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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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目覚めたらメロン

「知らない天井だ」(まさかリアルでこの台詞を口にする時が来るとは)


 目を覚ますと白い天井が広がっていた。周りを見てみると白いカーテンに白いベッド。まるで病室のような部屋である。


「ふふ、漫画みたいなことを言うのね」


 カーテンの向こうから女性の声が聞こえてくる。どうやら蓮夜と同じ感想を持つ人物がいたようだ。続いて「目が覚めたのね」と言いながら声の主がカーテンを開く。

 身長は女性にしては高いほうで、つややかな黒髪を腰までまっすぐに伸ばしている。黒のシャツの上から白衣を羽織っており、紺のスキニーパンツがさらに体のラインを強調させている。大人の色気を隠せていない保健室の先生のような女性が現れた。

 そして蓮夜はその女性のある一点を見つめて、言葉がこぼれてしまう。


「メロンだ…」

「メロン?メロンならさっきそこにジル君がお見舞いに置いていったわよ?」

(違うんです名も知らぬお姉さん。実っているではないですかたわわなメロンが二つも…)


 蓮夜はさっと視線を逸らす。これ以上見つめてしまうと色々とヤバいので。色々と。

 蓮夜が黙っていると女性もはっと何かに気づいた様子を見せる。その様子を見て蓮夜は少し焦る。


(もしや気づかれた?普通にセクハラだよなこれ……ここは指摘される前にあやまっ)

「ごめんなさい、まだ自己紹介してなかったわね」

「え?……………あっ、はい」


 セクハラが気づかれているわけではなかった。蓮夜は自分の勘違いを一瞬で忘れ、その場の流れで逃げた。


「私は鳴海舞花。この組織の医療チームの責任者を担っているわ」

「紬蓮夜です。あのここはどこなんですか?それにさっきジルさんの名前を…」

「私が説明してもいいんだけど、もうすぐこの組織のトップが来るからその人から聞いてくれる?その間は私が話し相手になってあげるから」


 見知らぬ美人のお姉さんと二人きりの状況にドギマギしながらも、蓮夜も一人の男だ。この状況を喜ばないわけがない。蓮夜は頭を回転させて何を話そうか考える。


(まさか、これまでのことはこの状況を与えるための神々からの試練!感謝します)

「……あの」

「部屋に戻ったけどやることなかったんで戻ってきました!舞花さん、さっき持ってきたメロン食べちゃおー、あれ?蓮夜くん起きたんだ…」

「ジルてめぇえええええ!」

「メロン食べる?」

「…………食べる」


 いざ話そうとした瞬間、突然ジルが現れる。あまりの空気の読め無さに蓮夜は思わず叫んでしまうが、ジルは我関せずといった様子でずかずかと部屋に入ってくる。

 舞花は慣れているのか全く動揺する様子は見られない。それどころかジルの提案に応えるように「ええ、そうね」と言って、ベッドの横に置いてあるメロンを抱えて医務室の奥に行ってしまう。蓮夜は自分の淡い幸福を木端微塵したジルを真顔で見る。


「話し相手なら僕がなるぜ☆」

「お前はお呼びじゃねぇんだよ、せっかく舞花さんとお近づきになれると思ったのに…」

「僕に対して随分遠慮が無くなったね。何なら毒吐くようにもなったし」

「そりゃ、あんな事されたら誰だってお前に敬語なんて使わなくなるだろ」

「まぁあ?僕もさすがにやりすぎたーとは思ってるよ」


 蓮夜は、自覚してなお平気な顔をして他人を一人戦場に送り込むジルの正気を疑う。視界が一瞬歪む。このめまいが疲れからか、自分の理解のできないバケモノ(ジル)が目の前にいるからかは分からない。ただ、一つ分かることは、蓮夜がジルに対して殺意を覚えたということだ。


「あと一つ言えることは……」


 そう言ってジルは蓮夜に耳打ちする。


「舞花さん、既婚者だよ」


 パリン、と何かが壊れる音が蓮夜の中で響く。蓮夜は信じられないといった表情で頭を抱えて震える。そんな蓮夜の肩に優しく触れる手が一つ。顔を上げると親指を立てて、満面のドヤ顔をするジルがいた。


「………………………」

「どわぁ!?っぶねぇ!」


 蓮夜は無言で拳をジルに向けて突き出すが、ジルはとっさに避ける。空を突いた拳に舌打ちする。


「ほんとに変わったね蓮夜くん。最初の印象は真面目そ-で、静かそーで、ザ・後輩って感じだったのに…」

「ジル、うるさい」

「うん、そろそろ僕も怒るよ?……はい、ジル行っきまーす!」


 そう言ってジルは椅子から立ち上がって、三歩下がってから走り出して、蓮夜のベッドへダイブする。突然のことで反応できなかった蓮夜は、悪戯をする猫のような顔をしたジルに掛け布団でホールドされ、その上からバシバシと叩かれる。


「こんにゃろ、こんにゃろ、こんにゃろ!」


 振り解こうとするが、視界が真っ暗なため思うように動けない。必死に藻掻いていると、突然ゴンッと鈍い音が聞こえて乗られていた感覚が消える。布団を持ち上げると、頭を押さえてうずくまるジルと、


「ジル…お前の奇行はもう慣れたが、怪我人に向かってその行動は流石に無いぞ」

「ぐおぉぉ、す、すいやせん」


 胸の高さで握り拳を作る軍服を着た大男が立っていた。




 



 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

これからも自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。

初めての女性キャラですね。今後、主人公との絡みが少し不透明なキャラを序盤で登場させてしまったと、内心後悔してる部分があるんですよねw

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