【4】運命の月③
暗闇から誰かの声が聞こえる。
誰だ?何と言っている?
微かに聞こえてくる声に耳を傾ける。
『…殿の……に大………の魂……つ者………る。
そ……は光と闇………す……なり。貴…に…神…模……機…人形…………命………。』
駄目だ。所々聞こえない。
もっと近寄らないと…。
『貴殿…作……人形……神仏の……が宿り……者の力…………ろう。』
まだ遠い。
早くしないと会話が終わってしまう…!
目が覚めた。
「ここは…?自分の部屋か…。」
何か夢を見ていた気がするが、思い出そうとしても思い出せない。
「思い出せないという事は、大した夢では無かったって事だな。」
「何をぶつぶつ呟いてるんじゃ。」
「爺!?勝手に部屋に入るなよ!」
「そうは言うがお前…もう登校時間じゃぞ?」
祖父にそう言われて時計を確認すると8時…
「…ヤベェェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「うるさいわ」
あの後急いで支度を済ませ、通学路を全力疾走をしたため何とか遅刻にはならずに済んだが、疲労が凄くて全ての授業の大半は眠っていた…。
HR後、昨日の箱を古文の教師に見てもらうべく職員室へ向かっていた。
あの教師でもこの字を読めるのかな…?
「タケル〜!どこ行くの〜?一緒に帰ろうよ〜」
桜花が自身の教室から顔を出してこちらに声を掛けてくる。
「悪い、古文の……(あの教師何て名前だっけ?)…先生に見てもらう物があるんだ。
先に帰っててくれ!」
「ええ〜…」
桜花は明らかに私は不満ですという顔をする。
すると周りの男連中が…
『あんな奴より僕と帰りましょうよ!』
『あんなブサイクよりこの俺と帰った方が充実だぜ?』
『汝、我と共に夕陽に祝福されし運命の巣へ帰らん!』
『オレ オマエ ト カエル コレハ ケッテイジコウ。』
…この学校にはアホしかいないのか?
裏から聞こえてくる馬鹿らしい会話は無視して俺は職員室へ向かった。
『八十神先生なら図書準備室にいるはずだ。』
職員室にて古文の教師の所在を尋ねたら別棟のにいるという。
「あの先生、八十神っていうんだ…」
と軽く呟きながら図書準備室の戸を開ける。
「すいませ〜ん…八十神先生いらっしゃいますでしょうか〜?」
「はい、何でしょう?ええと…山本剛君だったかな?」
「実は見てもらいたい物がありまして…」
「?何でしょう?」
そう言って俺は鞄から例の木箱を取り出し、先生に差し出す。
「おお!歴史を感じさせる木箱ですね!」
目の前の初老の男性の目つきが変わった。
「昨日、自宅の蔵で発見したんですが…何と読むのでしょう?」
「ん〜?きこう…?最初の方は分かりませんが、最後の4文字なら分かりますよ。【ツクヨミノミコトノカミ】つまり天照皇大神の兄弟の月読命の事ですね。」