初任務7
声のした方向へ視線を向けると扉の前にセルバが立っていた。
「あ、セルバさん、いったい外で何が」
眼鏡の男は、入ってきた執事の男と面識があるようで、セルバに警報器の原因について問うた。しかし、セルバは男の問いかけには反応せずベンたちがいる部屋の奥の方へ入ってくる。
ベンはこの時、何とも言えない不愉快さを感じる。
「お前さん、人の部屋に勝手に入ってくるのはどうかと思うぞ」
「おい、この人は俺たちの依頼主だ。口の利き方には気をつけろよ!」
がたいの大きな男の方はベンの言葉が気に入らなかったのかベンを睨みながら言った。しかしベンは男の言葉に怯むことなく、挑発的な笑みを浮かべて見せた。
「へえー、じゃあ尚更だ。何のための仲介人なのか、これじゃあ分からないな」
「……えぇ、まあ、状況が大きく変わりまして、この者たちは今の状況ではまた別に使わせていただくことになりました」
「は?セルバさん、何を言って…っぐ!」
「がはっ」
瞬間、セルバは男たちが反応できない速さで接近し、二人の胸部に手を突き刺した。そして次に手が引き抜かれた胸部からは血が噴き出し、床に倒れ伏した。
「!?」
「突然の能力者の乱入、そして色々と嗅ぎ回っている若い男女……その二人はあなたを探しているようでしたが、どうなのですか運び屋さん?」
「何のことだ?」
「とぼけないでください。彼らはあなたを見つけられなかったようですが、私は少々あなたを観察させていたただ来ました」
ベンの心臓が小さく跳ねる。セルバは床に倒れ伏す二人を見る。
「この二人は仕事はできますから、私の指示にすぐに従ってくれましたよ。そして取引を急かされたあなたは僅かではありますが動揺を見せていた」
「いきなり想定外なことを言われたら誰だってそうなる気がするが?」
「それはそうなのですよね」
と、セルバはあっさりとベンの言葉を肯定する。するとセルバは張り付けた笑みから、何の感情も読み取れない無表情に変わった。
「しかし不思議ですね」
一歩また一歩とベンに近づいてくる。ベンは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。
「あなたが纏うその匂い、あのお嬢さんからもしたたばこのにおいなんですよねぇ、あ、ちなみに私鼻が利くので煙草やお酒の嗅ぎ分けはできるので間違いはないですね」
ベンに緊張が走る。横目にセルバに刺された二人を見て冷汗が流れる。手を後ろに組み、背筋を伸ばしたセルバはじっとベンを見た後、三歩下がってまたあの薄気味悪い笑みを浮かべる。
「殺しはしませんよ、大事な取引相手ですからね………ただ、蓮夜さんとお嬢さんには死んでいただきます」
そう言ってセルバは指を鳴らす。
次の瞬間、ベンの目の前でありえないことが起こる。死んだかに思われた二人が立ち上がったのだ。見ると刺された胸部からの出血は治まり、床にたまっていた血の水たまりも消えていた。しかし顔を見ると生気がなく目の焦点も合っていない。
「……彼らには蓮夜さんを殺すのを手伝っていただきます。私は今、彼らの胸を刺すと同時にこれを埋め込みました」
セルバは手に持つそれをベンに見えるように向ける。セルバの手にあるそれは、黒く光沢を放つ宝石だった。
「これは支配の魔石という魔道具だそうです。これを体内に埋め込まれた者は埋め込んだ者の支配に下り、操り人形になる、とこれをくれた運び屋の方から教えていたただ来ました」
「倫理的に大丈夫なのかよそれ」
ベンは力なく笑って操り人形となった男たちを一瞥する。
「そんなものこちらの世界では無いようなものでしょう?命の軽いこの世界ではね」
「!」
「「……」」
セルが言い終わると、男たちは動き出し、入口の方へ向かっていった。歩き方や扉の開け方は人間のそれである。いつの間にか塞がった傷や、吸収されて消えた血を見ると誰も彼らが操られているようには見えないだろう。
「……この世界に足を踏み入れていろんな人間に会ってきたがあんたほど愉快そうに人を手にかけられる奴は見たことねぇよ」
「それはあなたが世界を知らないだけでは?…………そろそろですね」
「は?、何を言って…」
そうベンが問いかけるが、セルバは自分が入ってきた部屋の扉をじっと見る。
次の瞬間、爆音とともに扉が破壊され、その奥に居た人物が姿を現す。
「昼間振りだなぁおっさん。ウチのサポーターに何してんだよ?」
「おやおや、猫かと思えば獅子が来ましたか」
凛とセルバが対峙する。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
前回の投稿からだいぶ期間が空いてしまいました。この作品を読んでくださっている方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
テストや講義の復習なんかでなかなかパソコンの前に居る時間が短くなってしまいます。これからもこのように時間がかなり空いてしまうと思いますが気長にお待ちいただければ幸いです。
長文失礼しました。




