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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
16/39

目覚めたら美少女

「門?」

「ええ、私が見たのは何もない真っ暗な空間に点々と立っている門だった」

「それはいつもの事なのでは?……君が見る能力のイメージはいつもその能力に関係する少し変わった世界が見えるのだろう、ならばそれもそういう能力ではないのか?」

「いいえ、あれは別物。正直これは私にしか分からない感覚だから言葉に表すのは難しいけれど、ジル君の能力『弾丸生成』は弾丸が雨のように降る世界でジル君がはしゃいでいる姿が見えて、凛ちゃんの『氷魔法』は綺麗な雪景色の中を歩く凛ちゃんの姿が見えたわ。……こんな風に能力と風景と本人がいる世界が広がっているのだけど、蓮夜君の能力には風景と蓮夜君がいなかった。それにあの世界の門の向こうに感じた誰かがずっと私を拒絶していた。この世界にお前はいらない。早く出て行けって言われているようで……怖かったわ」


 舞花は一気に吐き出した。舞花がこれまでに見てきた能力者たちの世界はどれもただのイメージに過ぎず、舞花に対して世界のイメージが何かしらのアプローチをしてくることは無かった。しかし蓮夜の世界は舞花に直接働いかけてきた。エルバートはそんな舞花の話を真剣に聞いている。


「そうか、君はこれまでにいろんな能力者を見てきただろう?その者たちの中に蓮夜君と同じように君に何らかの心理的影響を及ぼした者は居なかったのかね?」

「いいえ、今回が初めてよ。どんな力を秘めているのか正直見当がつかない………あなたが蓮夜君にあの提案をせずに外の世界に送り出そうとしてたなら、私は…」


 そこで舞花は一拍を置いて、口を開く。


「あとで、彼を始末しようと考えてたわ」


 ~蓮夜side~

 全身が動かない。百パーセントを数秒だけ開放しても、このように動けなくなってしまうのはいかがなものかと蓮夜自身が痛感している。蓮夜は額に冷たい物が当たる感覚を感じて、ぼんやりと意識を覚醒させていく。

 まどろみの中、ゆっくりと目を開けると視界には自分の額に手を添える美少女がいた。


「あ、起きましたか?」

「ああ、はい………おはようございます」

「はい、おはようございます」


 凛が蓮夜に笑顔を向けて挨拶を返す。そのまぶしい笑顔に蓮夜の心はうるさくなる。今は横になっているため凛のことを仰ぎ見る体制になっている。


「体は痛くありませんか?」

「あれ、そういえばどこも痛くない……久桜さんがやってくれたんですか?」


 言われるまで気づかなかったが、蓮夜の体には本来あるはずの傷や痛みが消えていた。自分の額に添えられている凛の手がとても冷たいことから、蓮夜は手当てを凛が全てこなしてくれたのだろうと思ったのだが、


「いいえ、この訓練場に居れば勝手に受けた傷は治してくれます。ただ、最後に蓮夜さんが受けた攻撃はヤバかったのでこうして冷やしてるんです」

「そうなんすね、ありがとうございます」


 うっすらとだが最後、ゼンの拳が顔面に迫る光景が頭に残っており蓮夜はわずかに身震いする。完全に意識がはっきりした蓮夜は目だけを動かすと居たはずの二人が居ないことに気づく。


「ところで、ゼンとジルの姿が見えないんですけど……」

「ああ、あの二人なら第七隊の問題児タッグその一の対処に行きました」

「問題児タッグその一?」


 凛は蓮夜から手を離して、どこか遠い目をしながら話す。そんな様子を見て蓮夜はこれからこの第七隊へ入隊するという事が一気に不安になる。動揺を見せる蓮夜に凛は優しく微笑みながら言葉にする。


「第七隊は……ジルさんを筆頭とする問題児の集まりです。他の隊からは最果ての地と呼ばれています」


 蓮夜の不安は絶望に変わった。


(嘘だろ………あの毎日がエブリデイなマジキチ野郎(ジルという名のアホ)でもうおなかいっぱいだってのに、あのレベルがまだいるだと!?そんな奴らとこれからも一緒なんて俺どうなっちゃうの?消えるんじゃね?消えて無くなるんじゃね!?…まさか、目の前の彼女も!?)


 蓮夜の頭がパニックを起こし先程とは別の意味で心がうるさくなった。飛び起きるように体を起こし凛の顔をまじまじと見る。しかし、見てみると凛の顔にはうっすらと隈があった。


(ああ、彼女もこちら側の、振り回される側の人間だ。ジルと話している時の神経が磨り減るあの感覚、俺よりも長く味わってきたんだよなぁ)

(多分、彼もこちら側の人間。あの疲れる日常がこれから彼を待ち構えていることを考えると頭が痛くなってくる)

((可哀そうに))


 意図せずシンクロしてしまった二人は、互いに気づかないまま勝手に親近感を覚えた。互いに見つめあった状態で硬直していることにようやく気付いた二人は勢い良く顔を逸らす。

 気まずい空気が流れる。すると、凛がこの場の空気を変えるべく一度咳払いをして本題に入ろうとする。


「私がここに残ったのは蓮夜さんに用があったからです」

「俺に?」

「はい、蓮夜さんには明後日から任務にあたってもらいます」

「はい……はい?」

「第七隊の任務では必ず二人以上であたってもらいます。知ってますか?」

「はい」


 これはジルから聞かされていたことだった。それよりも任務、つまり実践が明後日からという事に蓮夜は耳を疑った。それについて聞こうとするが、凛が間髪入れず話す。


「ただ、第七隊の人数はほかの隊よりも少ないのでほぼ二人一組です」

「マジですか」

「マジです。そしてあなたのパートナーがこの私です」

「話が急過ぎます」


 


ここまで読んでくださりありがとうございます。

自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。

入学シーズン真っただ中ですね。私も色々と環境が変わるので頑張っていきたいです。

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