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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
33/39

初任務15 箱

 ~sideセルバ~

 ゆっくりと床が近づいてくる。

 セルバはその一瞬で何が起こったのか瞬時に理解する。忘れるはずがないその攻撃を、無慈悲に人の命を刈り取るその攻撃をセルバは身をもって味わっていた。


(ああ、あぁ、うれしいなあぁ………そうか、最後の最後で私は、また会うことが出来たのですね)


 目だけを動かして、望み、焦がれ、思い描いた天使へと視線を移す。スーツ姿で一見人間にも見えるその天使は明らかに人間のそれではない特徴を持っていた。その天使(正体不明)の首から上は会場に現れ、蓮夜を襲った箱そっくりの物体がフヨフヨと留まっていた。


(姿かたち違えど、このセルバ、あなたを間違えるはずがございません)


 ぐぐぐと、さらに世界は遅くなる。それに伴いセルバの頭はより冷静になっていく。


(できることならあなたと戦いたかった)


 そして、


(では、セルバという人生の幕を、降ろすとしましょう)


 セルバの首が床に転がった。


 ~side蓮夜~

「「………………………は?」」


 蓮夜と凛は揃って思考が停止する。無理もない。先程まで命のやり取りをしていた人物の首が急に落ちて絶命しているのだから。


「■■■■■■」

「!?」


 蓮夜は突然聞こえた謎の声に反応し、凛を抱えて距離を取った。そこでようやく箱の能力者の姿を見ることになる。

 それは異形の頭を持つ形は人間のバケモノだった。すらりと伸びた肢体に黒のぴっちりとしたスーツを身に纏い、首から上は謎物質の箱がフヨフヨと浮かんでいる。奴から放たれる異質な気配に蓮夜たちは集中しないと呼吸が乱れてしまいそうになる。


「何だあいつ、すげー怖ぇ」


 凛は箱のバケモノに戦々恐々していた。蓮夜も言葉には出さないが、最初に偶然避けれた攻撃を思い出して緊張が走っていた。


「凛、あいつが箱の能力者だ。正直勝てるかどうか………」

「勝てる勝てないじゃないだろあれ、やらなきゃ殺される」


 蓮夜に支えられていた凛は自分の足で立って、蓮夜と並んで箱のバケモノに向き合った。


「■■■」

「気持ち悪い声だな」

「まったくだ」


 蓮夜と凛は各々の魔道具を構え、箱との戦闘に意識を切り替える。箱も自身の体の周りを二つの黒い箱が出現する。

 蓮夜は鞘に白輝夜を収め、腰を低くし床を蹴って走り出す。


「飛雨双撃」


 鞘に魔力を圧縮し、抜刀し十時に白輝夜を薙ぐ。雨染の複製した斬撃よりもより濃密な二つの斬撃が箱のバケモノに飛んでいく。

 箱のバケモノは飛んでくる二つの斬撃に対して避ける様子を全く見せない。しかし、バケモノの周りを飛んでいた箱が前に飛び出し、バケモノの全身を隠す壁に変わる。その壁によって斬撃は阻まれる。


「分かりやすいんだよ!!」


 蓮夜は走るスピードを落とさず、白輝夜の切っ先を箱に向ける。そして、自分の間合いに入った時、さらに強く踏み込み渾身の刺突を放つ。切っ先を突き立てられた壁は何個もの小さな箱に形状を変え、バラバラになった。ガラス窓を突き破るように壁を破壊した蓮夜の前にはいまだ動かない箱のバケモノが立っていた。


「雨染!」

 斬撃を複製して箱のバケモノに襲い掛かる。


「………■■」

「!」


 瞬間、箱が笑ったような気がした。そして、そんな箱に呼応するように分裂した小さい箱たちがそれぞれ蓮夜に襲い掛かろうとしたり、飼い主を守ろうと動き始める。

 蓮夜は背後にも目の前にも強烈な気配を感じ冷汗を流す。


「そのまま仕掛けろ!」


 凛が叫んだ瞬間、蓮夜と箱のバケモノを取り囲んでいた箱たちが一瞬で凍り付いた。蓮夜を邪魔する物は無くなり、ガラ空きとなった箱のバケモノに全力の雨染を叩き込む。


「がっ!、固えぇ」


 が、箱のあまりの硬さに白輝夜の刃諸共弾かれてしまった。


「『■■』」


 そこで初めて箱のバケモノが動く。箱のバケモノが人体の右手に当たる部分をゆっくりと持ち上げた。すると、箱の掌の上にこれまでの黒い禍々しい箱ではなく、純白の無機質な箱が出現した。だが蓮夜は思った。


(あ、死)


 瞬時に感じ取った死のイメージ。白い箱から解き放たれる”何か”によって蓮夜の命は刈り取られるそのイメージ。

 

「うっ!」


 恐怖で動かなくなった蓮夜が横からの強い衝撃で弾き飛ばされた。凛が発動させた魔法によって出現した氷柱で蓮夜は無理矢理、白い箱の効果範囲外に避難させられたのだ。

 蓮夜が直地したのを確認し、追撃にグレイ・ローズを二丁の六花で発砲する。

 グレイ・ローズが着弾した後、箱は一瞬で凍り付き二本の薔薇が咲く。

 

「蓮夜、大丈夫か!?」

「ああ。凛、助かった!」

「しっかりしろ!戦闘中に思考停止奴があるか、バケモノは今凍らせて………ん?」


 凛が蓮夜に喝を入れながら箱に視線を戻すと、残された薔薇が抜け殻のようになっており、氷漬けにしたはずの箱がいなくなっていた。

 異様な気配を空中に感じ見上げると、何もない空間にまるで床があるように箱は立っていた。


「………………………」


箱は、身構える二人を何をするでもなく見下ろす。しばらくして何かを考え付いたかのように箱は、もう一つ箱を出現させ、手のひらを上に向ける。バケモノは箱を飛ばして物理的に攻撃するだけだったのが今度は出現させた箱を開き、中に収納してあったある”物”を取り出す。

 それは一冊の本だった。その本を見た瞬間、凛は目を見開く。


「具現化の魔導書!」


 箱は魔導書を開く。


「蓮夜!今すぐ奴を仕留めるぞ!!」

「了解!」


 パラパラとページをめくっていく。

 凛の焦った表情に蓮夜も事態を察して、すぐさま白輝夜の力を百パーセント引き出す。


「いいか、仕留められなくても魔導書だけは破壊しろ!」


 箱はめくる手を止め、今開いているページを指に当たるパーツでなぞる。

 攻撃を仕掛ける蓮夜と凛だったが、出現した複数の箱によって防がれてしまう。


「ガハッ!!」

「蓮夜!?」


 別の箱が横から飛んできて攻撃に集中していた蓮夜のわき腹にクリーンヒットする。ピンポン玉のように飛ばされた蓮夜は壁を突き破り、勢いが止まったところでそのまま気絶してしまう。凛は距離を取って攻撃していたため蓮夜ほどの攻撃は受けなかったが、こちらも避けきることが出来ず手と足の骨を片方ずつ砕かれた。

 絶望的な状況。しかし、神は二人にさらなる試練を下す。


「あぁぁ………」


 箱の手から零れ落ちた魔導書がゆっくりと落ちていく。それを凛は成す術もなく眺めることしかできない。

 無情にも床に落ちた魔導書からそれは現れる。


「■■■■」


 箱のバケモノはそんな魔導書を見届けることもなく、姿を消した。

 残された凛はドクンドクンと拍動のような蠢きを見せるどす黒い物体が現れるのを見ていた。その物体はゆっくりと人型に姿を変えていく。そんなバケモノからは箱とはまた違った異質な気配を感じられる。


「はは、まさか………初の正規任務で、こんなことになるなんて」


 凛の心は折れかけていた。


「セルバを捕らえれば完了の任務。何もかも、めちゃくちゃだ」


 ゆらりと立ち上がった”そいつ”は、倒れている凛を見てにったりと笑ったような気がした。こいつには勝てない。直感で凛はそう思った。

 完全に心が折れ、痛みと疲労で意識を手放しそうになった瞬間、


「あいつは存在しちゃいけないけど、あなたはもっといちゃダメ…」


 幼さの残る少女の声と、鈴の音が聞こえた。


 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

評価【☆☆☆☆☆】、いいねよろしくお願いします。

箱って能力、ぶっちゃけどうなんですかね?WW

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