緊急事態
他の生徒たちが来るのを待っている間、僕は少し気になることがあった。
(レーネ先生、ずっと僕を見てきてるんだよな……)
レーネ先生の視線の先には間違いなく僕がいる。それもかなりの間、その目は警戒し、睨むように見てくる。
僕がレーネ先生に睨まれている間、カイルはジェシカの機嫌を直そうとしていた。
「今度レンとジェシカの家で遊ぼ?ほら………………」
「本当か!?いいか、約束だからな!忘れるなよ!!」
途中聞き取れない部分はあったけど、ジェシカは機嫌を直した様子だった。ただ、不安になるのがその直後に僕の方を見て不気味に笑っているところだった。
「ふへへ…………」
(なんかみんな僕の方を見てくるんだけど……!)
他の生徒たちが来るまで僕はレーネ先生とジェシカからずっと見られたままで全く休めた気がしなかった。
「それじゃ今度はさらに奥に入る。さっきとは違って少々危険になるため、基本的に我々教師が監視のもと進んでいく。少しでも危険と判断した場合はすぐに撤退、それが不可能ならば教師が介入する。それ以外は自力でどうにかしろ。」
レーネ先生のその言葉に僕たちは気を引き締め、ダンジョンの奥に進む準備をしている時だった。
「お前たちの監視は私が行うからな。魔術のカイルに剣術のジェシカがいるんだ、是非とも私にその実力を見せてくれよ?」
準備をしている僕たちに向かって放たれた言葉。カイルとジェシカの実力が見たいという風に言ってはいるが、間違いなく僕の監視も含めている。
(もしかして魔眼のことバレてるのかな………)
魔眼の事がバレており、隠している理由がやましい理由だと思われているのかもしれない。そう考えながらダンジョンの奥に進んでいった。
ダンジョンの奥に進むと出てくるモンスターも変わっていく、スライムの色は水色から赤色に変わり、火の魔術が効かなくなっている。また、ゴブリンも出てきた。
「うっわぁ……急に血生臭ぇ………」
「気持ち悪い………」
スライムが砕け散り、その残骸が僕とジェシカの服に付く、それはゴブリンから出てくる血も同様だった。
ゴブリンを斬りつけた際に血が服に付いてしまう。
「しばらく僕たちが魔術で倒してから進もっか……」
カイルのその言葉は僕やジェシカにとっては救いの言葉だった。
カイルとグリウェンが魔術でスライムやゴブリンを倒していく。
「おい、ちょっと待て。」
突然レーネ先生が僕たちの行動を止める。
「どうしたんですか?」
グリウェンがそう聞くと、レーネ先生は
「急にモンスターの残骸が増えている。気を付けろ、何かいるかもしれん。」
「何か、ってなんすか……」
「大体はオークだろうが、もしかしたらドラゴンが出てくるかもな?」
そう言われより一層気が引き締まる。
すると、突然重い足音が聞こえてきた。
「この足音……オークだな。基本は撤退するべきだが私もいる。それにお前たちなら勝てるだろう。」
「はぁ!?基本は撤退ってそんなやつと戦うんすか!?」
グリウェンがレーネ先生の言う事に驚いていると、重い足音を鳴らしていたオークが僕たちに姿を見せる。
「ほら戦ってみろ。」
レーネ先生のその言葉を聞いて、攻撃を開始する。
カイルが火の魔術をオークに目掛けて放つも、それはオークの肌に当たっただけで、オークにまるで効いていない。攻撃を受け、オークは暴れ出す。
「全然効かない……!やっぱり下級魔法じゃダメか…………」
「あたしとレンは無理に近づけれない!」
「少しでも動きが止まればいいんだけどね………」
「それならこれはどうかな………!」
そう言うとカイルは魔術の詠唱を始める。オークはそれに気付き、詠唱を止めようとするが、オークの足下に雷が飛ぶ。
「そう簡単に行かせると思うなよ!」
グリウェンがオークの邪魔をし、時間を稼ぐ。そして魔術の詠唱が終わる。
「みんな!気をつけて!!」
カイルがそう言うとオークに向かって火炎が飛び、オークの全身が炎を浴びるが、倒しきれない。
「これでも倒せないの!?」
「足止めご苦労様!!」
魔術を受け動きが止まっているところをジェシカは見逃さなかった。すぐさまオークを斬りつけ、オークに動く隙を与えず。オークにとどめを刺した。
(僕何もできなかったな……)
自分が何もできなかったことに不甲斐なさを感じていたとき。倒したオークの方から気配を感じる。
「……!?オークが他に来る!!それに複数!!」
突然感じた気配。姿が見えたわけではなかったが、気のせいであるとは思えなかった。徐々に足音が聞こえ出す。
「ふむ……お前ら!一回撤退だ!下がれ!!」
レーネ先生に言われ全員すぐに撤退をする。撤退する際に後ろを見ると、オークが複数やってきていた。
「あぶな………あのままあの場所にいたら流石にやばかったかも……」
「レン、なんでオーク達が来るって分かったんだ?足音は聞こえなかったんだが。」
「自分でもあまり………でも、何となく気配みたいなのが感じたんだ。」
そう話していたときだった。
「……っっっっっっっ!?」
「レン!?」
突然左目に痛みが走る。あまりの痛さに思わず手を被せてしまった。
「は!?おいレン、どうした!?」
グリウェンは原因不明の出来事に理解が追いつかない様子だったが。他のみんなはすぐに原因を理解した様子だった。
「レン!!大丈夫!?」
「おい!しっかりしろ!」
「至きゅ………人だ!…する!繰り返………」
みんなが動揺し、慌てている姿、先生が通信魔術で連絡しているところで僕の意識は途切れてしまった。
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