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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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初任務14 静かな最後

 砕いた氷がパラパラと舞い落ち、その中心にセルバが立っていた。そんなセルバを見て凛は、背中を伝う不快感に粟立ち、すぐさま距離を取った。


(何かが違う…)


 凛がそう思った瞬間には、すでにセルバの姿は凛の視界から消え、次に視認できた時には拳を振りかざすセルバの姿だった。


「クッ!」


 咄嗟に体をずらし攻撃を避け、六花を発砲する。セルバはそれを容易く避け、重さを感じさせない体運びで飛び上がり凛から距離を取ってふわりと着地をした。


「本当は天使を具現化し、戦う時の奥の手として温存しようと考えていたのですが、私は井の中の蛙でしたね、世界は広い。私はあなたほどの強者に初めて会いました」

「………私はそんな強くなんかねぇよ」

「ご謙遜を。私に『支配の魔石』を使わせたのですから」

「支配の魔石?…あぁ、ああなるほどな。それを自分で取り込んで体の限界を超えたってところか」

「ご名答!頭も切れるとは、ますますあなたの株が上がってしまいます」


 セルバは目元を不気味に歪めケタケタと笑う。しかし、セルバの額からは大量の汗が噴き出し、目は異常に充血し、太い血管が青く浮き出ていた。脳のリミッターを外したのだ。その力の代償は計り知れないものだろう。


「お前からの株なんか上がったところで嬉しくないね」

「軽い冗談ですので、お気になさらず」


 セルバは体勢を低くし、強く踏み込んで凛に攻撃を仕掛けてくる。その踏み込みは床にひびが入るほどで、それほど強力な踏み込みはセルバの体に一気に速度を与える。一瞬で凛との距離を詰めたセルバは固めた拳を放つ。

 当たったら死ぬ。そんなプレッシャーを孕んだ拳を目前に凛は一歩も退かず六花を突き出す。


開花せし六花の番人(ブローディアイアス)


 引き金を引くとセルバと凛の間に水色のエネルギー弾が発生し、一瞬で蕾となり、六枚の花弁を持つ花を開花させた。開いた花弁は中心にスッと筋が伸び、先端に行くにつれて青紫色に染まっている。  「守護」の花言葉を持つブローディアが凛を守るように開花した。


「っぐ!?、固いですね」


 セルバのブッ殺パンチと開花せし六花の番人(ブローディアイアス)がぶつかり、結果凛に攻撃は届くことは無く、セルバはあまりの硬さに苦悶の表情を浮かべて飛び退く。


「ならば!…………」


 そう呟いてセルバはまた体勢を低くして先程よりも強く踏み込む。


「なっ!?」

「あなたの視界に捕まらなければいいのです」


 先程とやっていることはほぼ一緒。強く踏み込み、高速で接近する。しかし、動きの質は全くの別物になっていた。セルバが踏み込んだ瞬間、凛の視界からセルバは消えた。

 そして、最後までセルバを捉えきれなかった凛の腹部にセルバの拳がめり込んだ。


「ガハッ!」

「吹っ飛びなさい」


 凛の軽い体は成す術なくセルバの増強された膂力によって吹き飛ばされる。壁を突き破って廊下を転がり、そして止まる。セルバが視界から消えた時、攻撃をもらう覚悟で咄嗟にほとんどの魔力を身体強化に注ぎ込んだ。痛む腹を押さえて何とか首を持ち上げて、魔力を大量に流し込んだ六花の引き金を引く。


「グレイ…ローズ」


 射出された魔法は今までで一番濃密で、そして冷徹だった。矛先を向けられたセルバの脳裏をよぎったのは、薔薇の造形の中で凍り付く「死」のイメージだった。


「死を乗り越えるからこそ!、人は!!…強く、成長するのです!」


 セルバの表情はまさに狂気そのもの。見えてしまった自身の死のイメージでさえ、甘美な毒として脳へ、体へ浸み込ませていく。迫る魔法を前にセルバは回避という選択肢を捨て、足を踏みしめ腰を入れ、迫る魔法へ固めた拳を突き出す。


「ぐ、ぐおおおああああぁぁ!………ハァ!!」


 ぶつかり合ったグレイ・ローズとセルバの拳は拮抗していた。その間にもセルバの体には茨が巻き付き始め、セルバの体を確実に凍らせていった。が、しかしセルバの拳は止まることは無く、やがて限界が先に来たグレイ・ローズの種は儚く砕け散った。


「はぁ、はぁ、人生で一番長い数秒間でした」

「………人間じゃない」

「は、ははは!やはりあなたは素晴らしい!、私は限界を、死を超えた。あなたのおかげで超えられました久桜凛!」


 もはやセルバは凛を見ていなかった。しかし彼の意識がまだ自分へ向いているという事実が凛を恐怖させる。


「さあまだ終わっていません。まだ殺り合いましょう」

「…………っ」


 セルバはゆっくりと歩を進めてくる。凛はまだ腹部のダメージによって動けないでいる。


(あぁ、死ぬな、私。弱音とかじゃなくて、どうやったって覆らない事実。以外にもそのことへの恐怖は無い。あいつはめっちゃ怖いけど)


 ここにきて凛はひどく冷静になる。


(もっと念入りに準備したかったな。てか任務初日だぞマジで。………事件起こしやがった箱野郎のせいだ。)


 未だに正体不明のままである箱の能力者への恨みつらみが湧き出てくる。と同時にある人物の顔が浮かぶ。


(蓮夜。あいつは大丈夫かな?いきなり二手に分かれて、蓮夜の方へめんどくさい相手を行かせてしまって。………でもうれしかったな。「凛、気を付けて!」って人から心配されたこと、今までなかったしなぁ)


 あって間もない相棒の顔を思い浮かべて、少しだけ口角を上げる。


「あぁ、助けてくれ………蓮夜」


 無意識にこぼれた言葉にはっとする。なぜそう思ったかも自分では理解が出来なかった。しかし、次に凛の言葉に応えるよう現れた人物を見て凛の心に火が灯る。


「任せろ!」


 ~side蓮夜~

「………ん」


 蓮夜は襲い掛かってきた男たちと交戦していた場所で目を覚ました。


「起きた?随分早かったね…」

「!」


 勢いよく振り向くと雪のように白い髪と肌の着物の少女がしゃがんで蓮夜を眺めていた。少女からはまるで気配がなく本当にそこにいるのか疑いたくなるような儚さを感じさせる。


「君は?」

「今はそんなことはどうでもいい」

「いや………まぁいいか。じゃあ君があの世界で助けてくれたのか?」


 蓮夜の問いかけに少女はこくりと頷く。


「そうか、君が……ありがとう!」

「え?」


 蓮夜は純粋な感謝の気持ちを示すため、少女に向かって頭を下げた。少女は意外にも驚いた表情を浮かべる。


「君がいなかったら俺は死んでた。俺が死んだら困る奴が居るんだ。そいつのためにも俺は死ねないんだ」

「そう……あなたのお礼は受け取っておく。でも、早く行った方がいいよ。彼女ちょっと危ないかも」

「ほんとか!?ごめん、すぐに行かなきゃ。教えてくれてありがとう!」


 蓮夜は立ち上がってパーティー会場の方向へ顔を向ける。なぜこんなにも蓮夜は少女の事への関心が薄いのか、それは本人にも分からない。ただ蓮夜はこの少女とまた再開する気がしてならなかった。それを今、問い詰めるよりも凛の事が気になって仕方がなかった。


「また会おうね」

「おう!」


 そう言って蓮夜は少女に背を向け走り出した。


 そして今に至る。


 蓮夜とセルバは対峙する。蓮夜の知っているセルバとは大きくかけ離れた姿に若干の怖気を感じるが、後ろにいる凛を守るために気を引き締める。


「今度はあなたですか………」

「そうみたいだな」

「あなたが凛さんほど私を死に近づけてくれるとは思えませんが?」

「え、死?何それ怖………何やってたの凛さん?」

「そいつ、ダメージ与えても与えても段階的に強くなって収集つかなくなりそうだから殺そうとした」

「なるほど、奴は変態という事だな」

「間違ってない」


 緊張感のない会話からは想像もできないほど両者の間に流れる空気は張り詰めていた。間違いなく死闘になると共に理解する。どちらかが勝っても勝った方も重傷は免れないほどに。


「行きますよ!」

「上等だ!」


 引き絞った弓を放つかのように両者はほぼ同時に踏み込んだ。これからどんな壮絶な戦いが待ち受けているのか。それは火花を散らそうと今激突する両者にも分からない。

 蓮夜は刀を、セルバは拳を固く握りしめ強く踏み込んだ。

































 




























 瞬間、セルバの首が落ちた。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

良ければ評価【☆☆☆☆☆】、いいねよろしくお願いします。

夏休みに書き溜めたものがもう直ぐ無くなりそうです。もっと頑張らねば!

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