再開
「まじでレーネ先生厳しすぎるだろ…………」
「体がだるい………」
一週間が過ぎ、今日も午前の授業を終えていつものようにグリウェンと授業について愚痴をこぼしながら食堂に向かっていると、後ろからレーネ先生がやってきた。
「おいグリウェン……昨日の課題がまだ提出されていないんだが……?」
「えっ!?レーネ先生なんで!?ちょっと!服掴むのやめてください!」
「貴様が課題を提出したらやめてやる。」
そう言って抵抗するグリウェンの服を掴んでどこかへ連れて行ってしまったレーネ先生。
「グリウェンがいないと一人ぼっちなんだけどな………」
一人になってしまった。
グリウェンが課題を提出していないことに少し恨みながらも連れて行かれてしまったものは仕方がない。今日は一人で食べようと食堂に向かっていると、突然話しかけられた。
「ねえ。」
咄嗟に後ろを向くと、そこには前に校門で見た金髪の女子貴族生徒が立っていた。
「何ですか……?」
と返事をすると彼女は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに元に戻る。そして僕にとっては一番嫌な質問をしてきた。
「君の左目、見せてくれない?」
「なんで、嫌だよ」
その問いかけに僕は動揺してしまった。彼女の質問に露骨に嫌な反応をしてしまい、それを見た彼女は何故か笑みを浮かべる。
「いいだろ!見せてくれたって減るもんじゃないんだし。」
「僕が嫌だから見せたくないって言ってるんでしょ!」
僕がそうやって拒否し続けると、痺れを切らしたのか彼女は無理矢理見ようとしてくる。
彼女の肩くらいの身長だった僕は、力で勝てずに徐々に押され、最終的に床に押し倒された。
僕の左目は髪で隠していたが、床に押し倒された衝撃で目が見えてしまう。
咄嗟に手で隠そうとするも、彼女に強く腕を抑えられ動かすことが出来なかった。
彼女は僕の魔眼を見て少し驚いた表情をする。
「だから嫌だったんだ…………」
怒りで愚痴をこぼしてしまう。すると彼女は驚いた表情から変わって、嬉しそうな表情なのに、涙を浮かべていた。
「やっと会えた…………」
「はぁ?いいから早くどいてよ」
「えっあっごめんっ!」
僕は彼女のその言葉の意味を理解できず、ずっと押し倒されたままでいることへの苛立ちもあり強い口調で返してしまう。彼女は僕が怒っているのに気がついて、謝りながら僕から離れた。
「いきなり何?そんなに庶民のことが嫌いなの?」
「そういうつもりじゃ…確認しようと思っただけで……」
怒りながら何故こんなことをしたのかを聞くが、返ってきた理由に納得することが出来なかった。髪は崩れ隠しきれていない左目。それに気付くこともなく、僕は彼女を問い詰めようとした時だった。
「本当にレンか確認しようとしたんだよ!!」
僕が喋ろうとした時にそう言われ、僕の頭は混乱する。何故自分の名前を知っているのか、自分の教室には彼女はいなかった。彼女が知っているはずのない名前を呼ばれ、僕が混乱している時に彼女はさらに話す。
「あたしの事、覚えてないのか……?」
悲しそうに僕へ問いかけるその言葉を聞いた時、消えかけていた記憶が蘇る。
「ジェシカ……?」
そう呟くと、彼女は嬉しそうにし、僕に抱きついてくる。
「そうだよ…久しぶり、レン……」
ジェシカは声を震わせ、僕を強く、さらに強く抱きしめる。僕が離れるのを嫌がるように。
「ちょっと……苦しいんだけど……離してくれない?」
「絶対にやだ」
「ちょっと……いつまでそうしてるつもり?」
僕が離してくれと頼むたび、力強く抱きしめるジェシカ。数分経ってようやく離してくれた。
「気づかなかったよ……昔は身長同じくらいだったのに」
「あたし達も一瞬分からなかったんだ。でも、お前の友達がレンって呼んでるの聞いて、それでもしかしたらって思って。」
「いくらなんでも強引すぎるけどね……普通に僕か聞けばいいじゃん。」
「それはそうだけど、その……焦ってあんまり考えてなかった……」
「普通に僕かどうか聞いてくれれば僕は床に押し倒されることはなかったし、たまたま人が通ってなかったからいいけど、もしかしたら僕の魔眼が他の人にも見られてたのかもしれないんだよ?」
「ごめんなさい……」
昔は前を向いて話していたのに、今は上を向かないと顔が見れない。成長した姿だけど、落ち込んでる顔を見ると、昔とあまり変わらない。
「まあ見られてないからいいよ。ちょっと言い過ぎた、ごめんね。お詫びに良かったら一緒にご飯食べない?」
「食べる!」
こうしてジェシカと共に食堂へと向かい、昼食を食べている時
「ジェシカ!やっと見つけたよ、どこにいたの………」
僕を見て言葉を失う銀髪の男子貴族生徒。
彼はジェシカと違って身長以外は昔と容姿はあまり変わっていなかったからすぐに分かった。
「カイル、久しぶり。」
「あぁ……久しぶりだね……」
他の人もいるため抱きしめるのを我慢しているカイル。ジェシカとの出来事も話すとカイルはジェシカを注意した。
「二人して怒らなくてもいいじゃん!久しぶりに会ったんだから仕方ないだろ!」
ジェシカが不服そうにそう言っている最中、カイルはあることに気づく。
「ちょっとレン、左目が隠しきれてないよ!」
髪は崩れたままでレンの魔眼が髪の隙間から覗かせていた。それと同時にレンの目の周りに黒い痕が出来ていることにも。
「レン……それ大丈夫なの?なんか昔より酷くなってる気がする……。」
「あたしも思った。昔は目の周りに痕なんてなかったぞ。」
「大丈夫だよ。痛みはないし、きっと時間が経てば無くなるよ。」
二人の心配する言葉にレンはそう返すが、二人の不安が消えることはなかった。
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