかない。

そこで取られた手が――


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ミドルズ公国王宮より少し北には大きな霊園がある。

曇り空に寄って月明りさえ届かない深夜遅く、その場所に5人の人影があった。


「最後にもう一度確認するわよ。参加した人間は全員重罪のお尋ね者になる可能性があるわ。引き返すならこれが最後のチャンスよ」


その場にいるのは青の勇者一行と、行動を共にするニンジャマンだ。

ローブを着た金髪の少女――ローラがその場にいる全員の顔を見まわし、そして確認する。


――第三王子救出作戦の最終確認を。


「このまま黙って第三王子を見捨てる事は――悪を見過ごす事は出来ない」


先に進めばもう後戻りはできない。

だが青の勇者と呼ばれるアークは迷いなくそう答えた。


「アーク居る所にミルラスあり!ってね。アークがやるなら相棒であるあたしも一緒じゃないと」


アークに続き、ミルラスが軽い口調でそう告げる。

彼女にとって、お尋ね者となる事よりアークと離れ離れになる事の方が問題だった。

なので引き返すと言う選択肢はない。


「新しい職場(パーティー)を探すのも面倒だからな。付き合ってやるさ」


ふざけた口調ではあるが、タルクらしいとも言える答えにメンバーの口元に笑みが浮かぶ。

三人から答えを貰ったローラは、最後の一人、ニンジャマンへと視線を向けた。


「拙者の里の祖――ニンジャマスター・サムライは、かつて世界に災いを齎した邪悪なる獣を封じたと伝えられているで御座る。そして拙者にはその正義の血が流れている……ならば、この正義の執行と言うべき任務(ビッグウェーブ)には乗るしかないで御座ろうよ。にんにん」


普段はただパーティーの近くにいるだけの彼女だったが、今回はローラ――正確には伯爵家――の依頼を受けて正式に救出作戦に参加する事になっていた。


「皆、ありがとう。改めてお礼を言うわ」


表立って動けないエルント伯爵家に変わり、国家の為、そして家の為にこの危険な仕事引き受けたローラが4人に頭を下げた。


「俺達は仲間なんだから当然だろ。それより……ウルはどうしようか?」


アークが狼のウルを見た。

ウルは通常の狼よりかなり大きく、これから使う秘密通路を通った潜入には向かない。

というよりも、サイズ的に狭い通路を抜ける事は出来ないだろう。


「ウルにはここに残って貰うしかないわね」


「ま、しょうがないな。こいつ無理やり連れてって、通路に詰まったら洒落にならないし」


「ウル、良い子でお留守番――とはちょっと違うか。まあ待っててね」


「ウル。俺達は行って来るから」


皆がウルをこの場において出発しようとしたその時、ウルが一吠えする。

するとその姿が――


「「「「――っ!?」」」」


――見る間に縮み、まるで子犬の様な姿になってしまう。


「え?え?」


「これは……」


その思わぬ変化にミルラスが目を丸め、他のメンバーも絶句する。


ただ一人を除いて。

そう、ニンジャマンだけは全く驚いていなかったのだ。

そして彼女は自信満々にこう告げる。


「これは間違いなく忍犬で御座るな。にんにん」


――と。


もちろん、適当に思いついた口から出まかせである事は説明するまでもないだろう。

彼女は幼い頃からの精神修練のお陰で、単にびっくりしなかっただけである。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
天才ですが何か?~異世界に召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレとして放逐されてしまう~だがやがて彼らは知る事になるだろう。逃がした魚が天に昇る龍であった事に
異世界に召喚されたがハズレクラスだったため異世界に放棄された主人公。本来なら言葉すらも通じない世界に放り出されれば絶望しかない。だが彼は天才だった。これは持ち前の超学習能力で勇者を越える存在へと昇りつめる天才の物語
無限増殖バグ始めました~ゲーム世界には運営が居ない様なので、本来ならアカウントがバンされる無限増殖でアイテム増やして最強を目指したいと思います~
気づいたらゲーム世界。運営がいるならと、接触するためにBAN確定バグを派手にするも通知来ず。しょうがない、もうこうなったらバグ利用してゲーム世界を堪能してやる。目指すはゲームじゃ手に入れられなかった最強装備だ!
― 新着の感想 ―
ウルおまやるじゃん!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ