鐘の音
はぁ。なんで俺が国防会議に出なきゃいけないんだ。そのおかげで全然眠れなかった。
自分でいうのもあれだが、確かに俺は冒険者の中でも強い部類に入るし、
他の冒険者たちから一目置かれている。だからって冒険者代表として、
国、世界の存続に重要な会議に一般人を混ぜるなよ。
女神の祝福の力が更に弱まってるって?俺にどうしろっていうんだ。
文句を言ったって昨日の疲れが無くなるわけではないのに...。
それにしても立派な建物だ。ここはギルド本部。冒険者が日々仕事を受ける場所だ。
「おはようございます!レーゼ様。本日はどんな依頼をお探しでしょう?」
「やぁリーファ。今日は簡単な依頼をお願いしたい。昨日の件でまだ疲れがとれていなくてな」
俺はレーゼ。エレルリア王国で冒険者をやっている。今日もいつものようにギルドで依頼を受けに来た。
そしてこいつはリーファ。ギルドの看板娘だ。
16とはいえ、小さい子供のような見た目、小柄な身長、ごく普通の体系。
だからなのかギルドでは多くの人に可愛がられている。
「分かりました!ではゼリアスの群れの討伐なんてどうでしょうか?簡単とはいえそこら辺の薬草集め...
なんてレーゼ様は受けてくれないだろうし...。」
彼女は笑いながら言った。
確かにその通りだ。
ゼリアスとは鹿が魔物となった姿だ。
魔物というと簡単ではないと聞こえるかもしれないが、鹿より少しだけ凶暴なくらいで
魔物の中ではかなり弱い部類に入る。要するにとても簡単な仕事だ。
何故だろうか。彼女は俺が考えていることをよくわかっている気がする。
「お前にはすべてお見通しって訳か。あぁ。それにするよ。」
「了解しました~。では行ってらっしゃいませ。女神の祝福のご加護があります様に。」
この世界の各国には女神の祝福というクリスタルの様なものがある。
この女神の祝福により各国は魔物の襲撃や、侵入を結界の様なもので守っている。
その結界の中で衣食住をし、結界の外では冒険者として魔物を狩りおかねを稼ぐ。
ほとんどの人々はそのようにして生活をしている。
中でもこの国エレルリアは女神の祝福の本体が有り、
世界中の各国は魔術によりこの本体から鎖の様なもので
本体よりも小さいクリスタルの様なものに繋がり、女神の祝福の恩恵を得ている。
それにしても今日はやけに静かだ。確かに静かということは何もないということ。
それはつまり平和そのものだ。しかし20年生きてきてこれほど静かなことがあっただろうか。
「おっレーゼじゃないか。ここら辺に来るなんて珍しいな。何か見てくか?
ちょうど新鮮な食材も入ったところだ。」
「あぁ。たまには見てくよ。今日はどんな食材があ─
...ゴーン!!!...ゴーン!!!....
「おいなんだ今の音!!」
「鐘の音か?」
「いや、この国に鐘なんて有ったか?」
何が起こっている。鐘?いや、あの人の言っていた通りだ...。この国には鐘なんて存在しない。
それにいくら何でも音が大きすぎるし聞こえてくる方向が...。
上だ。空から聞こえてくる。
すぐさま空を見た俺は言葉が出なかった。何なんだあれは一体。
上空には巨大な鐘と教会の様なものが浮かんでいる。
音はあれっきり聞こえなくなっていた。何か嫌な予感がする。
これは魔術なのか?それか厄災か?
.....いや俺はこれを何か知っている。しかしあれは幻想だったはず。
しかし、もしこれがあの魔術なのだとしたら...この世界は...
ご覧いただきありがとうございます!
書いてみたいと思ってはいたもののなかなか踏み出せず、ようやく初投稿作品です。
まだまだ至らない点ありますが頑張っていこうと思います。
宜しくお願い致します。




