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最終話 わたしは知っている

「ははうえーーっ!

アメリをぼくのおよめさんにしますから、このまましろまでつれてかえりますねーー!」


今年6歳になる

ダークブラウンの輝く髪と

宝石のような青い目をした少年が、

艶やかな銀髪と

アンバーの瞳をもつ少女の手を引きながらこちらへ駆けてくる。


「ち、また勝手な事言って…

 あのプチアルジノンがっ……!」


わたしの隣に座る

王太子妃ジュリさまが

その美しいお顔からは想像もつかない

見事な舌打ちをご披露されながら言われた。



ここはハイラム王国ランバード辺境伯領。


わたしと夫のセルジオは7年前に

この地へと移り住んだ。


時々里帰りをされる

ランバード辺境伯のご長女であり

ハイラム王国の

王太子妃であられるジュリ様とは、


お互いの歳と子ども同士の歳が近い事もあり、

畏れ多くも仲良くお付き合いをさせていただいている。


だってジュリ様があまりにも気さくで面白い方で

わたしは彼女の本来の身分をついつい忘れてしまいそうになる。


先程声を上げていた少年は

ジュリ様のお子でこの国の王子、ルイス様だ。


そしてルイス王子に手を引かれているのが

わたしがあの時

絶対妊娠魔法で身籠った子、

娘のアメリだ。


ルイス様は大好きなお母さまのお膝に

いち早く駆けて来て、

可愛らしいお顔を満面の笑みで満たされていた。


「ね?いいでしょう?ははうえ!アメリをぼくの

コンヤクシャにします!」


「何がいいでしょう?よ。

ホントに変なところばかり父親に似て。

いいわけないでしょ!こんなに小さな子を両親から

引き離せるわけないでしょう!」


ジュリ様はルイス王子にこんこんと

言い聞かせている。


ルイス王子がお叱りを受けながらも

時々ジュリ様のお腹をさすっていらっしゃる姿が

微笑ましくてたまらない。


ジュリ様のお腹には

既に三人目のお子が宿っておられるのだ。


そしてわたしのお腹にも……

(今度は自然妊娠です)



「まま!」


アメリがわたしの元へと駆け寄る。


この6年、アメリは病気らしい病気ひとつせず、

すくすくと育ってくれている。


「まま、コンヤクシャってなあに?」


「ふふふ、なんでしょうね?」


わたしが微笑んでアメリの頭を撫でると、

不意に娘の頭が高く上がり手が届かなくなった。


椅子に座っていたわたしが顔を上げると、

そこにはアメリを抱き上げた夫、

セルジオの姿があった。


「あら、セルジオ」


「今、とても不吉な言葉が聞こえたんだが……

アメリを王子の婚約者にとか……」


夫の眉間には深いシワが刻まれている。


「ふふ、光栄なことね」


「アメリはどこにも嫁に出さん」


「ぱぱ、コンヤクシャってなあに?」


「一生知らなくていい」


「ぷっ」


わたしは思わず吹き出してしまった。


夫セルジオは今はフリーの騎士として

国境騎士団の団員として籍を置いている。

ハイラム王国は移民も受け入れているらしく、

こちらの国籍を取らないかとランバード伯に

勧められているらしい。


国籍があれば

いずれこちらで騎士爵を賜れるそうだ。


母親が前国王の妹で、

自身も四男とはいえ侯爵家の出なので

難しいのではないかと思ったが、

ジュリ様のご夫君であらせられる王太子殿下が

祖国の方に直談判してやってもいいとまで言って

下さっているとか。


本当に有り難い。


わたしもセルジオもこの地の風土が

とても肌に合っているらしい。

なので多分、

わたし達は近々ハイラム国民になるのだと思う。



まさかこんな事が待ち受けているなんて。


人生はどう変わっていくかなんて

わからないものだ。



でも


わたしは知っている。



愛する夫と愛する子ども達といられるなら、


どんな所にいても必ず幸せになれる事を。



一度は諦め、捨てようとさえした大切な想い。


大切な人。



わたしはもう絶対に離さない。




この幸福を知ってしまったから。


かけがえのない家族の温もりを


知ってしまったから。





         終わり




















これにて完結です。


もともとは全7話くらいの予定でしたが、

ざまぁを入れると全16話となりました。


ざまぁされた御三方のその後ですが、

王様は10年後、

グレイス王女は30年後に帰って来ました。


侍女長は……やはり帰って来ませんでした。

大賢者が保護した精霊の状態により、

この結果だったのだと思います。

コメントの中にも精霊は呪物として犠牲になったのでは?とのご指摘がありましたが、

精霊を生きたまま呪物として、使用したと考えていただければ良いと思います。

説明不足ですみません。

じゃあどうやって?とまで広げると際限なくなりますので、そこは割愛させていただけると助かります。

殺されてはいないが、

イグリードがジュリに何も話さなかった事を鑑みるとよほどの事だったのではないかと作者は推察いたします。

ちなみに涙を搾取した精霊は呪物にした精霊とはまた別の精霊です。

……こりゃあ侍女長が帰って来ないのも納得ですね。


最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

小説家になろうの方でも連載を始めた

『だから言ったのに!〜婚約者は予言持ち〜』ももうすぐ最終話を迎えます。

なろう版として、そちらでは番外編も一本書こうと思っております。

こちらの最終話に出てきたアニスとセルジオの娘アメリと『だから言ったのに!』のジュリとアルジノンの息子ルイスとの恋愛話です。

まだ投稿しておりませんが、もしよろしければそちらも読んでいただけると嬉しいです。


それでは、最後までお読み下さりありがとうございました!


          キムラましゅろう



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