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かつて希望だった者、今は災厄な物  作者: 奈月四季
プロローグ
1/7

いつもの放課後

「ねぇねぇ、もしも、もしもだよ。異世界に行けたらどんなスキルが欲しい?」


 友達である女の子清水飛鳥(しみずあすか)が唐突に聞いてくる。


 今は放課後。

 教室には俺を含めた五人が残っている。ここにいるのは皆同じゲームをしているという共通点を持ち仲良くなった友達。多くの場合は今のように集まり、ほとんどの放課後をゲームの話や無駄話をして過ごしている。


 幼い頃からの友達で親友と言っても過言ではない。空手と柔道のどちらも心得ており、どちらとも県で優勝した実力を持つ。勉強も運動も完璧な兵頭美咲(ひょうどうみさき)こんな名前だが男だ。少しバサバサの黒髪が特徴。その性格とスペックのためか女子からはすごい人気で、常に女子たちからアプローチを受けている程。

 次は銃が大好き。機械の事についてはすべておまかせのお金持ち浅野秦(あさのしん)。成績優秀、つややかな黒髪の男だ。

 ここからは女の子。先程話の話題を出した清水飛鳥。幼い頃から剣道をしており、それなりの成績を残していると聞いた事がある。髪色が白色なのが特徴。この学校で指に数えるほどの美女の筈なのに誰とも付き合ってない。

 続いては、香乃凜音(こうのりんね)こちらも学校で指に数えるほどの焦げ茶色の髪の美女。誰にでも優しくできる性格でとても人気なのだが、こちらは鈍感なせいか男からのアプローチに全く気付いておらず彼氏はいない。超がつくほどのお人好し。


 最後に何もかも普通。どこにでもいそうな白髪の男子。俺、白鐘蓮(しらがねれん)。みんな勝っているものと言えばゲームのアバターのレベル位で。ほかに勝っているものは何一つ思いつかない。正直劣等感しかない。


「えっと俺はね」


 この質問に対して一番最初に答えたのは文武両道の権化美咲だった。


「やっぱり体術系に向いたスキルが欲しいなぁ」

「あぁー、やっぱり」


 話を始めた飛鳥は納得した口調で返事を返した。恐らくみんなも納得しておると思う。柔道と空手をやっているやつが言うのでそうだろうなという確信しかなかったと思う。


「次は僕ね」

「お、次は秦かぁ。秦と言えばやっぱり」


 さすが話を始めた本人。話に興味心身だ。


「銃火器の創造系のスキルかなぁ」

「やっぱりぃ。でもちょっと強すぎる気がするんだけど」

「いいんだよ。どうせ叶わないんだし高望みしたって」


 まぁ、もしも話だからね。

 銃火器の創造か。その分野が好きな秦らしいスキルだと思う。異世界には銃がなさそうなイメージがあるし吉と出ると思う。


「凛音は?」

「え、私? えーと私はねぇ、みんなが攻撃系のスキルばっかり選びそうだから回復系のスキルがいいかなぁ」

「さすが。凛音は優しいですねぇ」


 そう言いながら飛鳥は凛音の頬をうりうりする。凛音は笑いながらその手をそっとのける。

 優しい凛音にはぴったりなスキルだと思ったが、恐らくみんなのことを考えて言ったのだろう。さすが、超お人好しと言われるだけある。本当は攻撃系統のスキルにしたい筈だろうに。だってゲームではバリバリの前線だし。


「もー、そういう飛鳥はどうなんですか?」


 凛音はうりうりされた事に対してか、口を尖らせながら聞いた。


「えー、私? 私はねー。やっぱり剣道をしてるしね、それを生かせる切断系のスキルがいいかな」

「飛鳥、恐ろしい子!?」


 そう言いながら凛音は後ろに二、三歩下がった。それをとらえた飛鳥はおいっと優しく頭をチョップした。

 なんとも言えない微笑ましい光景だった。


「白鐘くんはどうなんですか?」


 頭を押さえながら凛音が聞いてくる。


「えっとねぇ」


 みんなの視線がこちへとむく。

 まずい、全く考えていない・・・ どうしよう。

 俺以外みんな言い切ったし、言わないなんて選択肢はないだろう。みんな自らの長所を生かせるスキルなのだが、俺には大した長所なんてない。


 どうせ叶わないんだし適当でいいか。


 ガランッ

 教室の扉が勢いよく開けられる。みんなの視線は全てそちらへ向き、俺からはそれた。

 扉のところには先生が立っていた。


「そろそろ帰れよー。教室閉めるからな」

「あー、わかりました。みんな出よう」


 美咲がそう呼びかけるとみんなすぐに荷物をまとめ始める。


「蓮くんのスキルはまた今度ね」

「そーだね。また今度聞かせて貰おう。指揮官さん!」

「いや、リアルで言わないで、恥ずかしいから」


 秦が軽くイジリを入れてくる。指揮官とは俺のゲーム内で勝手に呼ばれ始めた言わばあだ名だ。一様ギルドマスターをしている。正確にはさせられていると言う方が正しいのだが、戦闘のさいには基本的に指揮に回るので、勝手にそう呼ばれるようになった。正直、役が前線特化のため別には特攻指揮官とも呼ばれるようになってしまった。


 俺達は教室をあとにした。


「はぁ、スキルねぇ」


 何がいいかなと考えながら一人とぼとぼ帰り道を辿る。赤々と輝く夕日はとても綺麗で見とれてしまうほどのもの。今は夏。そのため夕方でも汗が止まらなくなるほど暑い。昔はこうでもなかったんだなぁとつくづく思う。頼むから地球温暖化の進行をはやくストップさせて欲しい。もうすぐ夏休みに入るし少しは楽になれるか。


 いつの時代で何が起ころうとも、この太陽は綺麗なはずだ。


 異世界かぁ、もしあると言うのなら、こんなに綺麗な太陽もあるのだろうか。夜を照らす月はあるのだろうか。


 この世界での当たり前がないのかもしれないという不安と何か新しいものに出会えるかもしれないと言う期待感で複雑な気持ちになる。


 まぁ、まず異世界に行くなんて非現実的なことまのだから深く考えて混んでも意味が無い。妄想するのは楽しいしいのだが。


 何のスキルがいいか。やっぱり異世界と言えばチートのイメージがあるしチートなスキルがいいような気もする。

 だが、強すぎるというのも考えてものだ。やはり強すぎるとつまらないはず、それに最後は力に飲まれそうな気がして怖い。それに自分で努力して得ていないというイメージがあり、俺には嫌悪の念がある。

 個人的には強過ぎず、自らの力で鍛えて強くなる方が身にあった力を得ることができるだろうし、何よりだんだん強くなっていくことを実感できた時の達成感にはとても言葉で言い表せられないような喜びがある。強すぎるとそれを経験できる回数が少なくなってしまうはずだ。


 やっぱり男に生まれたからには武器が好きだ。銃火器系のスキルは秦が言っていたから同じにするのはまずい。


 剣の創造? 


 いや、強い剣を作ったは作ったでなんか剣に選ばれるようなあれで、どこまでも普通な俺が使っても本領が発揮できないような気がしてきた。


 いっその事全てを創造できるようにするか。あ、俺確かデザインのセンスあったけ・・・


「はぁ・・・」


 自らのダメさにいささか呆れる。


 あ、そうか自らのデザイン性が最悪なら元々あるものを複製すればいいのだ。

 これだ、これしかない。複製品がもし本物に劣ると言うのなら、それこそそこで自らの力量が試される。つまり、自らを鍛えなければダメだと言うことだ。


 完璧だ、これしかない。


 もし、今度聞かれるような場面があれば複製と答えよう。


 どうやって立ち回って戦うか、そんな他愛のないことを考えながら残りの今日一日を過ごし眠りについた。


 

まったり書いて行こうと思います。

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