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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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初任務11

 凛が床を蹴って、セルバに接近する。その際、両手に構える六花で連続で発泡する。先程とは比べ物にならないほどの弾幕の量にセルバも驚いた様子を見せる。


「何だ超戦いやすいじゃん」

「!グッ…」


 凛は弾幕を捌くことの方に僅かに注意を割いているセルバの懐に飛び込み、氷でコーティングした足で前蹴りを突き刺す。そして、後方に勢いよく飛ばされたセルバに向けて容赦なく発砲する。


「能力を解除した途端にここまで変わりますか。…さては力を温存していましたね?」

「それもあるが、力を出せなかったのは本当だぞ?私は、同僚のパートナー(蓮夜)アタオカ狙撃手(ジル)みたいに感覚で何でもできるような奴じゃないから、イメージや魔力の質をしっかり頭で理解しないと魔法が使えないんだよ」

「だから私の『酒添』によって正常に動かない脳では力を使えなかったと……」

「そういう事」


 セルバは少しだけ考え込む素振りを見せてから、突然凛へ背を向ける。


「ん?」


 セルバの予想外の行動に、凛は困惑の色をその顔に浮かべている。


「戦いづらいので、一旦逃げますね、では」

「…………は?」


 セルバはそれだけ言って、未だに思考が追い付いていない凛を残して走り去ってしまった。


「あ!に、逃げんじゃねぇ!」


 突然始まった鬼ごっこ。楽しそうに逃げるセルバと、そんな彼にムカつき奥歯を噛み締めながら追う凛が豪華客船の中を走り回った。


 ~sideセルバ~

 セルバは豪華客船の中を疾走しながら考えていた。


(私はもう『酒添』に割けるほどの魔力は持ち合わせてはいない。強いのですが使い勝手が悪すぎるのですよねこの能力は。……身体強化がない場合、私はどう足掻いても彼女に拘束されて終わってしまう。そんなことになれば私の目的も果たせなくなってしまう。それだけは避けなくてはならない)


 セルバの持つ『酒添』はその強力な力ゆえに、その維持には膨大な魔力を消費し続けなければならない。戦い続けるためには能力に割く魔力はもう無く、このまま能力を使い続ければ魔力が枯渇し体が動かなくなってしまうのである。


(彼女があそこまで強いとは正直驚きでしたね。さらに狭い廊下であの密度の弾幕を捌くのは骨が折れる……………では、あそこに行きましょうか)


 凛との最終決戦の場を決め、セルバはさらに加速する。


 ~side蓮夜~

「雨染!!」

「「ギャアァ!」」 「「ゴガァ!」」 「「ギギィ」」


 複製された斬撃が地球にはいない生物を切り刻んでいく。空を飛ぶ巨大な体躯を持つ飛竜、鎧のような複雑な体毛を持つ猿、蓮夜の体の大きさをゆうに超える様々な虫の特徴を持ったキメラ昆虫。


「はあ、はぁ、はあ!、くそ、数が多すぎる」


 蓮夜はあの時、箱の能力者と接触したはずだった。しかし、確かにいた箱の能力者へと振り返ろうとした瞬間、謎の浮遊感とともに気が付いたら謎の空間に蓮夜はいた。

 蓮夜の目の前には、自然があった。森があり、川があり、そして悠然とそびえ立つ山がある。しかし、そんな自然を前に蓮夜は思った。

 これは偽物だ、と。この目の前の自然からはすべて箱の能力者の魔力が感じられるからだ。木も水も、空でさえそれはパーツの足りないロボットのような歪な違和感を蓮夜に与えた。

 そして違和感は、すぐに現れた。


「どっから湧いてくんだよコイツら!」


 倒しても倒してもどこからともなく現れるモンスターと蓮夜はかれこれ一時間以上戦い続けていた。

 目の前の四本の腕の生えた熊の腕を斬り飛ばす。熊は痛みに歯を食いしばりながら残った腕で薙ぎ払いを放ってくる。蓮夜はギリギリ当たらない位置まで下がり、踏み込みながら下がった頭部に向けて刀を振り下ろす。熊の頭が宙を舞い、すぐさまその死体にほかのモンスターたちが群がり始めた。


「そもそも何だこの世界」


 炎をまとった馬型のモンスターが襲い掛かってきた。燃え盛るたてがみを振ると熱波が発生し、蓮夜の皮膚を軽く焼く。


「アッツいな、くそ!」


 何とか耐えてモンスターへ走り出す。そんな蓮夜を見てモンスターも樋爪で地面を削って走り出す。全身を炎で覆うモンスターのその熱気は距離が空いている蓮夜のところまで届く。

 蓮夜は魔力を全身に巡らせる。


「嵐点!」


 ギリギリまでひきつけモンスターを一気に切り刻む。馬のモンスターが絶命し纏う炎が徐々に弱まっていく。完全に消える前に燃え盛っていた頭部を、遠くに集まる虫型のモンスターたちに蹴飛ばす。


「ダメだ、数が多すぎる。早く帰る手立てを見つけたいのに」


 新たに向かってきたモンスターを切り捨てながら、いまだに交戦しているであろう凛を思う。凛は蓮夜の先輩ではあるし、強力な能力を持っている。蓮夜の心配は自分がいない間に凛が箱の能力者とも接触してしまったらという事である。箱に感じたゼンと同様の強者の気配、一人の能力でこんな世界に飛ばすことが出来ること。

 蓮夜の頭によぎる任務失敗の文字。それも、二人とも死亡という最悪な形での失敗。蓮夜は徐々に焦り始める。


「もっと、俺があの場で、気を抜かなければ………」


 今更悔やんでももう遅い。焦り、不安、恐怖、後悔。様々な負の感情が蓮夜の中で渦巻き始める。

 軽い絶望を味わっていると、その絶望をさらに増幅させるように地面が多く揺れ始める。はっとして顔を上げると、そこには一つ目の巨人がそこにいた。生えていた大木を引っこ抜いて笑っている。さらに神話に出てくるようなの大きい龍。風の刃をまとう狼。さらには歪なキメラ生物の大群。これまで戦ってきたモンスターたちとは一線を画す強さを秘める怪物が蓮夜を囲っていた。


「はぁ、はぁ、くっっそがあああああああぁぁぁぁ!!」


 蓮夜は叫び、刀を握り締め、ただがむしゃらに走り出す。しかし悲しきかな。これまで刀によって絶大な能力を得ていた蓮夜の体は限界が来た。体が急に重くなり、すでに眼前に迫っていた巨人の攻撃を避けられず、まともに食らってしまった。


(ごめん、凛ごめん)


 宙を舞う体。薄れゆく意識の中で、蓮夜の耳にはこの場に似つかわしくない美しい鈴の音が聞こえた。


 チリンッ。

 


ここまで読んでくださりありがとうございます。

評価【☆☆☆☆☆】、いいねよろしくお願いします。


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