表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
8/39

聞きたいことが沢山ある

「すまんなウチのジルが。見てわかる通り問題児だ」

「それはまぁ、わかります」


 ジルを殴った大男が蓮夜に話しかける。

 身長は蓮夜の頭一つ高く、相当鍛えているのだろう。パンパンに張った軍服がそれを物語っている。左目には傷があり、それを隠すように眼帯が付けられている。

 蓮夜が、未だに頭を押さえるジルと大男を交互に見ていると、大男は拳を降ろしてそのいかつい顔には似合わない爽やかな笑みを浮かべて右手を差し出してきた。


「俺はエルバート・ゴートンだ。この組織、リベラティオ・コロナの総督を務めている者だ。色々と聞きたいことがあるだろう、答えられる範囲でなら教えよう」

「紬蓮夜です」


 蓮夜とエルバートは握手を交わし、蓮夜は質問した。


 蓮夜が質問したことは主に四つ。ジルが言っていた二百年後の世界について。蓮夜が名前を明かす前にジルがずっと蓮夜を「君たち」と呼んでいたこと。ジルが使った不思議な力やあの刀について。そして、エルバートが言ったこのリベラティオ・コロナについてだ。


 蓮夜がまず話されたのは魔法についてだった。

 この世界は突如、力によって包み込まれた。それが二百年前以上前のことだと言われている。つまり、蓮夜が生きていた元の時代にも魔力や魔法はあったが、その魔力はほんの一部の人間や動物しか認知することができず、魔力を行使して魔法を使うことのできる人間は少なかった。こうした理由から魔法は世間に公になる事はなかった。魔道具もまた然り。そして、二百年後の今もその現状は変わらないが魔法を使う人間は少し増えてきているという。

 魔法は、魔力を認知することができる人間がその魔力を媒介にして、様々な現象を引き起こすというもの。ジルが蓮夜に使ったのは『身体強化』という読んで字のごとく体の機能を向上させる魔法だ。あの刀はリベラティオ・コロナの技術チームが作った宝石型の魔道具であり、その効果は『武器召喚』。使用者本人に一番合った武器を宝石に秘められた魔力を使って召喚するというもの。そして、召喚した武器も魔道具であり、武器ごとにその効果は異なる。


 次に話されたのはリベラティオ・コロナについてだ。

 この組織は対能力者専門の警察のようなもので、能力及び魔法を使った犯罪を取り締まるとのことだ。能力というものが世間では公になっていないものの、当然強力な力を使って犯罪を犯そうとする人間はいる。そう言った場合、科学的に機能している警察では対処することが出来ないため、リベラティオ・コロナのような組織が動いているらしい。

 リベラティオ・コロナはかなり大規模で、ジルのような戦闘を行うチームが十五部隊。舞花のような医療チームが三部隊。魔道具や武具を作る人間が戦闘チームの各部隊ごとに十人。そして、戦闘や作戦を支えるサポーターが二百人と、軽く四桁を超える人数がリベラティオ・コロナにいる。


なぜ二百年後の世界に蓮夜が存在しているのかについて、それは魔道具の暴発によるものだという。『召喚』の効果を持つ魔道具を素人が無理矢理起動させたせいで、本来召喚されることのなかった二百年前の人間の魂、蓮夜の魂が召喚されてしまったということだ。ただ、魂だけではすぐに成仏してしまう可能性があるため、その場にいたジルが転がっていた死体に蓮夜の魂を憑依させ、今に至る。


「だから、ジルはあの時自分のことを恩人なんて言ったんだな」

「そう、んで蓮夜くんのことを『君たち』って呼んでいたのは、蓮夜くん本人と憑依させた体の元の持ち主に向けての言葉だったんだよ」


 言われて蓮夜は納得する。武装集団から走って逃げていた時にジルの魔法以外にも違和感を感じていた。目線の高さや声、体を動かす感覚が元の体の感覚と大きく違っていたからだ。

 ジルと話していると舞花が鏡を持ってきたので、それを受け取って映る自分を見る。

 鏡に映る自分は黒く艶のある髪に目鼻立ちは整っており、幼さの一切ない大人びた顔はまさに好青年という印象を抱く。


「何だこのイケメン…」

「びっくりだよねー、君を巻き込んでしまった手前、成仏させるわけにはいかにからさー、適当にそこら辺に転がってた死体を探してたんだけど、なんとびっくりひげ面のおっさんたちの中に一人だけ光る奴が居たからそいつに憑依させたんだ」

(つまり、こいつが居なかったら俺は今頃、髭面のおっさんだったのか)


 蓮夜は静かに戦慄する。それと同時にこの体の持ち主に対して最大限の感謝の心を胸にこれからを生きていこうと決意した。


「君の質問に対する答えは以上だが、他に聞きたいことはあるかね?」

「……じゃあ、最後に一つ。俺は元の時代に戻れますか」

「不可能だ」


 蓮夜の質問に対してエルバートは即答した。

 

 




ここまで読んでくださりありがとうございます。

自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。

自分の投稿頻度が絶望的に遅いことに申し訳なさを感じてます。四月から大学生活が始まるということでいろいろと準備におわれていますが頑張っていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ