拠点
凛からの突然のパートナー宣言に、蓮夜の心臓が大きく跳ねる。
凛のような美少女が自分のパートナーになるという事に蓮夜は満更でもない様子である。
「実は私も第七隊では蓮夜さんを除けば一番新人なんです。一年前に入隊して今まで他のチームと一緒に任務に参加していたのですが、蓮夜さんが第七隊に入隊するという事で一人だった私に白羽の矢が立ったんです」
「つまり、俺は幸運という事ですね」
(つまり、俺は凛さんと一緒に戦うってことですね)
本音のほうが顔を出してしまった。凛もどう反応したらよいのか分からず苦笑いを浮かべている。
「えっと………そう言ってもらえて、光栄です?」
「すみませんこちらの話です」
「はぁ、では明後日の任務については現地で時間を見つけてゆっくり話します、荷物なんかはもうまとめて蓮夜さんが使う部屋に置いてあると思うので、部屋について説明します。この話は向かいながらにしましょう」
そうして凛は蓮夜にその場から立つように促し、蓮夜はそれに従い立ち上がり、二人は歩き出す。隣からなんだかいい匂いがしたことは胸に秘めておこうと蓮夜は誓った。
蓮夜はまた広いリベラティオ・コロナの建物を歩きながら凛の説明を聞いた。
「まず、これを渡しておきます」
そう言って、凛が黒いカードを取り出し蓮夜に差し出す。蓮夜はそのカードを受け取って質問する。
「これは?」
「リベラティオ・コロナ内での生命線です。部屋のロック。資料の閲覧。買い物。身分証明。ほかにもいろいろ機能があって、これがないと生活できなくなります。絶っっっっっ対に失くさないでください」
「絶対に失くしません」
そんな感じで二人で話していると凛が一つに扉の前で立ち止まる。扉には【1718】と部屋番号が書かれていた。この目の前の扉の向こうにある部屋がこれから蓮夜だけの拠点となる。
その後、「では、また」と軽く挨拶をした凛は元来た道を戻っていった。蓮夜は凛を見送った後、早速渡されたカードでロックを解除し、扉を開ける。
「すっご…」
思わず声が漏れてしまう。扉の向こうには一人で住むのがもったいないほどの内装が広がっていた。検査を受けていた時に過ごしていた必要最低限の物しか置いていなかった部屋とは違い、映像を映すモニターや冷蔵庫、家具などが充実していた。さらにほかにも部屋があるようで二人は寝られそうな大きなベッドが置かれた寝室。キッチンや浴室もあり、本当に蓮夜ひとりで住むのが疑わしくなるレベルである。
「さて、寝るか」
蓮夜は今、とにかく眠かった。肉体的な疲労はもちろんだが特に精神的にすごく疲労が溜まっている。何度も自らの死をイメージしてしまったゼンとの手合わせは、蓮夜にとって貴重な経験値となったがその分、蓮夜の精神に重くのしかかった。
ほぼ手ぶらな状態の蓮夜は真っ先に寝室へ向かい、ベッドに飛び込んだ。ふかふかのベッドが蓮夜の体を優しく受けとめ、蓮夜は抜けていく力に抗うことなくそのまま意識を手放した。
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モチベ大事