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かつて希望だった者、今は災厄な物  作者: 奈月四季
一章『辿り着いた世界』
4/7

性転換

 「お、美咲と秦じゃん」


 俺はそう言いながら二人の元へと駆け寄る。背が低くなったためか二人の背がやけに高く思える。

 その二人はと言うと口を開いたまま硬直している。


「えっと、どなたですか?」


 美咲が俺にわざわざ背を合わせて問いかけてくる。

 あぁ、そうだよな。今の俺は男の時とはあまりにも別人すぎた。


「えーと、俺は蓮だよ?」 

「いや、そんな訳はない。蓮は男だぞ。こんなに可愛くない」


 可愛い・・・


 自然な流れで可愛いとか言うなよ。褒められたような気になり少し照れる。まぁ、俺の見た目は可愛いらしい。

 だからこそだろうか、まだこの時点では俺が俺だとは判断しがたいか。これが当たり前っちゃ当たり前だ。そうなればお互いしか知りえないような秘密をここで暴露するしかない。二人には悪いが。


「本当にわからない? 俺が蓮って」

「うん」


 美咲は真面目な顔でそう告げる。


「じゃぁ」


 ならばと俺は二人の秘密を思い出す。


「周りには悟られないようにはしているが、美咲は実は結構な量のエロゲーやギャルゲーをもっている」

「え?」

「秦は今となっては黒髪の真面目そうな見た目だけど、実は中学校時代は髪を金色に染めて不良をしていた」

「う・・・」


 二人は顔を下に向けてフリーズする。数秒間の時を経て二人はゆっくりと顔を合わせる。


「なぁ、秦・・・」

「あぁ、そうだな美咲・・・」

「どうやらお前は蓮らしい。さすがにそこまで言われると信じざるおえない」


 どうやら二人は俺を蓮と認識してくれたらしい。


 二人にはちょっと悪いことをしたようなきもする。恐らくこの事実、美咲と秦はお互いで知りえないような秘密であっただろうに。なぜ、俺だけにそんな秘密をこの二人は打ち明けたのか? 恐らく見ていればわかる。


「あはは、え? 美咲ってエロゲとか持ってんの。あははは」


 秦が美咲に指をさしながら笑う。


「うるさい! いいだろ、男なんだから。そういうの持ってたって」

「いや、だって。あはは」

「はぁ、秦だって中学校時代不良だったんだって? わざわざ髪まで金髪に染めて。何が真面目キャラだ。どうしたんですか急に? 喧嘩でもして負けましたか?」

「あ?」


 まぁ、こんな訳だ。


 この二人いつもは本当に仲がいいがこんなふうに自らをいじられると少々ムキになってしまう性格なのだ。どうやってもそこだけは噛み合わない。


 数分が経過した。


 あれから俺は二人の喧嘩をなだめたりと色々あった。起きてすぐなのか、それともこの体になって体が気持ちについて来れてないせいかわからないがかなり疲れた。


「はぁ」


 そんな俺は可愛らしい声でため息を一つ。

 まぁ、この喧嘩の引き金となったのは俺だ。だが、これは俺が蓮だと言うことを信じさせるため。不可抗力だ。うん、しょうがない・・・ 訳がない。

 一人ずつに言っていってトラブルを避けることもできたはず。いきなりのことが起きたせいで冷静な判断が出来なかった。

 だが、過去に起きたことはもう取り返し用がない。今と向き合うことが最善の手だ。


 結局のところ俺が悪かったと言うことで、仲直りさせることができた。


 俺と美咲、秦の三人は今一階にあるリビングにいる。どうやらここはどこかにある一軒家のようで俺が寝ていた場所は二階らしい。今のところ俺たち以外は誰も見なかった。


「で、どうして蓮はそんな姿になったわけ?」


 美咲が椅子に腰掛けながら問いかける。


「正直俺にはわからない。ただある程度予想はつく、俺的には恐らく神が言っていた抑止力のせいだと思う」

「まぁ、それが一番無難な考え方だな」


 秦が壁にもたれかかりながら相槌を加える。


 俺に抑止力が働いた。複製程度のスキルで体全てが変貌するような抑止力による代償が働いたのであれば、俺より勝っていそうなスキルを持つ皆はどうなっているのだろうか? 見た感じ何も変わりないようだが。


「なぁ、二人とも」


 俺は二人に問いかける。


「どこか体でおかしなところはない?」 

「僕はないよ」

「そうか、ならよかった」


 現時点で秦はないらしい。銃火器の創造とかという明らかに強そうなスキルだったため、絶対何かありそうと思っていたがどうやらそれは違ったらしい。そうなると基準がわからなくなる。

 なぜ創造より複製の方が代償がでかい。まぁ、こうなったのにはきっと理由があるはずだと信じている。


「美咲は?」 

「俺は・・・あるかもしれない」

「え、どこか悪いとこある?」


 見た感じどこも悪そうな感じではない。だが、自分のことは自分が一番わかっているだろうし俺からは何も言えない。


「さっきからずっと左目が見えないんだ。多分、失明したんだと思う」 

「そうか・・・」


 それしか俺は言えなかった。体全てが変わるという代償を受けたが、それでも俺は五体満足でここにたっている。


「大丈夫か? 美咲」

「あぁ、大丈夫。右目だけでもある程度の視覚が確保できるし、逆に片目だけで済んだことが不幸中の幸い。わざわざ、心配してくれてありがとうな。秦」

「いいんだ。こっちはなんの代償も受けていないことにどこか罪悪感を感じただけだから」


 いつもはこう、仲がいいんだけどなぁ。まぁ、逆にいつもこんな感じじゃ気持ち悪いような気もするが。


 そんなことを考えていると階段から音が聞こえる。音のテンポ的に二人。恐らくは飛鳥と凛音だろう。案の定降りてきたのはその二人。


「おはようでいいのかな? おはよう凛音さんと飛鳥さん」


 美咲が階段の方をむく。


「おはようみんな」


 飛鳥がそういいながら階段から降りてくる。


「おはようございます。皆さん!」


 それに続くように凛音が降りてくる。


「ん? そこにいる可愛いけも耳美少女はどなた?」 


 どうやら、飛鳥は俺はすぐに気づいたらしい。


「おはよう、飛鳥。えっと・・・蓮です」

「え、蓮くん? いやいや蓮くんはそんなに可愛いくない」


 みんな揃いも揃って俺のことを可愛いと言う。


「それが、ほんとに蓮なんだよ」


 美咲がとっさにフォローする。ありがたい。


「どうして?」 

「それは・・・ お互いでしか知らないような秘密を知っていたから」

「へぇー、その秘密って?」

「なんでも、いいだろ」


 そんなことを言いながら飛鳥は美咲へと近づく。そんないつもの他愛ない光景を俺は眺めていた。


「あ・・・」


 そんな時俺は気づいてしまった。


「飛鳥、左腕・・・」


 飛鳥の肩から下の腕がなかった。


「蓮くんとしておこうか。私の名前を覚えてるし。全く声まで可愛くなっちゃって」


 どうやらいくらかは信じてくれたらしい。


「大丈夫なの?」

「大丈夫ではないかな。昨日の夢のようなものが本当なら治るって言われたし、それを信じてみようよ思って」

「そうか、治るといいな」

「うん、ありがとう」


 そう言いながら飛鳥はこっちに笑いかけた。


 この異常な状況から見て夢のような出来事だと言うことはほぼ確信に近い。


 その時だった。


 『治りますよ』


 どこからともなく、この場にいる人ではない声が聞こえてくた。


「誰?」


 問いかけると階段から、足音が聞こえてくる。この場にいる人以外にこの家には誰かいるというのか。姿が見える。白を基調としたドレスのような服に青く長い髪。


「アーシェアさん」


 先程まで特に何も話さなかった凛音が声をあげる。


 『さんとかいらない、アーシェアで結構よ』


 さんは結構か、言うことを聞かないのも失礼な気もするが、つけないのも失礼な気がする。でもまぁ、ここは言われた通りにするしかない。


「どうかなさいましたか? アーシェア」

 『よろしい。今度からそんな感じでよろしくね。今起きていることやこの世界についての補足をつけに来たよ。恐らくこれから長い付き合いになるから会話はくずさせて貰うね。みんなも無駄な気を使わず、ね?』

「はい」


 思ったよりフレンドリーな神のようだった。神としての威厳はどこにやらだが、気を使うことがないので楽だ。


 『まずは抑止力による代償について説明するね。まずは、美咲ちゃんね。代償は左目喪失。理由は戦闘に必要な視野を奪うことで他と強さを合わせるため。次は、飛鳥ちゃんね。代償は左腕喪失。理由は剣を使うにあたって必要な腕を片方なくすことによって他と強さを合わせるため』


 どれも力を弱めるものだった。恐らく俺も何かしらの力を弱める何かがこびりついている。


『続いて一番変わっちゃった蓮ちゃん。代償は性別転換と種族の変更。理由は武器を使う際に必要な身体能力を大幅に下げ魔法の適性を下げるために獣人へ・・・ここから読み取れなかった』


 どうやらキチンとした理由はあったようだった。どうやら理不尽に奪われたわけではなくひと安心。


 だが、ひとつ問題が。


「読み取れなかった、てどういうこと?」


 俺の部分だけ何故か曖昧だったのだ。こういうこと明確にしなければならない筈なのに。


 『えっとね、抑止力による代償は、その世界に召喚した際に出る波長を読み取ればわかるんだけど、蓮ちゃんの場合何故か解読困難だったのよ。こんなこと前例がないから私も正直わからないよ』


 複製がそこまで・・・? 


 複製なんて真似る程度のものどう足掻いても本物には劣ってしまうほどの力だ。


 『ちなみに秦ちゃんと凛音ちゃんはなんにも代償はないよ』

「え、ないんですか? だって銃火器の創造ですよ。何かしらの代償があったっておかしくないはずでは?」


 みんなの気持ちを代弁してスキルを持った本人が問いかける。


 『抑止力に引っかからなかった。と、言うことはそのスキルが世界に影響を与えにくいと言うこと。この世界では銃火器は強くない。そう判断されたとしか言いようがない』

「そうですか・・・」


 秦は下を向きながら返事をする。辛いのも当たり前か。信じていたものが今この場で自らが思ってるほどの力を発揮出来ないとわかったのだから。


「あの、治るんですか? 腕」


 少々重い空気の中、代償を受けたものの希望を見出すために、飛鳥は問いかけた。


 『もちろん治るわ。でも、そこら辺に売っているポーション程度では治らない。ただ、凛音ちゃんのスキルを育てれば安易に治すことはできるよ』

「要は凛音が鍵と?」

 『そういうことね。スキルが超回復だからね』


 よかった、治るんだ。二人ともの代償は。


「俺は治りますか?」


 アーシェアに俺は問いかけた。恐らく俺の代償はほかとは違う。みんなはどこかの機能を失った、怪我のようなもの。それに対して俺は五体満足。男から女の子へと体の本質が変わってしまっている。


 『蓮ちゃんの場合恐らくは治らないでしょう』

「でも、代償は治るって言いましたよね?」

 『確かに私はそう言った。けど、それは通常どうり行われた場合の話。今回のような初めての自体は含まれていない。蓮ちゃんは正直言ってイレギュラーだ。だが、この世界に連れてきたのは私。責任をもって治す手段を探し出します』

「ありがとうございます」


 なぜだよ・・・


 あくまで謙虚な気持ちをもってスキルを選んだはずだ。なのになぜこんなことに。


 でも、今は前をむくしかない。アーシェアが言っていた俺たちの敵は転生者。強さは比べものにはならないほどの差がある。その差をどう埋めて行くかを冷静に考えなければ死ぬのは確定事項。


 今は生きるために冷静にいかなくては。


 


 


 





 


 

最後までご覧いただきありがとうございました。無理のないペースで更新するので、ご理解いただけると幸いです。

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