本当の駄目人間
ただ宣子が好きだった。
それ以外の感情は捨ててきたと思っていた。
いつもの様に宣子と出かけると、恵子の家に遊びに行く事になった。最初聞いたときは、「オケイの家に行ってみよ!なんか近くに住んでるらしいよ?」と聞き一時間ほど車で移動して家に行った。
20階建ての16階に住んでいた。
部屋に入ると懐かしい顔が出てきた。
一緒に外で食事する事になり外に出たら、いつものように宣子と手を繋いでいたら、「私の前でてーつなぐたーいい度胸だねー」と皮肉たっぷりに言われ気が付いた。
そっか、高校の時のはそういう事かと理解する。
が、気が付かないふりをする。
そしてそのまま手を繋いだまま
「良いだろ〜一緒に繋ぐ?」
と聞くと
「もち!」
と反対の手を取られた。
耐性持ちにはもうその手は食わないぜ?
でも初恋の相手の心は多分震えていたのだろう。
その後食べて飲んで記憶がない。
もちろん間違いは無かったのは朝起きて全身確認した。
と思ったが、「今日は許す知ってて会わせたんだし」と宣子に言われた。
うーん何を許されたのか分からないけど、「ありがと優しいねノブ」と伝え優しく包み込んだ。
結局何があったか分からないまま恵子との再開は終わった。
そしてまた甘い日が続いたが、ある日ゲーセンで働いていた店長が異動になり新しい店長が来た。
店長が変わると方向性や考え方が変わる。
一緒に働いていた美緒が合わないらしく店長と喧嘩した。
俺は昔から心が折れている女に弱い。
特に恵理子の事がトラウマとなり、寄り添わないといけないと思う使命感まである。
「ちょっと気分転換しにドライブでも行く?」
と声を掛けた。
「良いよ行こっか?」
さすがに二人はまずいと思い、後輩の佐藤郁恵通称郁ちゃんを誘いドライブに行った。
ちょっとと思ったがスタート0時だったので、隣の県に行ったら結局4時頃までかかった。
もちろんみんな寝てる。
カーブを曲がるとこっちに転がってきた。
あーちょっと近いかなぁまぁ疲れてるだろうから寝かせとくか。
と思い、自分の腕の上で寝てる美緒をそのままに家の近くまで帰った。寝てると美人が可愛く見えるなと思いながら髪を撫でてると目を覚まし
「ゴメン寝てた!」
と言ってきた。
うん結構前から寝てたよ俺は気にしないけどね。
その後も宣子と会い、美緒とドライブを繰り返した。
ただただ元気になってほしかった。
ある日美緒が
「映画が見たい」と言い出した。
映画館今良いのやってなかったなーと思ったら
「これ!タイタニック!」
おおう懐かしい結構前の映画じゃね?
まぁ見てもいいけどちょっと悲しいやつや
「もち良いよ!うちで見る?郁ちゃんとか誘うかな?」
と言うとちょっと残念そうに
「ウンお願い」
と言ってきた。
俺は彼女がいるからね一応忘れるな?と言いたかったが、かなりノロケ話してるから大丈夫と思った。
俺はまだ人の気持ちが分かってない。
映画を見る名目でうちに集まり男2人女2人もうひとりの男は中防だったが郁ちゃんが好きで付いて来た。
しゃーない店長の件でまだ精神不安定なら安定するまで付き合うかという感じで タイタニック は始まった。
船首で両手を広げるシーンはぶっちゃけ有名すぎてみんな「キタキタ」って感じ。
イチャラブシーンは中学生と美緒がぎこちない。
あぁそうなのか。
なんとなく分かるその表情わかってる興味はあるでも経験はないという表情。
頑張って彼氏作れ!と心のなかで応援した。
最後沈んでいくシーンが終わりみんな泣いていた。
いやもう俺の心実は死んでるんだよねって言いたくなった。
その瞬間テレビが消え、電気が消えた。
唇に甘い感触。
10秒位だろうか体感時間は一瞬。
すぐ離れ電気が付いた。
「ちょっと涙を隠したかった」と言い顔を隠して立ち上がった。
そして美緒は会社を辞めた。
俺は追うように会社に行かなくなった。
そして美緒に会いに行き「一緒に遠くへ行こっか?」と言い隣りのさらに隣りのさらに隣の県まで車で行った。
当たり前だがそんな遠くに行ったら帰れない。
途中ハートの付いたホテルで休むことになった。
俺は求められると弱い。
求められなければ普通に朝までホッカイロになれる。
11月寒いしな。でも駄目だった。
初めてだったその子を愛おしく感じた。
次の日宣子に
「ゴメン別れよう好きな人が出来た。」
と言った。
全部オレが悪い。いや違うだろいや違わない。
なんだよなんでこうなった?
俺の自制心か?
でもあの瞬間愛おしいとおもったんだ。
下手なキス。
恥ずかしがりながらも必死で耐える姿
今まで初めては何度か経験した。
でも違ったんだ。
何がって?
それは多分恵理子のトラウマを埋めてくれたんだ。
自分が学校に来るようにして、自分が学校に来ないようにした存在。
その後も連絡はしてたが途中から全く出てこなくなった。「太ったから見られたくない」と言われた。
会いたくないと言われたと感じ連絡しなくなった。
トラウマが埋まらなくなった事を痛感した。
そしてこの日心の穴が埋まった気がした。
ただのクズな妄想で1人大事な人の心をまた壊した。