四人の花嫁 8
「玉皇陛下の御ー成ーりー。御ー成ーり。」
階段の上に向かい全員が一礼し、まずは薄桃色の外套を纏った男が長い階段を登り始めた。
順序から考えて春家の者だろう。
次は夏家である自分、その後に秋家、冬家と続く。
階段を登りきった先には玉座があり、花嫁達はそこで額づき婚姻の口上を述べなければならない。
そして異議がなければ花婿自ら顔の薄布を外し、額に口づけることによって婚姻が成立するのだ。
春家の男が長ったらしい口上を述べている間、こっそりと観察する。
玉座の右に儀礼用の装飾が施された杖を持つ女官が一人、自分達と同じように薄布で顔を隠している。
そして左には男一人、官服の色からして宦官だろう。
肝心の皇は冠の飾りで顔がよく見えないものの、小柄でまるで少年のようだ。
とりあえず巨漢の熊でなかった事に胸を撫で下ろしているうちに、口上が終わる。
「春 雨滴、面を上げよ」
そう皇が告げ、薄布に手を伸ばした瞬間、春家の男が素早い動きで何かを振りかざした。
ぎらりと嫌な光を放つ、刃物。
慌てて駆け寄ろうとした瞬間、鈍い音がした。
それと同時に石畳に刃物が落ちる。
女官が儀礼用の杖で殴り落としたのだと、理解するまでに時間を要した。
男は素早く体制を整え次の攻撃を仕掛けようとするが、容赦なく女官が杖で男を打ち据える。
「捕らえよ!」
合図と共に控えていたであろう衛士達が男を囲む。
随分な手練れのようだが、数には勝てなかったようで抵抗を諦め捕縛された。
「暑い」
連行される男を見ながら、そう呟いた女官が顔の薄布を外す。
彼女の瞳はとても綺麗な琥珀色をしていた。




