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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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初任務9 接敵

 蓮夜side

「おい、お前ら!急に襲い掛かってきて何のつもりだ!」


 蓮夜は声を上げながら、男の硬質化した拳を刀で捌いていた。


「「…………」」

「くそ、何とか言えよ……」


 蓮夜が箱の魔力を追っていた時だった。二人の男が死に物狂いといった様子で蓮夜の方へ走ってきて攻撃を仕掛けてきたのだ。男たちの目的も分からないため、先程から何度も話しかけているのだが黙ったままで反応がない。


「気持ち悪いな、ホントに」


 目は虚ろ、表情一つ変わらない。しかし、体力の限界を感じさせない無理矢理な動きに、顔からは汗が吹き出している。


 蓮夜が男たちと接敵してからだいぶ時間が過ぎた。その間に蓮夜は男たちの能力がある程度予想出来るまで観察していた。

 まず大柄の男は自身の体を硬質化させるというものだ。蓮夜の刀のぶつかり合った瞬間、とても人体からは鳴らないような甲高い音が鳴り響いている。接敵した最初に切断できると確信した一閃が弾かれ、動揺して体な硬直したところに、腹部に一撃もらってしまったがまるで鉄塊にぶつかったような衝撃を受けた。

 そして、細身の眼鏡の男は蓮夜と硬質化男からは少し離れた位置で能力を行使していた。能力は物体の動く速度を変化させるというものだ。これを硬質化男に使われているおかげで、硬質化男の拳が急に速くなったり、遅くなったりして手を焼かされている。先に細身の男の方を片付けたいと考えているのだが、硬質化男がそれを守るように立ち回っているため、攻めあぐねている。

 そして今に至るのだ。


雨染(あまそめ)


 斬撃を複製して雨染を繰り出すが、全身を硬質化させて弾かれてしまう。

 舌打ちをして一旦距離を取ろうとする。しかし硬質化男はさらに地を蹴り蓮夜に接近してくる。蓮夜が手こずっている理由はこれだ。無尽蔵の体力を持っているのか、無理矢理体を動かしているのか分からないが、男は一秒たりとも休むことなく体を動かし続けていた。


(いや流石におかしいだろ、攻撃の間の隙を攻撃で埋めているような動き。正気じゃない、………ん?)


 刀と拳がぶつかり合った瞬間、火花と別に男の破れた服の隙間からキラリと光るものが見えた。


「ッおらぁ!!」


一瞬だけ百パーセントの力を引き出し、男の拳を弾き飛ばす。硬質化男が後方へぐらついたのを確認してガラ空きとなった体に持てる全ての力を足に集中させて、硬質化男を蹴り飛ばした。ゼンが蓮夜を吹っ飛ばした時のようなイメージで。


「ちょっと、止まって、ろ!…はぁー、ふぅー」


 蓮夜の蹴りによって吹き飛ばされた男は客船の壁を何枚か破った後、ようやく停止しその場で崩れ落ちた。

 それを確認すると、わずかに乱れた呼吸を整えながら、箱の能力者の魔力を見つけた時同様に、目を集中する。


「やっぱりな」


 見ると、細身の男の胸には不気味な気持ち悪さを感じさせる魔力が集中しており、そこを中心にして体中にその魔力が蜘蛛の巣のように絡みついていた。


(大方、あの胸の中心にある物体で体が操られているんだろうな)


 ドガンッ!!

 男たちの不自然な戦い方への考察と、細身の男の観察をしていると、吹っ飛ばした硬質化男がさらに壁を破りながら戻ってきた。荒々しく息をしている男の胸の中心を見てもやはり同様の魔力が集中していた。攻撃の気配。蓮夜は武器を構える。


(カラクリは分かった。あとは胸の物体を破壊するだけだ)


 そして、次の男の行動で男たちが操られていることが確信へと変わる。硬質化男が構えて動き出そうとした瞬間、足に巻き付いていた魔力の線が膨張し硬質化男は地を蹴った。さらに腰から男の体幹、そして右腕と流れるように魔力の線が膨張し、右腕が硬質化した。


「ハッ、やっぱ操られてんな!」


 目の集中を解いて、眼前に迫る硬質化した拳に集中する。それを蓮夜はいなして隙をを探す。硬質化男の額には大量の汗が吹き出し、白目をむき、全身から太くて青い血管を浮かび上がらせて無理矢理攻撃を仕掛けてくる。明らかに自分の意志ではない。


「おい!このままだとお前、死ぬぞ」

「あぁ、ああ、がああああああああ!」


 蓮夜は最後に男に語り掛けるが、人間の物とは思えないほどの方向を上げて連打を加速させていく。細身の男の能力も相まって、その攻撃の密度は一時的だが武装集団の一斉放射並みとなる。


「が、があ」

「!」


 と、ここで男の動きがピタリと止まる。見ると男の鼻から血が垂れている。限界が来たのだ。

 能力者はその能力に耐えられるようにあらかじめ常人よりも肉体は強固になっている。しかし、その肉体でも耐えられないほどの肉体の酷使と他者からの能力の付与により、硬質化男は耐えられず崩壊した。


「そこっ!」


 蓮夜は男に生まれた隙を逃すことなく、切っ先だけで触れる間合いで刀を振るう。カチリと固い感傷が手に伝わってくる。

 蓮夜と男の間に静寂が流れ、やがて男は糸が切れたかにように倒れこむ。目に集中しても不気味な魔力は無くなっていた。


「じゃあもう一人だな」


 いったん深呼吸をして、ナイフを抜いてこちらに襲い掛かってくる細身の男に視線を向ける。操られているのもあるがもともと戦闘は行ってこなかったのだろう、身のこなしがまるで素人のそれである。蓮夜も戦闘に関してはまだ甘いところがあるが、素人目から見ても男の動きには無駄が多かった。


「ふううぅぅー」


 上がる息を大きく吐いて無理矢理落ち着ける。刀を構えて細身の男が間合いに入るまで待つ。

 男の能力は速度を変える能力。当然自分が戦うことになっても行使することは変わらない。その例に漏れず、男は蓮夜の間合いに入る直前で急に速度を変えて切りかかってくる。


「予想通、り!」


 しかし、タイミングを計っていた蓮夜に呆気なく胸にある物体を斬られて、細身の男も崩れ落ちる。

 男たちが動かなくなったことを確認し、刀を仕舞う。


「くそ、とんだ邪魔が入ったな。何か箱の能力者と関係があるのかこいつら?」


 蓮夜はつぶやいて倒れている男たちを見る。先程までの人形のような生気を感じない表情から、今は眉間にしわを寄せて気絶している。


「関係があるなら、放っておけないけど……いや、いまは目の前の証拠があるし、それに集中するか」


 蓮夜は再び魔力を見ようとするとある違和感を覚える。


「?魔力の線が見えない……」


 蓮夜の視界には、今まで見えていた箱の能力者の魔力の線が見えなくなっていたのだ。いや、魔力自体は感じるのだが、霧に紛れたようにその存在感がかなり薄くなっている。

 ぱたぱたと足を動かして、その場を歩いて周りを観察してみる。明らかな異常事態に緊張の色が見える蓮夜は、落ち着いてくるとともに段々とこの違和感について、あることを意識し始める。


「はぁ、は、はあ、はっは」


 無意識に呼吸が荒くなる。

 違和感の正体。それは魔力の線が見えなくなったのではなく、完全に風景と同化しているのだ。つまり今、蓮夜の視界に映っているのはすべて箱の能力者の魔力であるという事である。

 振り返れば奴が居る。なぜか蓮夜の胸にはそんな確信があった。


「…………ヒュッ」


 一瞬、呼吸が出来なくなるが体は生存のために動いていた。蓮夜が飛んで数拍遅れて、大きな固い物体が叩きつけられる音が響いた。




 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

評価【☆☆☆☆☆】、いいね、よろしくお願いします。

もっと面白い話をかけるように頑張ります。

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