荒野を駆ける4
~ジルside~
「流石に煽りすぎたかな」
ジルは蓮夜からの応答が無くなったインカムの電源を切る。
大きく巻き上がった砂ぼこりは遠くからでもよく見え、あれをやった蓮夜のあの一閃を、ジルは双眼鏡で見ていた。
「…拾ってきた体と魂じゃあ限界があると思ったけど、まさかこの土壇場で大きく覚醒するとは思ってなかったな、漫画の主人公かよ」
ジルはニヤリと笑い、隆起した地面に隠れる蓮夜を見て呟く。
双眼鏡のレンズ越しに映る蓮夜の姿は何度も死線を潜り抜けてきた猛者そのもの。刀を手にした瞬間の蓮夜の変化は、一瞬、ジルに強烈な悪寒を感じさせるほどのものだった。
「さて、ここからどうする主人公。どうせあの残党どもをなんとかしないと、僕はこの状況から君を開放する気は無いんだ。そのイカした武器がどんな力を持っているのか僕に見せてみろ!」
そう言ってジルは、横に置いてあるスナイパーライフルを撫でる。すると突然、スナイパーライフルは光り出し、蓮夜の刀を形成したような光の繊維になる。そして、ほどけた繊維は、ジルの右手の人差し指に嵌めてある、首飾りと同じ赤い宝石で作られた指輪に吸収されていく。
ジルは、繊維が全て吸収されたことを確認すると立ち上がり、服についた砂を払いながら後方で待機しているサポーターに声をかける。
「サポーター殿、ヘリ呼んで。多分もうすぐ終わるし、相方はオーバーヒートしてぶっ倒れるから」
「了解した」
そう言って、サポーターの男はポケットから端末を取り出して連絡する。
「多分蓮夜くん、『冷静に考えて、弾切れとか嘘だよな』とか思ってんだろうなぁ」
ジルは弾が入っていた空の箱を見る。
「うん、黙っとこ」
こうして、ジルの『墓までもっていく!蓮夜くんには絶対に教えない事リスト』の最初の一ページが刻まれる事となった。
~武装集団side~
「撃てぇ!撃ち殺せぇ!」
「スナイパーがどこから狙っているか分からねえぞ」
「くそぉ、こんな何もない荒野でどこから撃ってんだよ」
「あのガキも何なんだよ!?こんなに撃ってんのになんで当たらねぇんだよ!」
「ベンさんどうする?俺たち、逃げる手段が無いぞ、仕入れた道具使っちまうか?」
一人の男がリーダーの男に話しかける。
「馬鹿野郎!素人があの道具を使ったところで暴発して、ここにいる奴ら全員吹っ飛ぶのが関の山だ」
ベンと呼ばれた男は、銃を撃ちながら提案してきた男にそれ反対する。
ベンはこの組織の中核を担う存在だが、制御不能になった組織に苛立ちを隠せない。
原因は目の前を走る青年とどこから撃っているのかわからない狙撃手だ。輸送車は爆破され炎上。積んでいた荷物も半分ほどがダメになった。
「お前ら、暴走しすぎだ!ちょっとは後のことを考えろ」
「いいだろリーダー?こうしてりゃあのガキはいつか終わる」
「狙撃手だって、死んだ仲間のおかげで大体位置が分かったしな!」
「チッ」
今は青年と狙撃手を対処するチームと、輸送車から荷物を運び出すチームに分かれて行動している。しかし、これまでの長距離移動によってストレスが溜まった下っ端たちは、その鬱憤を晴らすかのように青年に向かって撃ちまくっている。
「くそっ、細心の注意を払ってやってたのに、どこで情報が漏れたんだよ。今回はとりわけデカい仕事だった。だから、情報操作も完璧だったはずだった」
今日何度目か分からない舌打ちをする。何かこの状況を脱する手はないのか考える。
「やっぱり、使うしかないか…」
ベンには一つだけこの状況を脱する可能性がある手段に心当たりがあった。それは、先ほど反対した提案、仕入れた《魔道具》を使うことだ。しかし、この組織の中で魔道具を使った事があるのはベンだけで、しかも、ベンも使いこなすことはほぼできない。
この時代には魔法がある。原因は不明だがある日突然、この世界は魔力に満ち、その魔力はほんの一部の人間、動物が認知し、使役している。だから、魔法というのは世間では公になっていない。
しかし、特別な力を悪用しようとする人間は当然いる。そういった人間によって、魔力を認知できない人間でも使える魔道具が生み出された。
魔道具は強力だが危険。魔道具によっては、巨大な火柱を上げたり、人が消す済みになるほどの爆発が起こる可能性がある。その恐ろしさを知っているからこそ、ベンは魔道具に手を伸ばせないでいるのである。
「背に腹は代えられないか」
しかし、このままいくと組織は全滅だ。覚悟を決める。
魔道具を使うために戦闘員たちに背を向け、もう一つのチームのところへ行こうとしたその時、一人の戦闘員が叫ぶ。
「当たったぁ!!」
声がしたほうのその先を見ると走り続けていた青年が倒れているのが見えた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。
最近、うちで飼っている猫が私の部屋に忍び込んできて、寝ている私の顔面に乗ってきます。
ふと思い出したので書きました。はい




