【6】運命の月⑤
「ぐっ!!」
肩の痛みに顔を顰めるが、視線は銃口から離さない。いや、離せない…!
「逃げられたら諦めると思ったかぁ〜?」
「残念でした〜!逃しませ〜ん!」
「泥を浴びせやがって!許さん!」
顔の泥を拭いながら近づいて来る誘拐犯達。
駄目だ…。銃を封殺する術が無い…。
桜花は…気絶しているのか倒れている…。
「おい、こいつどーするよ?」
「謝罪させよーぜ!」
「回りくどい事はいらん。殺せ。」
「だな。」
「正義漢ぶって出てきたらこうなるんだよ雑魚。」
「生まれ変わったら今回の反省をするんだなぁ!」
「あばよ、クソガキ。」
もう駄目なのか…?
せめて最後に桜花だけでもこの場から逃したい…。
何か…!
ふと鞄の中から飛び出した荷物の一つに目が止まる。
神の名を持つ人形…
…仮にも神を名乗るなら!この窮地を覆してくれ!
「…ツクヨミ…」
「あん?遺言か?」
銃を持った男が引き金に手を掛けて、こちらの頭を狙う。
「…月読ぃ!」
俺は死への恐怖を振り払うかのように人形の名前を叫ぶ。
(パァンッ!)
鳴り響く銃声。
飛び散る血飛沫。
しかし痛みは無い。
「ぎ、ぎゃああああああああ!お、俺の腕がぁあぁあ!」
銃を持っていた男の苦悶に満ちた叫び声が辺りに響き渡る。
「な、なんだコイツ!」
「どこから現れた!?」
残り2人の困惑の声もする。
俺は恐る恐る目を開ける。
そこには…
木箱の中に入っていた人形と同じ姿をした者が誘拐犯3人と俺との間に立っていた…。