浮浪者二人前編
宣子とは順調だったが、実家にいるのが辛くなり、一人暮らしを初めた。
小さなアパートだったが、一人+時々彼女が過ごすには十分だった。
また実家で働くのもちょっと無理を感じ、新しく出来る大型ショッピングモールのゲームセンターに応募した。
初期メンバーになれれば嬉しいかなと思う程度だ。
面接前自分の顔をふと見たらあれ?こんなに髪の色明るかったっけ?となった。
昔からドライヤー焼けする猫毛の為、ちょっと気を抜くと茶髪になるのだ。
化粧品売り場で「ヤバイ」と心の声が漏れていた。
白髪用毛染めを購入して面接に備えた。
面接会場に行くと、思いの外人数が多く驚いた。
ゆうに50人はいる。
募集人数6人だったかなとか思いながら面接を待っていると自分の番になった。
面接会場は簡素でイスしかなかった。
面接の練習は完璧!
何でも来い!
「どうして当社を希望されましたか?」
「趣味は?」
「特技は?」
など当たり触りの無いことを聞いて来た。
もちろん対策済みだったのですべて完璧に答えた・・・と思う。
一週間後合格通知が届き次の仕事が決まった。
研修に行くと見たことがある人が居る。
自動車学校に通っていたときにいた女の子だ。
美人だから覚えていた訳じゃ無いただタバコの火を借りたから覚えていたのだ。
タバコの火を借りるのに何故その人だったのかそれは神のみぞ知る事だろう。
まぁ相手は忘れているかも知れないし、彼女の宣子が悲しむような事にならないようにする事にした。
俺は心が読めないクズだから。
自己紹介が始まったら男から順に紹介していく。
「名前は一瀬慈恩。花屋の息子ですが、バイトでガソリンスタンド勤務してましたので機械得意です。」
「じゃぁ機械の保守頼もうかな?」
と店長より言われた。
他の人は覚えてないが一人だけ覚えてる
「木下美緒です大阪の大学行ってました。絵を書くのが好きです。」
美緒かなんとなく覚えとこう。しかし完全理系の自分は絵を書くのが得意というのはぶっちゃけよく分からん芸術関連無理。
という感じで自己紹介が終わった。
あとから聞くと、なんと100人以上面接に来ていて
「ジオは髪が少し茶色いから迷った」と言われ俺グッジョブと内心ガッツポーズをした。
それから研修7日を終えすぐにプレオープンになり、客が殺到してきた。
何をすればいいか分からないまま、機械が止まったら対応する。
昼は故障機械の修理、苦情対応、中高生とだべる、駄菓子屋の番。夜は毎日大掃除や両替機のお金の回収。朝は大量の100円玉回収と目まぐるしく過ごした。
忙しく無さそうって?いやこれがまた結構大変なんだよ。
まぁ今思えば楽なもんかな?
そして夜は毎日宣子と月を星を見て過ごした。
まぁ本当は宣子かな・・・
そんなある日、家に帰る途中で高校生位のヒッチハイクガールズがいたので声をかけてみた。
「何してるの?連れ去られるぞ?」
ちょっと危ないと思い声をかけてみたら
「オニーサンちょっと休ませて?」
とか言って来たよおいおい
「それマジで危ないから家きなメシぐらいなら食わせてやる」
そう言って家に連れて帰る
「んで、なんであんな所でヒッチハイクしてたの?」
聞くと普通に笑顔で
「友達の家に転がり混んでたんだけど追い出されて行く当てないから困ってた~」
「私も一緒だけど一応家あるよ勘当されたけどねテヘペロ」
(マジモンの爆弾拾っちまった)
「分かった飯食ったら家帰れ!」
「メシは食う。家は無理ー」「私は少年院から出てきたばっかで本当に勘当状態だから無理じゃないかなー♡」
ん?ハート語尾に入ったぞ?いや違うだろそこじゃない少年院?農大の近くにあったやつ?
「もしかして少年院って近くに農大あった?」
「よく知ってるねーあんまり場所知ってる人居ないんだけどねー」
「そこの卒業生だが?」
「えーメッチャ受ける!アソコって超ブ男の集まりじゃん!オニーサン浮いてたっしょ?」
「雄は仲間 見た目キニシナイ 雌は仲間 メシくれる」
と言うと、大爆笑された
まぁ大学時代女性専用の寮に何故か俺は入っても誰も咎めなかったしな。
看守いや違う守衛さんも俺が「こんにちは~」って言っても「こんにちは」って返してくれてたからよく金がない時は食いもん貰いに行ってた。
なんでだろうな俺は男なのに女子寮に入って勉強したり酒のんだり飯食ったりしてたな今更だが不思議だ。
「いやまぁ否定はしないけどな笑いすぎ取り敢えずパスタ作るから待ってろ」
『はーい』
パスタを茹でながらクリームソースを作り、レンジで温めながら、肉を焼く。
パスタが茹で上がったら、クリームソースと混ぜ、追加の香辛料を混ぜ、肉を裏返す。
流れるように作業をし、ついでのコーヒーを立てる。
「ホイよ出来た!」
「え、ウソ?オニーサン料理早くない?」
自分で飯を作り始めて12年ぐらいか?舐めんな笑
「今21だけどねー9歳頃から飯作ってるからこんなのすぐ出来るぜ」
『スペックタッカー』
(なんの必殺技だ?)
とか考えてしまった。若いってすごい日本語じゃないかと思った!
「取り敢えず食ったら帰れよ」
「いやいや今22時ダヨ親に殺されるってw」
「家に帰れんって言ってんじゃん」
ん?そっか22時は遅いのかしゃーないが彼女が居るからあんまり女を家に入れたくないんだよな〜
でも外にほっぽり出す訳にもいかないしとりあえず今日は置いとくかリビングで寝てくれ。
「じゃぁ俺は奥の部屋で寝るからここで寝てくれ」
と言い奥に行こうとすると
「オニーサン話しよーよー」
俺は離れたかった。その香水の香り知ってる。
恵子と同じじゃん思い出すからやめてくれ。
心が悲痛な叫びを紡ぐ。
でも離してくれなかったと言うか最後は朝日が見えてきて二人は力尽きた。
コイツラどうしてやろうかと思ったが仕事今日は遅番昼まで寝かせてやるかと思いそのまま散らかった部屋を片付け日課の記憶の整理を始めた。
「記憶の整理」それは俺にとって大事な事
昔から記憶力が異常で捨てるべきと判断しないと無駄な事を覚えてる。逆に大事な事を忘れる。
そして更に整理を怠ると睡眠障害に発展し目を閉じたまま記憶の渦に飲み込まれ朝まで起きている事もしばしば。
睡眠障害がひどい小学生時代は目の下に隈を作っていたのでいつもイジられた。
今は何とか自制できるようになったがこの二人消すべきか残すべきか迷うな。
中途半端にしたせいか現在23年後は顔と香りと片方の名前しか思い出せない。
そんな事をしている内に準備する時間になった。
「おい起きろー」
「無理眠い」
「Zzz」
「仕事行くんだから起きてくれ困るだろ」
「いってらっしゃ~い帰ってくるまでポテチ食べながらテレビ見て待ってる」
「Zzz」
(コイツラ)
まぁ良いか夜も何もして来ない高校生だ金目の物はほぼ無い?と思うし帰って居なかったらそこまでだ
「じゃぁちゃんと家帰れよ?」
と言い仕事に行く事にした。
ゲーセンではいつもの様に中高生がメダルゲームに没頭して小学生がゲーム出来なーいって泣いてる。
順番守れよガキどもと思いながら
「おいおいダセーぜ?女のコ泣かせんじゃねーよ」
と言って中高生を動かす。
コッソリ
「良いなお前ら素直だほらこの台一発で当たるようにしてやんよ」
と言いパチンコ台の設定でコッソリ初期スタート大当たりを入れ再起動
「アザース!」
うんうん小さい子には優しくして変な派閥を作らない。
親は買い物子供は楽しむ完璧!
って感じで切り盛りする。
さぁ帰る時間だとりま宣子と落ち合って海に行き月を見て甘い一時を過ごす。
帰る頃に気が付いた
あ家に浮浪者二人居た