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第41話 決勝戦

「さあエンデル王国武闘祭も大詰め!」


アナウンサーの大声が会場に轟く。

ビックリするほど声が大きな訳ではなく、これはマイクとスピーカーの様なマジックアイテムの効果だ。

この世界は科学技術がさほど発達していないが、代わりに魔法を元にした特殊な技術が発展している。


「決勝戦のカードは――コーガス侯爵家筆頭騎士を務めるサイン選手対、全てが謎に包まれたナイフ使いのブルドッグ選手です!」


結局準決勝はあの後、猛攻をブルドッグに手堅く堅実に捌かれて敗北し、奴のヴェールを剥がすには――そもそも、そんな物はない可能性もあるが――至っていない。


「ま、何とでもなるだろう」


「それでは試合開始!」


審判の開始の合図。

俺は一礼してから剣を抜く。

コーガス侯爵家の騎士である以上、礼節を欠く様な真似は絶対に出来ないからな。


……ん?


ブルドッグがここまで扱って来た得物は短剣だ。

なので当然短剣を使うのだろうと思っていたのだが、何故か奴は懐から一本の小さな木の枝を取り出す。


何の変哲もない木の枝。

だが俺はそれに見覚えがあった。


まさか……


それが勘違いでない事を示す様に、ブルドックの手の中でその枝が姿を変える。

美しい、意匠の施された美しい木の弓へと。


世界樹の弓(ユグドリオン)……」


「おおっとぉ!ブルドッグ選手が取り出した木の枝が突如美しい弓へと変わってしまったぁ!これは一体なんだ!?何らかのマジックアイテムでしょうか!?」


アナウンサーが叫ぶ。

それがどういう物か知らないのも、まあ無理もないだろう。


大陸北部に立つ巨大な生命の木――世界樹(ユグドラシル)

その枝から秘術によって生み出される神聖な弓。

それが世界樹の弓(ユグドリオン)だ。


――そしてこの弓を扱えるのは、世界樹の麓で暮らす神秘の種族と呼ばれるエルフだけである。


エルフは閉鎖的な種族であり、世界樹の近辺から出て来る事のまずない引きこもり達だ。

そのため彼らの扱う特殊な弓(ユグドリオン)を知る者は少ない。


……なんでエルフが大会になんて出てるんだ?


訳が分からず俺は首を捻る。


「ブルドッグ選手が動いた!」


ブルドッグが背後に飛び、それと同時に弓を引き絞った。

それは俺の知る動きだ。


100年前の魔王との戦いは、エルフ達も参加している。

当時の魔王の存在は、世界そのものの在り方を脅かしかねない危険な存在だったからな。

閉鎖的なエルフ達とは言え、流石に森から出てきて戦わざるを得なかったという訳だ。


「――っ!?」


ブルドッグの手にした弓に、光る矢が生み出される。


これは魔力によってよって精製された物だ。

物理ではなく、特殊な魔法攻撃。

それが弓の扱いに長けたエルフのメインウェポンとなる。


「この波長、まさか……」


魔力で生み出された矢。

その矢から、俺の知る懐かしい魔力の波長を感じる。


この魔力は間違いない。

奴だ。


そう、この魔力は――


「――くっ!?」


ブルドッグの手から光る矢が放たれた。


それは一瞬で眼前に迫る。

想像以上の速度に面喰いつつも、俺は咄嗟に手にした剣でそれを切り払う。


「随分強くなってやがるな」


――100年前、共に魔王と戦った相棒の物だ。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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