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断罪者 零 〜月光の機神〜  作者: 佐脇(吐血)
第一章:月の覚醒
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【5】運命の月④


「ツクヨミノミコト…?」

「ええ。天照皇大神(アマテラス)素戔嗚命(スサノヲ)の兄弟神です。まあこの2日柱に比べると少し知名度は低いから君が知らないのも無理は無いです。」

神様の名前とかに疎い自分はへぇ。と言う言葉しか出ない。

「これは絡繰人形なのですか?」

「ええ、実は先祖が人形技師だったみたいで…」

「ほう!それはそれは…!これは歴史的に価値がありそうです。大事に扱って下さいね。」


沈みかけの太陽が周囲を赤く染める中を、俺は歩いていた。

「ツクヨミ…か…。」

改めて木箱の人形の名前を呟く。

他の人形とは別の場所に祀られるかのように保管されていたのは神を模した人形だったからだろう。

でも…何故装甲を纏ったような姿なのだろう。

考えてもそれはわからない…。

『…っ!!…っ!?』

ん?

突如どこかからくぐもったような叫び声が聞こえる。

今自分が歩いている所は水田と農業用倉庫がまばらにあるだけで、今の時間は人通りが非常に少ない所だ。

…これは最近この辺りで出没する誘拐事件に遭遇したのか?

辺りを見回し、怪しい所は無いか確認する。

「…ん…あそこかな…」

少し離れた場所にある大きい倉庫前の農道に黒い車が止まっており、その近くに数人の人影があるのを確認した。


『ん〜!ん〜!』

『コラ、大人しくしろ!』

『おい、早く手を拘束しろ!』

『やってるって!痛っ!暴れるな!』

『んーっ!んーっ!』


当たりだ。

警察を呼ぶか…いや、到着前に去られてしまったら事件の解決が遅くなるだけだ…。

車のナンバーを確認してからだな…。

足音を立てないように水田の畦を通り近づいて車の側面に回る。

その時…拘束されている人の顔が見えた…。


…っ!!桜花!!?

そう、幼馴染みだった。

顔は恐怖で歪んでいるが必死に抵抗している。だが、体格が良い3人の男に押さえつけられては無駄な足掻きだろう。

どうする…っ!?

一瞬だけ躊躇したが既に身体は動いていた。


「桜花から離れろ!!」(ドッ!!)

「んだっ!!?」「むぐっ!?」

こちらに背中を向けていた男に盛大にタックルをかます。

突然の事に男は前に盛大に倒れた。

「誰だこのガキっ!」

残り2人は慌てて桜花を押さえつけていた手を離し、俺から距離を取る。

俺は素早く桜花に倒れ込んだ男の脇腹を蹴り、桜花の上から退かした。

男は痛そうに脇腹を抱えながら立ち上がる。

「なんだよクソガキ。俺らの邪魔すんじゃねーよ。」

「お、お前らが桜花を拐おうとしていたから阻止しただけだ!」

興奮しているためか発する言葉が震えている。

俺は何とか背中側に桜花を隠してジリジリと男達から距離を取る。

「た、タケル!」

口のテープを剥がした桜花が話しかけてきた。

「桜花、走って逃げろ。」

「タケルも一緒に!!」

「俺が引きつけるから!早くっ!!」

少し語気を強くし、桜花が早く去るように促す。

彼女は怯えたような顔をしながら走り出した。


「舐めてんのかぁ?」

「許さんぞガキがぁ…」

騎士(ナイト)気取りかよ!ハッ!」

誘拐犯3人組がそれぞれ威嚇してくる。

「…ほ、本当は俺も逃げたいんだよなぁ…」

桜花を逃したら興奮が収まり、今度は恐怖から言葉が震える。

「逃すかよ。お前ボコしてもう一回あの女を捕まえるんだよ。」

「デスヨネー」

世の中甘くないよね。

なら…

「逃げるまで!」

俺はずっと閉じていた手を開き相手側に払う。

(ビシャッ!!)

「な、何だ!?前が見えねぇ!」

「あのガキ何をしやがった!?」

「く、くさぁ!!」

……手に握っていた水田の泥を目潰しとして投げただけです。

この隙に…っ!

俺は男達に背を向けて桜花が走った方へ走り出した。

桜花が安堵したように振り返りながら走っている。

…後はどこかに身を隠して…!

しかし、桜花の顔が安堵から再び恐怖に変わった。


(パァン!)


肩に強烈な痛みが走る。

赤い血飛沫。

肩紐が切れて落ちる鞄。

地面に落ちて鞄の中身が散乱する。

地面に倒れ込む俺。

な、なんだ…?何が…!?

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ち、かすっただけかよ。」


声がした方向に顔を向けるとそこには硝煙を吐き出す銃を持った男が立っていた。


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