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リベラティオ・コロナ  作者: 白黒 猫助
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荒野を駆ける1

 紬蓮夜は走っていた。蓮夜をハチの巣にしようとする無数の弾丸が飛んでくる荒野をひたすら走っていた。


「はぁ、はぁ、クッソ!」


 一つ、また一つと弾丸の風を切る音が聞こえてくる。この荒野を走り続けて三十分は経っただろうか。そろそろ蓮夜の体力も限界に近い。蓮夜に向けて発砲してくる武装集団からは距離があるが、弾丸が当たるのも時間の問題だ。

 蓮夜はこの三十分の中で何度も死を覚悟した。こんな状況になってしまったのは蓮夜自身が原因ではない。原因はほかにいる。


「ほらほらぁ、蓮夜くん!しっかり走らなきゃハチの巣になっちゃうよー?」


 こいつだ。

 蓮夜の耳についているインカムから少し高めの男の声が聞こえてくる。その声を聞いた蓮夜はふつふつと怒りの感情が湧いてくる。


「ジルさん!マジで、助けてくださいよ!!」


 蓮夜は息を絶え絶えにしながら、ジルという男に助けを求める。


「あははははは、いい感じに疲れてきてんじゃん!……じゃ、もうちょっと囮よろしくぅ!」

 (この人頭おかしいわ)


 蓮夜が軽い絶望を覚えた時、インカムからズドンッとお腹に響く重い音が聞こえてきた。蓮夜が何が起こったのか分からず動揺していると、またインカムからジルの声が聞こえてくる。


「ヒィット!、ねえ、今の聞いた?僕が撃ち抜いたんだよ。」


 どうやらジルが持ってきていたスナイパーライフルの音だったようだ。蓮夜に希望の光が舞い降りたと同時に一つ疑問が浮かび上がる。どうしてもっと早くそれを使わなかったのか?


「どうし「どうしてこれを最初から使わなかったかと言うとー、君の訓練も兼ねているからだよ!君も僕たちと戦っていくなら、この戦いは避けては通れない、いわば登竜門だ」

「かぶせてくんな!」

 (戦い?登竜門?ああ、だめだ。考えながら走るのは疲れる。とにかく走れ!じゃなきゃ死ぬ)


 蓮夜は考えるのをやめ、さらに足に力をいれて逃げることに集中する。

 蓮夜が走っている間にもインカムからはズドンッ、ズドンッと重々しい発砲音と、ジルのヒット、ヒットという声が聞こえてくる。その度に蓮夜は苛立ちを覚えたが蓮夜に飛んでくる弾丸の数は減ってきた。


「まぁ、君をハチの巣にする気はないからね!」

(じゃあ、もっと真面目にやれや!)


 ジルの狙撃によって飛んでくる弾幕の量が減り、蓮夜に少し余裕が生まれる。そして、なぜ自分がこの状況に置かれたのか思い出すために思考を巡らせた。大元は今狙撃しているイカれ野郎だが、ほかにきっかけとなった出来事があるはずである。 


 ~一時間前~

 蓮夜は車の中で目を覚ました。蓮夜が乗っている車は、電車のように座席が向かい合わせになっており、窓がない。そして、蓮夜の前には長く大きな荷物を支えながら座る男がいた。男は、白髪と黒髪の混ざった不思議な髪を後ろで小さく縛ってをしており、体は少し小さい。今はイヤホンをつけて曲に夢中になっている。

 蓮夜がじっと男を観察していると、男も気づきイヤホンを外して話しかけてくる。


「やあ、おはよう。僕はジル、ジル=クラウンだ、よろしく」

「紬蓮夜です。よ、よろしくお願いします。」

 

 ジルと名乗った男は、少しだけ身を乗り出して蓮夜に握手を求めてくる。差し出された手を握り返すとジルは満足げに笑い、さらに話す。


「早速だけど、今君が置かれている状況に心当たりはある?」

「まったくありません、というか怖いんですけど…」

「あははははは、そうだよねー、目が覚めたら知らん車に乗ってるとか、錆びまくった缶詰開けるときぐらい怖いよね!…………………おい、共感しろ」


 無理がある。

 ジルの無駄なハイテンションと謎な言動が蓮夜をさらに混乱させる。


「アノ、ホントに今の状況を説明してください」

「えーしょうがないなぁ、じゃあ簡潔に。僕たちは君たちを救った。僕たちっていうのは僕が所属する組織のことね」

「はい」

「んで、君たちは救ってもらった恩人である僕たちのために恩返しをするの、するべきなの。だから君はこれから僕たちと働いていく、はい説明終了」


 とんでもない暴論である。

 会って間もないが、この人ほど尊敬してはいけない人間はいないと蓮夜は思った。簡潔ではなく適当な説明に物申したくなったが、混乱した頭にはちょうど良かったのか一周回って冷静になる。


「…それで仮に俺が貴方たちにその恩返しをするとして、何をさせられるんですか?」

「簡単簡単チョー簡単!ただある場所を走ってくれるだけでいいんだ」

「は?」


 蓮夜の頭に疑問符が浮かぶ。『ただ走るだけ』に何の意味があるのだろうか。何か嫌な予感がする。蓮夜があれこれ考えていると、急に体が左右に揺さぶられる。どうやら乗っていた車が停車したようだ。


「まったく、ウチのサポーターは運転が荒い。よし、蓮夜君、外に出るよー」


 ジルは立ち上がり荷物を背負って車の重々しい扉を開け放つ。

 ジルに続いて外に出ると、そこは荒野が広がっていた。蓮夜は視界に広がる景色を見て唖然としていると、その様子を見てジルがにやりと笑って


「紬蓮夜、君からしたら二百年後の世界だ。どうか楽しんでくれたまえ!」

「………………………………は?」 





 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 今回初めて投稿させていただきました。よろしくお願いします。


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