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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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違和感

~ゼンside~

 ゼンは出すつもりのなかった力で蓮夜の顔面を殴りつけた。


「あっ………」


 蓮夜は後方に飛んでいき、そのまま気絶して起き上がらなくなった。ゼンははっとして自分の拳を見る。気づけば冷汗が流れていた。


「ちょいちょいちょい!何やってんの隊長、今のは流石にヤバいって!」


 観戦していたジルがゼンに近づいてくる。凛は倒れた蓮夜のもとに向かっていった。


「急にどしたの隊長?」

「何も感じなかったの?最後の蓮夜君、明らかに異質だったよ」

「ん?最後?刀の力を百パーセント引き出したんじゃないの?」

(いや、本当にそうだろうか?私が蓮夜君に話しかけていた時はすでに外部からの力は何も感じなかった。なのに戦闘中よりも強い気配、純粋な殺気を蓮夜君は向けてきた。彼の身にいったい何が起こったのだろうか)

「隊長?」

「あいや、何でもないよ」


 このまま考えても埒が明かないのでゼンは一旦、思考を中断して倒れた蓮夜を診ている凛のほうに行く。蓮夜の顔からは鼻血の跡が残っており、割と本気で殴ってしまったことに申し訳なさを感じる。


「流石、もう蓮夜くんの傷がない」


 ジルがしゃがみ込んで呟く。

 この鼻血を含めてゼンが付けた傷はすでに塞がっていた。その理由は今ゼンたちがいるこの訓練場だ。実はこの訓練場自体が大きな魔道具であり、その効果は「回復」。魔力を流して起動すれば、その場にいる者の受けた傷を即座に治すというものだ。これはリベラティオ・コロナの基地の全ての訓練場に備えつけられている。


「蓮夜君、強いね。武器を握って数日とは思えないぐらい。……すごい拾い物したねジル」

「あっはっは、拾い物なんてひどい言い方しないであげてよ、原石だよ彼は。あの時、ほんとに(たかぶ)ったんだ、蓮夜くんは面白くなるってね!」

「それは間違いない」


 ジルは目をキラキラさせながら蓮夜に思いを馳せている。ゼンも戦った蓮夜の姿を思い出して、ニヤリと笑う。勝手に盛り上がる二人を尻目に凛は、倒れた蓮夜の額に手を当ていた。

 「ところで…」とゼンが思い出したかのように凛のほうを見る。


「君の目から見て蓮夜君はどうだった凛君、これから一緒に戦うパートナーになる男だろう?」

「素人にしては動け過ぎていたかと」

「うんうん」

「ただ、今まで戦ったことがないことを考えると戦場での対応力が不十分だと思います。あとは魔法を使えないこと、ですかね。蓮夜さんの能力の診断結果を見ると、魔法の適性がほとんどなかったので…」

「随分辛口だね」

「辛口にもなります。戦場で命を預け合うんですから」


 凛はゼンの目を見て言う。彼女の誠実で真面目な姿にはゼンも好感を持っている。と、ここでゼンのポケットに入っている端末が震えた。見ると、発信元はエルバートからだった。


「おっと、ボスからだ。何々、至急私の部屋へ来い………なんか怒ってない?」


 メッセージはその一文しかなかった。ゼンが分かりやすく動揺していると、凛が何か思い当たる節があるように口を開いた。


「そういえば、訓練場に魔力を流しに行ったとき、任務から帰ってきた来たライカちゃんと玄九郎さんとすれ違いましたよ」

「まさかあのジジ孫また問題起こしたな…」


 ゼンは大きなため息をついて頭を抱える。そんなゼンを見てジルはけらけらと笑っている。


「しょうがない行くか、ジルはライカと玄九郎止めてきて「えー!」えー!じゃない。凛君、悪いけど蓮夜くんが目を覚ますまで面倒見ててくれない?」

「分かりました」


 ゼンはエルバートの部屋に向かうために歩き出す。

 最後、蓮夜がゼンに向けて放とうとした技、あれは蓮夜から繰り出された技の中で一番威力かあった。ゼンは殺気が特に集中した首をさすって呟く。


「若いって、怖いね」


 ~舞花side~

 時は少し遡り、蓮夜が武装集団との戦いで気絶し、その後医務室で目を覚ました時のこと。舞花はエルバートを呼び出していた。舞花が呼んでいたから、あの場にエルバートが現れたのだ。

 蓮夜からの質問に答え、こちらからのスカウトを蓮夜が受けてくれたことに舞花はその場の誰よりも安堵した。


「はい、お茶」

「ありがとう」


 今、蓮夜は健康面や能力面の診断を受けに行っている。能力面は主にあの刀の力で強化されている蓮夜の身体機能などを調べたりする。

 舞花とエルバートは医務室の奥にあるスペースに居た。ここはエルバートと舞花と舞花の旦那がまだそれぞれの部隊の一構成員だった頃、よくこうして集まり話をしていた場所だ。今は全員責任のある立場にいる人間だがたまにこうして集まって話をしている。


「それで話とは、蓮夜君の事だろう?」

「ええ、話したいのは蓮夜くんの能力についてよ」

「彼にも能力があると?」

「間違いなく」


 エルバートはお茶をすすりながら落ち着いた様子で聞く。対象に舞花はどこか落ち着かない様子で話す。


「私の能力『魔力眼』の応用で彼の能力を覗いたわ」


 舞花の能力『魔力眼』は、目に魔力を集中させると目の機能が跳ね上がり、様々な能力が付与されるというもの。単純に視力が上がったり、他人の体の不具合を瞬時に見つけることが出来る。その中で他人の特殊な能力の断片を見る力で蓮夜の能力を覗いたのだ。


「彼の能力は異質だった」

「異質………一体君はどんなイメージを見たのかね?」


 エルバートの問いかけに舞花はゆっくりと言葉を紡いだ。


「私が見た、蓮夜くんの能力のイメージは………『門』よ………」

 



 

 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。

よろしければ評価も一緒にしていただければ嬉しいです。

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