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二人きりで

僕は昨日の特別授業で倒れてしまい、今日は一日中寮の自室で休養するように言われた。



(昨日のこと、魔眼のせいなのかな………)



昨日、ダンジョンで突如感じたオークの気配。その後の高熱。関連性がないとは思えなかった。



「けどどの本もそれについては書いてないしなー」



本棚にある本は魔術書ばかりで、魔眼病について書いてある書物はほとんどない。その数少ない書物に書いてあることは、既に知っている事ばかりで、魔眼の周りに模様が出てくるという情報は載っていなかった。



鏡の前に立ち、左目を隠している髪を上げる。そこにはまるで目を中心にし魔法陣を描くようにして模様が出ていた。ところどころ模様は途切れているが、前に見た時と比べ確実に模様は増えている。



そして昨日レーネ先生に言われた言葉を思い浮かべる。



「本物の魔眼…………」



魔眼を中心にして魔法陣を描く模様。もしこれが本物の魔眼で、この魔法陣が完成してしまった時。何が起こるかわからない。ただの病で、たまたま今までに事例がなかっただけかもしれない。



それでも未知の状況であることに変わりなく、僕は若干の不安を抱えたまま過ごしていた。



部屋にある食料を手に取り、魔術書を読みながら食事をしていた時、突如玄関の方から音がする。



ガタンッ!!ガチャガチャガチャガチャ!!



突然の音に身構えたが、すぐに声が聞こえてくる。



「おい!開かねえぞ!入れねえじゃねえか!」



「当たり前でしょ!鍵貰ってるから開けるの待ってよ!」



ガチャン!



外にいる人物は鍵を開け、僕の部屋に入ってくる。入ってきたのはカイルとジェシカだった。二人の手には昼食と思われるパンを持っていた。正直扉が壊れるからああいうことするのはやめてほしい。



「よぉ!レン、見舞いに来たぞ!」



「ごめんね、扉の音うるさかったでしょ。ほんとはグリウェン君もいたんだけどさっきレーネ先生に連れてかれちゃって。」



「ジェシカ、次同じことやったら出禁にするからね。」



「悪かった!反省してるから勘弁してくれ!」



くだらないことを話しつつ、昼食は一緒に食べていると、先程の魔眼について思い出し、それを二人に話す。



「ねぇ、これ見てほしいんだけど。」



そう言って髪をどけ、魔眼を二人に見せる。



「これ、明らかに魔法陣だと思うんだけど、二人はどう思う?」



「一部は途切れた感じだけど、僕もそんな気がするな。」



「あたしが前に見た時はこんなじゃなかったぞ、もっとただの斑点みたいな感じだったのに。」



「ねえそれ大丈夫なの?体調は悪くない?」



「体調は悪くはないけど、若干怖い。」



「レンはあまり動かないほうがいいんじゃない?様子を見たほうがいいよ、授業の内容は僕たちが教えるし、先生にもそう伝えといてあげるから。」



「けどあんまり休み過ぎてもダメじゃないか?レンだって剣術を練習する必要はあるだろ。」



「二人ともありがとう。体調が悪い時は休みをもらえるようにするから心配はないよ。」



二人の優しさが感じれて、二人と友達で良かったと思うと同時に、魔眼が本物だったとしても、絶対に制御して二人に危害を与えないようにすると誓った。



「じゃあ僕たちはそろそろ行くね。」



「んじゃ、また夜に来るわ。」



「え?夜?」



何を言っているんだジェシカは。貴族の生徒は基本的に学校に残ることは出来ない。大体の場合は家族は心配し、家に居させたい。また、学校に残らせる意味もなければそもそも残る場所がない。



「いや、ジェシカは夜残れないでしょ。」



「ん?家族と先生に許可もらってるから残れるぞ、今日はお前の部屋に泊まるから。」



「え?」



「僕は家族の許可取れなかったんだよな〜羨ましー」



「いや、でもいくらなんでも泊まる必要はないんじゃ…………」



「じゃあな〜」



バタン!



僕の話を聞かずに二人は授業に戻って行ってしまった。



「…………………えぇ?」



いきなりお泊まり宣言をジェシカにされる。実は一度も女子と二人きりで泊まるなんてことしたことないし、

特に気にしてるのは昨日の安全エリアでの出来事。ジェシカは僕の方を見てずっとにやけていたのを思い出した。



二人きりにされると何かされそうで別の意味で怖くなってくる。その感情を誤魔化すように手に持っていたパンを平らげ、本棚にある本を取る。



「本でも読むか………」



そして手に取った本を読もうと表紙を見ると



『ドキドキ!女の子との付き合い方徹底解説!』



「…………っっっっなんでこんな本があるんだよ………」



本にジェシカを意識させられる。どうせ何もないと、そう思ってはいるが、何か間違いがあるのではとそんな事を考えては忘れようとするを繰り返してしまう。誤魔化すように魔術書を読みそんなことを忘れてかけていた時、遂に時が来てしまった。



ガタン! ガチャガチャガチャガチャ!!



玄関の扉から音がし、急いで扉に向かい鍵を開ける。



「おっ開いた、泊まりに来たぞ。」



「次やったら出禁にするって言ったよね?出禁にされたいならしてあげるけど。」



「ごめんって、今日はもう帰れないから泊まれなかったらやばいんだよ。」



「………まあいいや、入りなよ。」



本当に貴族か疑う行動に呆れるが、とりあえず中に入れる。部屋に入れるなり、真っ先に寝室を覗く。



「へぇー寮の部屋ってこんな感じなんだな。すっげぇ地味!」



「そんなに出て行きたいならいつでも出て行ってもいいけど。」



「冗談だってば、そんなにあたしと居たくないのかよ。」



「………別に居てもいいけどさ、あんまり変なことしないでよ。」



ジェシカと話していると、ジェシカはベッドの下を覗いていた。



「なぁ、えっちな本隠してないの?」



「あるわけないでしょ。」



ジェシカの様子を見ると、意識しているのが馬鹿らしくなっていた。きっと何も起きない。そう思っていた時。



「んじゃ漁り終えたし、風呂でも入るわ。風呂場どこだ?」



「んぁ!?……えっと、目の前のそこだよ。」



やらかした。ジェシカが風呂に入ることを特に考えてなくて、思わず反応してしまった。目の前でこんな反応をすればきっと…………



「ん?レン、もしかしてあたしが風呂入るとこ想像しちゃった?想像するのはいいけど覗くなよぉ?」



「想像してないから!やめてくれる!?」



「嘘つくなよ〜あ、下着も盗るなよ。」



「盗らないし入るならさっさと入ってくれる…………?」



「はいはい、行ってきまーす♪」



特に意識することなんて今までなかった。きっとジェシカは僕のことをなんとも思っていないはずなのに、自分が一方的に意識しているのが余計に自分を恥ずかしくさせる。



「どうしちゃったんだろ僕……………」



鏡を見ずとも自分の顔が真っ赤になっていることが分かった。そもそも貴族と庶民が付き合うなんてことは出来ない。何かの気の間違いに違いない。僕はそれを忘れようと魔術書を読む。



ジェシカもこの時同じように意識していたことなんか僕は知る由もなかった。



「流石にちょっとやり過ぎたかな…嫌われてなきゃいいけど……」



少しからかい過ぎた事を後悔し、シャワーの音が聞こえなくなるほどレンの慌てた表情を思い浮かべる。顔は髪で隠れ完全には見えないが、容易く想像ができ、そしてレンと泊まるという状況に緊張してしまっている。



ふたりきりで泊まることなど、学園に入るまでは絶対に起こり得なかった事で、泊まる事を許されたのも昔仲が良かったレンだからこそ許された。



自分がレンを好きなことは気付いているし、すぐにでも付き合いたいと思っているが、自分が貴族でレンは庶民。自分と一緒にいることでレンに迷惑をかけてしまいそうで、踏み出せずにいる。



自分が告白をすれば成功するかもしれない。でも、振られた時を考えると今まで通り友達でいれる自信がない。



ずっとそんなことを考えると扉の方から声が聞こえてきた



「ジェシカ……?もう一時間は経ったけど大丈夫……?のぼせたりしてない?」



「あぁ悪い、今から出る。」



「えっ今から!?ごめん!!」



慌てて離れて行く音が聞こえ、ジェシカ風呂から出る。着替えている時、レンとはいつかきっと付き合える。今はまだ友達としての時間を楽しもうとそう決め、レンのもとに向かった。



「おい、ずっと風呂覗いてたんだろ〜!感想聞かせろ〜!」



「覗いてないってば!!」



ずっとレンをからかい続けていると、いずれレンが疲れて眠ってしまう。その寝顔は幼い子供のように見えるが、それはジェシカにとっては魅力的だった。レンを起こさないように、小声で想いを伝える。



「ずっと、大好きだから。」

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