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かつて希望だった者、今は災厄な物  作者: 奈月四季
一章『辿り着いた世界』
5/7

異世界は変わっていた

 『さてと、続いてこの世界で生きていくための基礎知識などを教えますね』

 「はい、お願いします」


 先程の暗い雰囲気をどうにかしようとしたであろうやや明るめに言った、アーシェアに合わすように俺は返事をする。

 少し落ち込みかけた俺だが、こうすること少しばかりだが立ち直れたきがした。


 『まず、みんながいた世界との一番の違い、それは魔法などの物理法則を無視した力が存在すること』


 なるほど魔法か・・・ 男に生まれたからにはどこか避けて通れないようなロマンがある響だ。今は女の子だが。


 物理法則を無視、要は現実的に考えていてはダメだと言うわけだろうか? 


自分達が生きていた世界よりも頭を柔らかくし、臨機応変に対応していかなくては。だが、俺に魔法を使うことは難しそうだ。先程アーシェアが言ったことを俺は覚えている。『魔法適性を下げるため獣人へ』一見可愛くみえるこの耳と尻尾は力を使わせない枷としてここに存在している。

なぜ俺がここまでの代償を払わなければならなかったのか。今の俺には抑止力によるただのいじめのように感じ取ることしかできない。


 『次の違いは、秦ちゃんと美咲ちゃんはよく聞いておいた方がいいかもしれないわ』


 そう言われると男二人は背筋を伸ばし身構えた。恐らく男だけが呼ばれたと考えたのが妥当。俺は、まぁ見た目が女の子になったのではぶかれたのだろう。


 『この世界の男女比は女が五に対して男は一です。そのため、男に生まれた暁には優越されます』

 「へ?」


 耐えきれなくなった驚きが口から漏れてしまう。男性陣を見れば目が限界まで開かれているのがわかる。だが、俺が感じているのは別の驚き。いや、驚きではない。今までなんの才能にも恵まれなかった俺の人生。

そんな人生だったためか、俺は何ら目立たない複製と言うスキルを選んだはずだ。


なのに、目覚めた時にあったのは変わり果てた俺の姿。俺は密かに、誰かの命を救えるヒーローになりたかった。こんな歳でとても言えるようなことではない。だから、俺は自衛隊になろうと思った。そのために俺は毎日の苦労をかかせなかった。筋トレをし、勉学に勤しんできた。


そう、俺が憧れた男の中の男だったんだ。でも、今は違う。どこからどう見ても非力な一人の少女だ。恐らく鍛えあげてきた筋力はもうない。

だって、筋力を下げるために俺は女の子にされた。抑止力によって。この時点で筋力がったことが丸わかりである。それに追い打ちをかけるように告げられたのは男女比の違い。男性の優越だ。

この世界で男が優越と言うことは必然的に女は劣者になる。そんな世界で俺は少女になった。あまりにも皮肉が聞いた話だ。

でも、この思いは内に秘めて置くしかない。ただでさえ状況が大きく一変した今、感情任せに動いていては何も結果は得られない。だから、今は冷静に行動しなければならない。これ以上事態を悪化させないために。俺自身の精神を保つために。


そしてこのことは、少し余裕が出てきたら誰かに相談するとしよう。


 『そんな世界になった理由としては、まぁ割愛させて貰うわ』


 そんな俺の心情をよそに話は続く。


 『でも、そんな世界になったからかしら、女の子同士の性行為で子供ができるってこともみんなの世界と違うところね』

 「私達にそれって適応されてるの?」


 飛鳥が興味心身で聞く。出会った頃から薄々感じていたが、どことなく百合っ気を放っていた。恐らく顔の割に彼氏がいないのはこのためだろう。


 『あ、うん。そうだよ。その世界の基準に合わせて体が変化するから異世界からの召喚はあまり進められないんだけどね』


 飛鳥の食い気味な反応に少々引きながらアーシェアは答えた。


『その世界の基準に合わせて体が変化するから異世界からの召喚はあまり進められないんだけどね』


 それを聞いた飛鳥の顔はどこか嬉しそうだ。そしてその顔は凛音へと向けられている。


 「なんですか、飛鳥さん・・・ 怖いです」


 凛音はなんと言うか呆れ顔で飛鳥に言う。だが、飛鳥の見ている場所は変わらなかった。目が凛音をロックオンしている。飛鳥はどう考えても女の子が好きなお方なんだろう。


あんなのに見られたら一溜りもないな。


 『ま、まぁ、あそこは置いといて話を進めますね。こんなところで止まっていてもあれなので』 


 どうやらアーシェアは飛鳥に呆れてしまったらしく、放置したままに話を進めるらしい。


 「俺も同感」

 美咲にも見放された。


 「僕もそう思う」

 奏も見放した。


 それを聞いていたのであろう凛音もこちらを向き頷いている。なんて言うか、飛鳥がちょっと可哀想に思えてきたが、状況的に致し方がない。


 『あと、言う事とこの家についてですね』

 「この場所? どう見ても普通の家なのですが」

 『確かにそうよ蓮。でもねそうじゃない』


 普通の家だけどそうじゃない? 話が矛盾している。


 『家の中はあなた達が知っているような内装にしてあるわ。だけど外装は違うわ。実際のところあそこの扉を開けた先にあるのはそれなりに栄えた街よ』

 「と言う事はここは俺達がいるここって、街の中にある外見普通の家ってこと?」

 『そうそう。それに、空間も歪めてあるから見た目よりも広いと思う』


 なんかやりすぎ感がすごい様な気がする。空間を歪めるとかまさしく神のみわざだが、安易にそこまでしていいのだろうか・・・


 『実際のところ申し訳ないと思ってる。わざわざこんなところに連れて来てその上、体の自由も奪った。それに罪悪感がわかないわけがない。だからできる限りのバックアップをすると決めた。この家だって、机の上に置いてあるお金だって』

 「ん、お金?」

 『あそこにある袋がそうです』


 そういいながらアーシェアが指さした先にあるのは結構大きめの袋。恐らくあれがお金。そう考えれば相当な量があるような。


 「多くないですか?」

 『まぁね。五人で割ると言う形になるが、それでも当分は普通に暮らせるだけの額はあります。それに冷蔵庫の中にも当分は足りるだけの食材などが入っています』

 「いいんですか? そんなに」

 『大丈夫。この位じゃまだ足りないほど。だってあなた達は命をかけてここにたってくれているのだから』

 「ありがとうございます」


 俺は頭を下げながら感謝の気持ちを伝える。


 『別に感謝なんて。あとこの世界について困ったことがあったら言って下さいね。私はナビゲーションの係として、あなた達について行きますから。と、言ってもそんなに簡単に姿を表せれないので遠くからになりますが』 


 この世界にについて何かしらの知識を持っている人がいるだけで、どこか心強く感じた。


 「ならひとつ」

 美咲が問いかける。


 「まず、僕達はどうすればいいですか?」


 あたりまえの質問だった。何が起こるかなんて一切見えないこの先。それに一気に沢山の情報を伝えられた。とても、まともな判断ができるような状態ではない。


 『やっぱりまずは生活を安定させなければならない。いくらお金があると言ってもそれは有限。私的にはまずギルドへ行って冒険者登録をすることをおすすめします。あなた達の使命柄恐らくそれが一番あっていると思う』


 そしてアーシェアの考えも無難なものだった。冒険者になるという事は何かしらの戦いがつきものだと俺は思っている。そして俺たちは転生者を殺すためにここにいる。技を極めるにはちょうどいいと言うことだ。


 「そうだね。どうする?」

 美咲がみんなに向かって問いかける。


 「いいと思う」と秦が。


 「私も」と飛鳥が。凛音は頷く。


 「蓮は?」 

 「いいんじゃないか。俺的にはアーシェアの考えが妥当だと思う」


 みんなに同じく俺も賛成する。


 「決まり。善は急げ。準備が出来次第出発するからよろしく。あ、神様それってどこ?」

 『玄関を出た先から少し行けばもう街の大通りだから右に進めばあると思う。いかにもって建物があるから。あと、そこにあるお金は合計で百万ゴールドあるから、みんなで分けて一人二十万てところね』


 二十万? 


この世界の基準はわからないが、俺たちの世界から見れば相当な額だ。とても俺たちみたいな年齢の奴らが持つようなものでは無い。


 「そうですか、ありがとうございます」

 会釈しながら、美咲は言う。


『困った時はいつでも心の中で呼んでちょうだい。テレパシーで答えてあげるから』


「わかりました」

俺は軽く会釈した。


 さて、これから準備と言う感じかだろうか? ほんとさっきから流れに流され全く言えなかったことがある。やっと俺はこの状況から脱せるのだろう。


 「みんなは服来てるけどどこにあったの、それ?」


 そう、先程から俺は下着とパンツしか身につけていない状況だったのだ。起きてそうそう混乱し、致し方ないと思ってはいるが、今思い返すと恥ずかしいことをしたなと思う。俺は少女の見た目でそんなことをしていたのだ。

 

 「部屋にクローゼットなかった?」


 秦に言われ俺は部屋を頭に浮かべる。机に椅子、ベット・・・ あ、それらしいものが机の横にあったような気がする。


 「あったような・・・」

 「その中にあったと思う」

 「ありがとう。着替えてくるは」


 そう言いながら俺は階段へと向かう。が、俺の手は誰かの手によって掴まれていた。


 「蓮くん。女の子のことについて全く知らないでしょ?」


 俺の手を掴んでいたのは飛鳥だった。しかもかなりの力で。どうにか振り払おうとしたがビクともしない。

 こんなに力が弱くなってるのか? 


俺・・・ どうやろ状況は思っていたより深刻らしい。


 「大丈夫だよ」

 「いいから、行くわよ。凛音、ついてきて」

 流れに任せて飛鳥は凛音を呼ぶ。


 「はーい」

 「あと男性陣。お金の仕分けよろしく」

 「任せとけ」


 美咲が力強く返事をする。なんかこいつ楽しそうだな!?


 「さぁて、これから手取り足取り教えますからね。蓮ちゃん」

 「はい・・・」


 もう、どうにでもなれ。俺は心の中で諦めた。


 「さぁて仕分けしますか、秦」

 「おう」

 「アーシェアさん。お金の見方を教えて下さい」


こちらに笑顔で手を振る神様を横目に俺は連行されるのだった。

 

 

 

 

 

学生のため、なかなか書く時間を取ることが出来ないので、投稿頻度はかなりまばらです。

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