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第49話 察する

王都の厳戒態勢はまだ続いている状態だが、今日、俺達はコーガス侯爵領――旧魔王城跡地一帯へと向かって出発する。


「レイミー・コーガスです。この度は我が領地の呪いを解呪して頂けるとの事で、なんとお礼を言っていいか」


「ふふ、お気になさらずに。私個人として、魔王の残した呪いを放っておけないだけですので」


アクレインはコーガス侯爵家の馬車に乗って一緒に移動する。

彼女に転移魔法があるのは周知の事実ではあるが、転移は行った事のある場所、もしくはその周囲にしか移動できない魔法だ。

そのため、まだ現地に行った事がない聖女タケコは転移で直接向かう事が出来ない。


という設定。


因みに、王家からは騎士達が10名ほど随行員としてついて来る事に。

これは聖女に対するポイント稼ぎというよりかは、王家の領域内で起きたトラブルをフォローする事で、少しでも自分達の面子を立てようとしての事だろうと思われる。


――馬車での道程は襲撃もなく順調に進んだ。


護衛が倍加したため襲撃を諦めたのか。

それとも撃退された時点で諦めたのかは知らないが、まあ平和そのものだ。

ちょっと問題があるとすれば、王家の騎士がサインに対抗心剥き出しだって事ぐらいだな。


具体的に言うと、約二名がずっと(サイン)にがんを飛ばして来る。


そいつらは大会で瞬殺した奴らなのだが、あれだけ圧倒的な差でやられたのに恨みがましい視線を飛ばせるその神経が俺には分からん。

まだ戦場で酷い目に遭ったとかなら分かるが、ただの力比べの大会だってのに、王家の騎士が何やってんだとしか言いようがない。


ま、延々無視するけど。

こういう輩を一々相手にしていたのでは、コーガス侯爵家の筆頭騎士であるサインの格が下がってしまうからな。


「という訳なの。凄いでしょ」


「ふーん」


レイミーがレイバンに、聖女や大会の話をするが、彼は興味なさげだ。


え?

なんで旧魔王城跡地一帯に向かってる最中なのに、侯爵邸にいるのかって?


定期的に宿から転移魔法でレイミーと共に帰宅しているためだ。

レイバンが寂しがらない様に、と。


「本当に幸運でした。解呪が終われば本格的に整備を始める事になりますので、いずれこの屋敷も引っ越しする事になります」


「……」


幸運という言葉に、レイバンは胡散臭い物を見る目をベッドの上から俺に向ける。

レイミーは一連の行動を『何て幸運なのかしら』的に受け止めているが、彼は若干察している様だ。

俺が裏で何かしている事に。


鋭いのは良い事である。

何せ、彼はいずれコーガス侯爵家を背負って立つ男な訳だからな。

俺が支えるとは言え、どんくさい暗愚より優秀な方が良いに決まっている。


「タケルさんが来て以来、ずっと幸運続きですね。ふふ、まるでタケルさんは福の神みたい」


レイミーの屈託ない笑顔。

まったく違和感を感じないってのもどうかって気はするが、まあ特に弊害はないしいいだろう。


「神は。コーガス侯爵家を見捨てずにいてくれたという事でしょう」


俺の言葉に、レイバンが再び此方に胡散臭そうな視線を投げかけた。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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