【2】運命の月①
「遅いわぁ!」(スパーンッ!)
「いってえ!?」
帰宅早々祖父に孫の手で頭を叩かれた。
「早よ帰って来い言うたのに、桜花ちゃんと楽しそうに帰って来やがって…この馬鹿孫が、妬ましい、妬ましい…」
あの怨嗟の視線の中にはこの阿呆爺のも含まれていたらしい…。
「…まあ良い。」
良くねぇよ。
「さっさと蔵を掃除するぞ。人形様達を綺麗にしないとバチが当たってしまうからの。」
俺の家の庭先には古い大きな蔵があり、その中には沢山の絡繰人形が納められている。
どうもご先祖様は絡繰人形を作ったりする人だったらしい。
「お前は真ん中から奥を掃除せい。ワシは手前の方をやる。」
「えぇ…奥とか埃っぽいから嫌なんだが。」
「遅れた罰じゃ。」
そう言って祖父は掃除道具を渡してきた。
「くたばれ爺。(ボソッ)」
「聞こえとるわクソ孫。」(バッシーンッ!)
「痛ひ!?」
悪態をついたらホウキの柄で弁慶の泣き所を思いっきり叩かれた。
渋々掃除道具を受け取り、奥へと足を向かわせ…(バキィ)
「剛、言い忘れてたが、床板古くて抜けやすいから気を付けろy…遅かったか。」
「先に言えよぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!」
そして、俺は落下したのだった…。
「痛たたた…。」
頑張って受け身を取ったため大きな怪我はないようだ。
「馬鹿孫〜、大丈夫か〜?1+1は?」
「なめてんのか!!怪我の心配をしろよ!
…ん?」
上から馬鹿にしてくる祖父に文句を言いながら身体を起こすと、自分のいる所が床下なのに広い空間だと気付いた。
そして奥に何か台座があるように見える。
しかし、暗くてよく見えない…。
「どうした〜?」
「爺さん、明かりくれ!暗い!」
「ちょい待っとれ。取ってくるわい。」
数分後祖父が寄越してきた懐中電灯で部屋のおくを照らす。
やはり台座があり、その周りは何かを祀るかのように縄で囲まれている。
近づいて確認すると、台座の上に木箱が置いてある。
「何だ?呪いの道具なのか?」
木箱を手に取りじっくり眺める。
箱の表面には【機巧神型人形 月読命神】
と記されていた。