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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
12/39

蓮夜VSゼン

 瓶の割れる音と同時に二人は走り出す。

 最初に仕掛けたのはゼンだった。その紅い槍のリーチを生かした鋭い刺突を蓮夜の間合いに入らせる前に放つ。蓮夜の胸めがけて正確に繰り出された刺突は、半身になった蓮夜の胸のすぐ隣を通過する。

 蓮夜は半身になるためにひねった体の勢いを殺さずに回転して斬り上げる。しかし、それをゼンは体勢を低くしながら一歩踏み出すことで回避する。斬り上げことで上半身ががら空きになった蓮夜の腹部にゼンは槍を持っていないほうの手で殴りつける。


「っぐ!?」


 すさまじい力で殴りつけられて蓮夜の体がわずかに浮く。体の中の空気をすべて吐き出しそうになるが、何とか耐えてゼンの手をつかんで強引に体をひねりゼンの頭上に蹴りを落とす。ゼンは引き戻した槍の柄で蹴りを受け止め、押し戻す。

 着地した蓮夜はたまらずバックステップで距離を取る。


「さっきの突き、殺す気でしたね?避けなきゃ心臓持ってかれてた」

「君こそ。あの殺意のこもった斬り上げ、あのままだったらおじさん一刀両断されてたよ」


 たった数秒の立ち合い。しかし、その数秒で二人は一回ずつ死を感じた。そしてその死の恐怖は新しい可燃材料として二人を燃え上がらせる。

 再び構える両者。互いに踏み込み距離を縮める。またしても先手をとったのはゼンだった。腰を入れ先程に突きよりも早い突きを飛んでない速さで三連撃繰り出してくる。ほぼ同時の刺突に蓮夜は動揺する素振りを一切見せず、初撃を避け、二、三撃目を刀でいなす。


「あれ?一回は当てるつもりで攻撃したんだけど…」

「まだ付いていけます!」

「面白い」


 今度は蓮夜が攻勢に出る。

 蓮夜も連撃を放つ。しかしゼンはそのすべてを捌き反撃に転じようとするが、攻撃を加えるための予備動作に発生する僅かな隙を逃すまいと蓮夜は一歩踏み込んでさらに攻撃を加える。


「いい集中力だ!」

「…どう、もっ!」

(クッソ、隙があるようでその隙への対応力がお化けだ)


 蓮夜にとっては全力でも、ゼンはまだ喋る余裕があるようだ。

 攻撃の密度が緩んだところでゼンは引き戻した槍を振り下ろす。しかし、蓮夜を息を吐き、当たる寸前に自分と槍の間に刀を滑り込ませる。

 いなしたところで左手で首飾りを握り、刀を収める鞘をイメージする。すると首飾りも蓮夜に応えるように光を放ち、一瞬で鞘が形成される。


「せいっ!!」

「おっとぉ!?」


 鞘を握りしめてゼンの槍の柄を思いきり叩きつける。思わぬ方向に力が加わり、ゼンは少し驚く。すぐに槍を引き戻そうとするが、蓮夜はそれを見逃さなかった。槍の柄を踏みつけそれを阻止しながら、刀に魔力を込める。


「これはやばいね」

「そこっ、雨染(あまそめ)!」


 一瞬、ゼンは踏みつけられた槍に視線を向け、蓮夜から目を離す。そのチャンスを逃すまいと、あの時の感覚を思い出して雨染を放つ。槍は踏みつけたまま。ゼンが魔法を使う気配はない。武器を手放したところで雨染であれば攻撃範囲内。このまま振り抜けばゼンを斬れる。


「…っ!?」


 勝利を確信した蓮夜だったが、踏みつけていた槍の感覚が突如として消え、掛けていた体重によって体が傾く。しかし、構うものかと一切の動揺を見せずに刀を振るう。


「は?」


 蓮夜の刀は固い「それ」にぶつかり、複数の甲高い音を立てて止まる。そこで初めて蓮夜の顔が困惑の色に変わる。

 蓮夜の雨染は防がれた。ゼンの前に現れた紅い大盾(シールド)によって。それはゼンが使っていたあの紅い槍と同じ色をした盾だった。


「ほい!」

「がはっ!?」


 人間、自分の理解に追いつかない現象に立ち会うと思考が思うように動かなくなる。その現象が蓮夜にも起こっている。

 あまりにも突然のことで唖然とする蓮夜をゼンは大盾(シールド)で弾き飛ばす。うまく着地することが出来ず地面を二、三回転がって立ち上がる。顔を上げるとゼンはまた槍を構えており、あの大盾(シールド)は消えていた。


「明らかに一閃だけだったのに複数回の斬撃……魔力で斬撃を複製したのか」

(何だ今の?……突然現れて消えた。どんな仕組みだ?最初ゼンさんはどうやって武器を出した?まさか能力?()()()、それとも()()()()…いや待てよ、なんか変な知らん記憶があるな、この記憶は………青い、タヌキ?四〇元ポケット?)


 蓮夜が何とか理解しようと冷静じゃない頭を必死に回転させる。ゼンは黙ったまま動かなくなった蓮夜を見て「わはは」と笑いながらトリックの種を明かす。


「色々と考えてるみたいだけど、おじさんの能力はそんなにカッコいいもんじゃないよ。簡単に言えば『血を操る能力』。さっきのはこの金属の筒の中に入っているおじさんの血で槍とか盾とか造って戦ってたんだよねぇ」


 ゼンは何のためらいもせず自分の能力の説明をする。話しながら槍を解除すると紅い槍はドロッとした液体になり、ゼンが握る金属の筒の中に入っていく。


「そんな簡単に能力教えていいんですか?」

「これは殺し合いじゃないんだから教えてもいいでしょ、あくまで手合わせなんだから。それにこの能力は教えたところで、おじさんのイメージで何でも造ることが出来るから対応しきるのは難しいんじゃない?」


 蓮夜は刀を構え直す。ゼンはニヤリと笑って着ていたジャケットから血の入った試験管を取り出す。


「手数を増やそうか」


 ゼンは試験管を上に放り投げる。上まで上がりきったところで試験管は破裂し、中の血が空気中に飛散する。そしてすぐに変化が起こる。飛び散った血は一つ一つが(うごめ)き始め、そのすべてが標的(蓮夜)を貫こうとする投槍(ジャベリン)へと姿を変えた。


「そんなんアリかよ…」


 ゼンの頭上で静止していた投槍(ジャベリン)は蓮夜へと飛来する。

 

 



 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

自分のペースで投稿していきますので、気長にお待ちください。

ねむい

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