【11】危機への転換
鉄パイプを握りしめて大きく振りかぶった敵がツクヨミに突撃をかましてきたが、装甲に傷は無い。
逆にツクヨミを叩いたヤクザの手が痺れているようだ。その隙を見逃さずにツクヨミの拳を鳩尾にいれる。勿論死なないように加減をして。
次々と敵がツクヨミに向かってくるのでどんどん返り討ちにしていく。
しかし、突如その状況は一変する。
「単細胞共!無闇に突撃して死体の山を築き上てんじゃねぇ!」
…殺してません。
と心の中で呟きながらコンテナの陰から声の主を見る。
黒い髪を腰辺りまで伸ばしており、目つきは鋭く猛禽類を彷彿させるほどギラついている。肌の色は病的に白いが、どう見ても虚弱ではない若い男が立っていた。
「すいやせん!因幡特攻隊長!」
口々に周りのヤクザ達が尊敬と畏怖の入り混じった声を上げる。
「ったく…どう見てもソイツは人間じゃねぇだろぉ?」
「へ?」
「常日頃から言ってるだろぉ?相手の様子を見てから特攻かませってよぉ、この単細胞!」
「は、はい!」
「コイツは機械人形といった所かぁ…ならよぉ…何処かに操縦者が隠れているって事だろぅ?」
「あ」
「っ本当にお前らは救いようのない単細胞だなぁ…で、操縦者さんよぉ、そこにいるんだろぉ?」
部下に呆れていた後、急に表情を鋭くしてこちらを見る因幡という男。
…なぜバレた!?
いやカマを掛けただけか…?
「こっちも部下をやられてるんだぁ…出てきてくんねぇかぁ?勿論逃げれると思うんじゃねぇぞぉ…」
…ハッタリだと思うがいつまでもここにいるのはまずい気がする。
物音を立てないように細心の注意を払いながら立ち上がりこの場所から離れる。
「…はぁ。」
因幡は溜息を吐き、手に持っていた刀を鞘から抜く。
「逃がさねぇって言ってんだろぉ!!」
因幡はそう叫んだ後、目にも止まらぬ速さで俺が先程まで隠れていたコンテナとの距離を詰め、刀を頭上まで振りかぶった後勢いよく振り下ろした。
(ギィィィィィィン)
金属と金属がぶつかる不快な音が辺りに響く。
咄嗟に耳を塞いだがあまり効果は無く、足が止まる。
更にコンテナがダンプカー並みにこちらに突っ込んでくる。
ヤバイ!
咄嗟に向かってくるコンテナと反対側に位置するコンテナとコンテナの隙間に逃げ込み衝突の難から逃れる。
(ドオォォォヲン)
突っ込んできたコンテナつコンテナが衝突し土煙が辺りに舞う。
…なんて人だ…!!?
先程の光景を思い出して身震いをする。
「よぉ、鼠ぃ…」
砂煙が舞う中から声が掛けられる。
その直後強い風が吹き砂煙が晴れる。
真っ二つになったコンテナと中の積荷が散乱する中央に因幡が立っていた。