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第16話 交渉

「お話は済んだようですので……レイミー様、わたくしの方で会議を進行させて頂いてよろしいでしょうか?」


「ええ、お願い」


一人芝居を入れつつ、会議を進める。

まあ進めるとは言っても、内容は無い様なものだが。

あ、駄洒落じゃないぞ。


「さて、魔物の凶暴化についてですが……不肖、代官であるこのタケル・ユーシャーの名にかけて皆様のご安全を約束いたします」


俺の名乗ったタケルという名に、十二家の何人かが反応を示す。

まあ勇者と同じ珍しい名前だからな。

とは言え、まさか本人だとは思うまい。


「では、今後我々は安心してこの砦までやって来れるという事か?」


十二家の代表の一人であるデブ――ザゲン・モンペがそう俺に尋ねて来る。

今までの流れでそんな風に捉えるとか、こいつは馬鹿なんだろうか?


勿論そんな訳はない。


「それは管轄外ですので。私の言った安全とは、あくまでもこの砦内において皆さんの安全の保障の話になります。なので引き続き、此処までの自衛手段は皆さん方でご用意ください」


なんのために毎週会議を開くと思ってるんだ。

まったく。

お前らを疲弊させるためだってのに、誰が道中の安全なんか保障するかよ。


「「「……」」」


俺の返事に、ザケンを含めた数人が顔を顰める。

どうやら何人かは、本気でそんな馬鹿な妄想をしていた様だ。

代理はともかく、代表である奴らはそんなんで良く商売が順調に続いてるもんだと呆れそうになる。


「では、本日の議会はここまでとなります。次回も来週のこの時間に開催いたしますので、お忘れなきよう」


今日の会議も超時短仕様だ。

5分で終了。

時は金なりというので、彼らにとってもいい事尽くめだろう。


ま、冗談だが。

たった5分の為に前日からやってきて、更に経費として数千万の金を使わされるとかさぞや愉快な気分だろうな。


レイミーが部屋から退場する。

俺は暫くその場にとどまり、様子を窺う。

十二家の奴らの。


「ユーシャー殿。少し宜しいですかな?」


十二家での話がまとまったのだろう。

話し合っていた彼らの代表として、ケリュム・バルバレーが俺に声をかけて来た。


「何か御用でしょうか?」


「落とし所をお伺いしたい」


「これはまた……随分と単刀直入に来られましたね」


予想通り、というか予定通りの交渉の申請だ。

レイミーへの繋ぎではなく直接交渉を持ち掛けて来たのは、コーガス侯爵家の実権を握っているのが俺だと判断しての事だろう。


まあ十六歳の小娘が主導してるとは普通は考えないだろうし、彼らから見れば俺は謎の融資者——もしくはその部下――な訳だからな。

そう判断するのも当然だ。


「こちらは外せない首輪をつけられている状態。回りくどい真似をして、機嫌を損ねでもすれば損しかないですからな」


まあ潔いのは好ましい。

あーだこうだと腹の探り合いなど、時間の無駄でしかないからな。


「ふむ……そもそも、単なる意趣返しとは考えないのですか?」


「御冗談を。爵位の返上を望むならともかく、そうでないのなら何か目的があると考える方が自然。単なる嫌がらせなど、コーガス侯爵家の名を辱めるだけでしょう」


ケリュムの言う通り、ただただ従家に嫌がらせをしていては家門の評判が下がるという物。

今は地の底を()ってはいるが、再興してこれから昇っていく事の足かせにしかならない。


「そしてワシらはコーガス侯爵家から爵位を頂いてはいても、その本質は商人でしかない。ならば、そちらが望むものもおのずと見えて来るという物」


「……ご推察の通り、此方が求めるのは金銭になります」


それもがっつりと。

まあ潰そうとかまでは考えていないが、盛大に足元は見させてもらう。

資金源は太ければ太い程いいからな。


「如何ほどかお伺いしても?」


聞かれたので、俺は笑顔で答えてやる。

落ち着き払ったケリュムが顔を顰める様な金額を。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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